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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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風の邦、星の渚

小川一水著。角川春樹事務所刊。

副題が「レーズスフェント興亡記」。中世ドイツ史のような筋立てだけど、そこはSF作家・小川一水さん、前史の時点から謎の女レーズの存在が古代ヨーロッパのようでいて、そうではない舞台になっていて、最後までこのレーズが鍵を握る。ただ、それ以外の点では中世ドイツの町作りの物語で、ルドガー、リュシアンの兄弟を初めとする登場人物たちが多彩で楽しいのだ。

ガリア遠征に赴いたカエサルが出会ったのはレーズと名乗る不思議な女。カエサルの作った町はレーズを魅了し、やがて町は滅んだがレーズは町作りに惹かれ続けた。それから1000年以上が経ったレーズの泉の側にあるモール庄に騎士ルドガーとその弟リュシアンが庄司として赴任してきた。レーズと会ったルドガーは、中州に町を作り、そこをレーズスフェントと呼ぶようになった…。

町が作られていく様子がおもしろいです。それに主人公のルドガーが騎士ではあるんだけど、生い立ちの複雑さとか、主君の娘エルメントルーデ姫との相思相愛ぶり、恩師ハインシウスに寄せる尊敬とか、騎士と言うには一筋縄ではいかないところがありまして、この近代的なキャラがいいのさ。表紙の騎士はルドガーだろうな、やっぱり。

小川さんもまだまだ読むぞ〜

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ホロコーストの力学

永岑三千輝著。青木書店刊。

副題が「独ソ戦・世界大戦・総力戦の弁証法」とあります。

こんなお堅い本、久しぶりに読みましたが、あ〜、おもしろかった! この手の学術的な本が陥りがちな小難しい専門用語と難解で、どこまで続くのかわからないような日本語でなく、ずばっずばっと書いているので、とても読みやすかったです。
なにより、最初はユダヤ人を絶滅させる気がなかったというヒトラーが、独ソ戦での敗北を機に最終解決=絶滅へと至り、日本の対米宣戦が、ヨーロッパの戦争に過ぎなかったナチスの戦いを、アメリカに宣戦布告することにより、一気に世界大戦へと押し上げ、そのためにユダヤ人も絶滅させなければならなくなった(ナチスにとって)と論を進める辺りが最高におもしろい。

今まで日本人というのはホロコースト、ユダヤ人絶滅には関係ないと思っていた人が大半じゃないでしょうか? でも、著者は実は日本のアメリカに対する宣戦布告により、日本もまた無関係ではないと言い切ります。
当時、ドイツは勝つはずだったソ連戦が怪しくなり、負けが見え始めていました。でも同盟国の日本がアメリカに宣戦布告したってんで、ドイツもせざるを得なくなります。で、ドイツはソ連を攻める理由をユダヤ人のせいにしていたので、ボルシェヴィキ=ユダヤという構図でソ連を落とし、ユダヤ人を東方に追いやろうとしていました。けれどその目論見が大きく外れつつありました。当然、ドイツ軍の士気は下がっていきます。そこに新たにアメリカが戦線に加わることでそれまでヨーロッパの戦争だった戦いは二度目の世界大戦と拡大し、ドイツは英米をユダヤ人の国家とすることでその敗北を自らに義務づけたわけです。
しかし、日本だって勝てない戦に踏み出したのは似たようなものでしょう。以前、「日中戦争」という本を読んだことがありましたが、1939年から始まっていた日中戦争で日本はアメリカから鉄を輸入して戦争していたとありました。でもその輸入相手のアメリカに喧嘩を売ったのです。勝てるわけがありません。

また著者は、「マルコポーロ」という雑誌にかつて載せられ、「マルコポーロ」を廃刊に追い込んだガス室が存在していなかったという論に対しても、日本人としての責務を持って批判します。

歴史の出来事というピースがあって、それらがはまっていくパズルのようなおもしろさがあります。日本がアメリカに宣戦布告したことがユダヤ人を絶滅させる方へナチスを方向転換させた。その事実を知って、どうして遠い中東の国イスラエルが無縁な国だと思えるでしょうか? ヒトラーの演説を携帯の着信にしていたというネオナチが逮捕されたという事実を遠い国の出来事だと言えるでしょうか? 歴史のダイナミックなつながりを読ませてくれる名著です。

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五辨の椿(原作)

山本周五郎著。新潮文庫刊。

五辨の椿」の原作です。筋は映画と同じなので書きませんが、江戸時代の庶民の何気ない日常や喜怒哀楽を得意とした山本周五郎さんにしては壮烈な復讐劇です。なにしろ、18歳のおしのが次々に4人の男を殺していく手管がとても素人の手並みではありません。しかし、映画の感想のところでも書きましたが、しの(映画で志乃と当てているのは原作にはない)が4人を殺し、実の父親にすべてを明かして見逃したところで、青木に白状するまでは同じなのですが、そこでしのは裁きを恐れて自殺してしまったのでした。あれまぁ。なんて勝手な。
そして与力の青木も、しのの自殺を知って、「安らかに眠れ」みたいなことを言ってるし、そこら辺、映画の方が良かったな、ラストは。

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黒の獅士

永井豪著。中央公論社刊。

スケールの壮大なSF時代劇。この頃の永井豪って脂が乗り切ってて、描く話がどれもおもしろい。この話も日本の戦国時代が舞台になっているものの、23世紀の未来世界や、2万年前の石器時代、さらには宇宙にまで拡がっていくスケールの大きさは読んでいてわくわくする。

