忍者ブログ

されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

火山島Ⅶ

金石範著。文藝春秋社刊。全7巻。

いよいよ最終巻です。

有媛(ユウオン)は日本へ留学します。ただそれは密航船に乗ってであり、かつて朝鮮を踏みにじった宗主国でもあるという、反日派でならす李芳根(イ=バングン)にとっては苦渋の選択でした。しかし彼は、このまま祖国に残れば最悪の場合、ゲリラに加わりかねない妹を、その才能が最も生かされるであろう音楽の道へ進ませるべく、彼女を送り出すのです。

一方、麗水(ヨス)、順天(スンチョン)の叛乱はいまだに脱北した指導者たちが戻ってこないゲリラを勇気づけますが、それは蜂起からたかだか3日ほどで鎮圧されてしまうほど呆気ないものでした。
勢いづいた政府は討伐軍を差し向け、ゲリラの殲滅に乗り出します。その背後に反共国家アメリカを控えさせた李承晩(イ=スンマン)政権は、済州島の叛乱を共産党の根城と断定し、住民にもさらなる弾圧を加えていきます。
そんななか、とうとう梁俊午(ヤン=ジュノ)が入山、李芳根はそれを止めようとしますが果たせません。さらに李芳根が旗色の悪くなってきたゲリラを全員下山させ、自分の船で日本へ逃がそうとしていることを知り、梁俊午は激しく反発します。けれど李芳根の思惑は大事な友人である梁俊午や南承之(ナム=スンジ)、康豪九(カン=モング)だけでなく、ゲリラたちをむざむざ殺させたくないという、ただそれだけの思いに突き上げられての行動だったのです。

ここで、わしの李芳根への好感度がぐぐぐ〜っと上がりまして、いままで好きなキャラといったらクールな梁俊午か、おっさんな康豪九(ちなみに頭の中での俳優さんの想定はチェ=ミンスク氏ですv)かしらねぇと思っていたのですが、ぶっちぎりました。すごく共感できるのです。
わしは元来、名誉ある死なんてものは尊ばないどころか死なせようとしている側がこじつけているだけの代物だと思ってます。生き恥をさらしても生きていてほしい。そういう精神がいつでもあります。だから李芳根の心情はすごく理解できるし共感できるのでした。

もっとも梁俊午に猛反対されただけじゃなく、ゲリラたちに投降主義だとマイナスの受け取られ方をしてしまい、南承之がそのために下山しますが、李芳根はゲリラたちを集めようとしたことはないし、これからもしないと誓ったので、ゲリラとの問題は済みます。
しかし李芳根の方が情勢をよく見ており、ゲリラたちはさらに追い詰められていきます。

話が前後しますが、有媛を密航船に乗せるべく釜山へ向かった李芳根は、柳達弦(ユ=タルヒョン)が警察に逮捕されて釈放された後、日本に脱出しようとしていることを突き止めます。それも、よりによって李芳根の船に偽名を使って乗ってきたのです。城内のゲリラの組織員たちが一斉に検挙された後ですし、柳達弦が李芳根の親戚で警察でもある鄭世容(チョン=セヨン)と密会したことも知っているため、李芳根は柳達弦が裏切り者ではないかと疑っているのです。船上で追い詰められた柳達弦は、李芳根の手ではなく、同乗していた密航者たち、主に元ゲリラたちの手によって尋問され、マストから吊られて死んでしまいます。最後まで自分の罪を認めることなく。
柳達弦が本当に裏切り者だったかどうかはわかりません。そもそも李芳根が柳達弦を疑ったのも党の幹部だという黄東成の「ユダになる」という一言のためでした。しかし、四・三蜂起の時に全島で一斉に蜂起するはずだったのが城内(ソンネ)では失敗し、以後も島全土を弾圧が吹き荒れた時も城内だけは無関係だったのも元は城内の責任者だった柳達弦の裏切りのせいかもしれず、またこの巻でとうとう城内の秘密党員だったメンバーが次々に検挙されてしまったのも柳達弦からリストが漏れてしまったせいかもしれないと状況証拠だけはあり、柳達弦は断罪され、海の藻屑と化してしまうのでした。
そして、李芳根は鄭世容と対決、それに呼応してゲリラが鄭世容を捕えます。鄭世容は警察の中堅クラスの幹部で、それほど大物ではありませんが、李芳根にとっては母方の親戚(李芳根の母と鄭世容の父が従兄弟同士)なので許し難い存在であり、その犯罪を知った時から殺意を抱いていました。
しかし、実際に鄭世容が捕まると親戚ということでその家族から救出を頼まれますが、李芳根はゲリラの幹部、康豪九に自由に連絡できるわけではない(実際、南承之と会う時も南承之が城内に来る時に限られているので)という理由で返事を曖昧にします。
やがて、ゲリラから連絡があり、李芳根は証人として鄭世容の尋問に参加、ゲリラたちが殺すというところを自ら手を下すのでした。
そのために激しい葛藤をした李芳根でしたが、結局のところ、柳達弦の言った「自分で手を下すことのない卑怯者」という汚名を晴らすべく、自ら鄭世容を射殺します。

その後、さすがのゲリラたちも自らの劣勢に気づき、康豪九が李芳根と会います。彼の要望は200人のゲリラを本土で戦う反乱軍に合流させるため、密航船に乗せてほしいというものでした。しかし、その人数の多さ、土地に不案内な本土で目的地にたどり着けるかどうかも怪しい計画を李芳根は、他の船主とともに断らなければなりませんでした。李芳根も船主たちもゲリラたちを助けたいという思いに偽りはありません。ですが、済州島を出ることさえ命がけの状況下で、200人ものゲリラを本土まで連れて行くというのは果たせるものではなかったのです。