戦国時代の伊賀。若いながら、優れた腕前を持つ忍者、天王獅子丸は、斎藤道三の命を狙い、銅磨陣内と名乗る不死身の浪人と出会う。やっとのことで銅磨陣内を倒した獅子丸だったが、戻った伊賀の里は何者かに襲われ、壊滅していた。一方、百地三太夫からの連絡が途絶えたことを知った23世紀の時間局は3人のタイムパトロール員を送り込むが、彼らもまた、地球を巡る百魔と黒の志士たちの戦いに巻き込まれていくのだった…。

むぅ、粗筋が書きにくい。半分くらいまで、獅子丸もがきんちょで、銅磨陣内との戦いがクライマックスなんだけど、以降、それまで、それなりの伏線はあったんだけど、いきなりという感じもしつつ23世紀の時間局という存在が出てきて、獅子丸もいきなりがっちりした大人になってるし、話の中では10年とか簡単に経っちゃうし、連載中にこて入れで路線変更とかあったのかもなぁと邪推してみる。
もちろん、信長が百魔の手先として登場する前半もつまらなくはないんだけど、銅磨陣内という敵キャラがよほど気に入ったのか、そいつとの戦いがけっこう長いので、信長よりも銅磨陣内のがよっぽど大変じゃん!って感じ。それが23世紀の時間局が現われることでスピードがアップテンポになるので、圧倒的に後半のがおもろいです。獅子丸もおっさんになって、格好良さが数倍増してるし。

ただ、百魔という大元の敵が、なぜ獅子丸たちのいる宇宙を攻撃しているのか、という理由は、鬼について深いこだわりを見せる永井豪ならではの仕掛けがあり、そう思うと百魔って、名前こそ違えど、鬼同様なんだなってところが永井節です。

ラストの「戦いはまだ続く」ってのりは、打ち切りという感じもするし、これ以上、長々と続けてもしょうがないのでという気もするし。結局、魔王信長とか言ったわりには、信長大した活躍してねーじゃんという突っ込みもありますが、それなりにおもしろかったのでよしとする。

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ブルーホール

星野之宣著。スコラ漫画文庫刊。全2巻。

SF漫画「2001夜物語」とかで知られる星野之宣さんのSFです。シーラカンス、バミューダトライアングルなどと、白亜紀、古生代といった時代を結びつけた壮大なスケールの話です。

コモロ諸島でシーラカンス(現地名:ゴンベッサ)の密漁に従事する少女ガイアは、漁の最中に祖父を巨大な生き物に殺される。海洋調査船セーシェルに助けられたガイアは、シーラカンスが湧き出るブルーホールに船長フォスらを案内するが、そこは太古の地球とつながる不思議な穴だった。半年後、ホーク博士の主催するブルーホールの調査に招かれたガイアとフォスは、ブルーホールに呑み込まれ、太古の地球に行ってしまうが、主催者のホーク博士はブルーホールについて恐るべき計画を抱いていたのだった…。

星野之宣さんの漫画ですと、印象深い短編に「冬の惑星」というのがありました。人類が他の惑星に移住するようになった未来、とある惑星の住人たちを追った話です。その惑星の住人たちは苛烈な気候のためか、寿命が数年と短く、1年で成人し、子をなし、死んでいきます。まずこのアイデアに度肝を抜かれました。で、話はその現地人の一人の少年が、タブーを破って、地球からの調査員を現地人たちが聖なるものと考える氷の洞窟に案内したために片足を失ったところから始まります。不自由ながら、彼は成人し、妻を迎え、子どもを得ますが、皮肉なことに子も同じ過ちを繰り返してしまうのです。彼がかつて地球人を案内した洞窟には、現地人たちが死の間際に作る氷柱が収められていました。言葉を持たない彼らが、その氷柱を作る時にだけ唄う詩、それは言葉をなさず、けれども、彼らの一生を語るだけの力を持っていました。しかし、かつてタブーを犯したために足を失い、今度は我が子もタブーを犯してしまった男の氷柱は洞窟に収めることを許されず、氷雪が吹きすさぶ高山のてっぺんに残されました、という話です。言葉を持たない人びとが死の間際に発する唯一の言葉、というアイデアも秀逸ならば、タブーを犯したために受け入れられない男、という存在も惹かれました。

閑話休題。

さて、「ブルーホール」です。スケールがでかい上、バミューダトライアングルという既存のものを使うのが星野さんの漫画はうまいのです。恐竜たちの生きていた時代と現代がつながったら!というアイデアを、生きた化石と言われるシーラカンスと結びつけたところもおもしろいし、さらにはブルーホールを貫くパイプを作り、自由に過去と行き来しようという展開もビッグ。でも、そこは人間のすることです。生物学的に恐竜に興味を持つだけでなく、ホーク博士のように、汚れきった現代の空気と水をブルーホールを通して過去と入れ替えてしまえ、と言い出す私欲に凝り固まったのもいるわけです。しかも、ブルーホールはいくつかあり、白亜紀ばかりか三葉虫の生きていた古生代までつながれていたとなると、さて、進化とは鶏が先か、卵が先かとばかりに、つながったタイムトンネルが引き起こしたことにもなってしまうわけでして、どうなっちゃうんだろうと先が読めません。さらに、恐竜絶滅説の1つに巨大隕石がありますが、そいつも登場するに及んでは見事なアイデアのオンパレード。話はどんどん拡がって、どう収集をつけるのか、わくわくが止まりません。

勝手な人間の思惑に怒り、恐竜の赤ん坊を救いたいと思うヒロイン・ガイアが魅力的。最後の最後まで、戦う姿勢もいい感じです。ふとっちょのフォス船長も、いつの間にかガイアといいコンビになってて、頑張っているかと思えば、悪魔のような天才ホーク博士の発想もとんでもで、久々に星野SFはおもしろかったです。ほかにもいろいろ読んでるんだけど、また久々に読みたいなぁ。

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