やがて、アメリカ軍も加わった討伐軍のために年明け後、ゲリラは少数のグループに分断されて討たれていき、李芳根は南承之が捕まったことを知ります。日本に母と妹を残した南承之が、わざわざ故郷の済州島に帰り、勤めていた中学校を辞めてまでゲリラに加わったことを知って、李芳根は長いこと、南承之を尊敬していました。口には出してませんでしたが。また、李芳根にとって、南承之は大切な若い友人でもあり、妹の有媛と結びつけようとした男性でもあります。彼は大金を払って南承之を釈放させ、日本に向かう密航船に乗せるのでした。
しかし、このことは南承之の意に反することでしたが、李芳根は死なせたくないという意志を貫いて、南承之を日本に向かわせ、有媛の連絡先まで手渡します。
と同時に、李芳根は南承之と同様に救い出したいと思っていた梁俊午の死を知ります。ただし、それは戦闘によるものではなく、追い詰められ、食料が乏しくなったゲリラたちが近くの村を襲うのに反対したための処刑でした。梁俊午には、李芳根に負けず劣らずゲリラたちの劣勢は見えていたはずなのです。戦いを続けるために、一時は自分たちが守るべしとした住民の食料を奪うという暴挙が、追い詰められたゲリラたちの最後の手段だったとしても、そんなことをするぐらいならと強固に反対しただろう梁俊午。それでも、秘密党員だった彼は、組織の命令に従って入山し、命を落としたのでした。

城内の観徳亭広場にゲリラの死体が満載されていくなか、ゲリラたちは殺されていきます。ただ、ゲリラの司令官だった李成雲の死は明らかにされますが、康豪九やハルラ新聞の記者だった金東辰(キム=トンジン)、有媛の友人でソウル大の学生だった呉南柱(オ=ナムチュ)らの行方はわからないままです。

全てが終わり、訪れる平和。李家には無事に赤ん坊が生まれた後、李芳根は人を殺したという事実に我慢がならず、とうとう愛する文蘭雪(ムン=ナンソル)のもとに戻ることなく、自死という道を選んだところで幕です。

正直、李芳根の死は、ゲリラたちの壊滅による絶望から来るものだと思っていたので、鄭世容を殺したことが原因だったのは意外でした。そこまで思い詰めるくらいなら最初からゲリラの手に任せておけばよかったのにと思う反面、それでも李芳根は鄭世容に手を下さずにいられなかったのだろうとも思いました。彼は南承之や梁俊午だけじゃなく、ゲリラたちを逃がしたいと思っていたように、たぶんにゲリラたちに同情的であり、その財産のほとんど全部をゲリラたちの活動や、密航船などにつぎ込んだ感じです。だからこそ、彼はゲリラと軍が和解できた唯一の機会を率先して潰した鄭世容が許せなかったのですし、その死を夢見、何度も反復してきたのだとも思うのです。
そして李芳根にとって人を殺すか自分が殺されるか、それは二者択一であり、作中で虚無主義と呼ばれ、転向した者であり、凶暴な西北(スプク)でさえ一目置き、南朝鮮労働党のシンパでもあり、心中では友を思い、妹を案じ、父を思う、誰よりも自由な彼の信念といってもよいほどのものだったのです。

父の望みどおり、男の子が生まれ、春根(チュングン)と名づけられました。幼い弟を見ながら、李芳根は将来、弟が大きくなってから、自分は親戚の兄を殺したことを何といって説明するのだろうと考えます。
電話でしか話すことのできなくなった文蘭雪も李芳根のソウル来訪を心待ちにしています。ですが人を殺した手で彼女に触れることが李芳根には許せません。

そのうちにゲリラたちの司令官だった李成雲(イ=ソンウン)が戦死したという報せが届き、その遺骸もまた観徳亭広場にさらされたのです。
さらに父の経営する南海自動車の運転手だった朴山奉(パク=サンポン)が西北の事務所を襲撃して爆死します。

李芳根が死を選んだのは、家族以外には誰もいなくなってしまったという状況とも無縁ではなかったかもしれません。
一人、山泉洞(サンチョンダン)に登り、李芳根はピストル自殺を遂げるのでした。

こうして済州島を舞台にした大河小説は完結します。しかし、日本に逃亡した南承之を主人公に描いた「地底の太陽」という続編があるようなので、それを読んで、終わりにしようと思いました。

拍手[0回]

PR

火山島Ⅵ

金石範著。文藝春秋社刊。全7巻。

いよいよクライマックスにさしかかってるはずなんですが、李芳根(イ=バングン)の周辺はそれどころじゃない感じです。こういう浮き世離れしたところが彼が特権階級なんだなぁと思わせるわけですが、もう5巻あたりからありありと出ているんですけど李芳根と有媛(ユウオン)の兄妹がラブラブというか、李芳根はシスコンすぎて、有媛はブラコンすぎです。これは亡き母への仕打ちによる父への反発が2人とも根底にありまして、さらに長兄(2巻で登場した畑中義雄)が日本に帰化したために次男の李芳根が家を継がなければならず、それに対する同情とか、そもそもこの2人、10歳以上年が離れているため、それもあって余計に可愛いんだろうなぁとか、いろいろと条件は揃っているわけですよ。そんな有媛が父に結婚を強制される羽目になり、その相手というのが一度、李芳根によってこっぴどく追い払われた崔龍鶴(チェ=ヨンハク)なのだから李芳根にも有媛にも歓迎すべからざる事態であるのはわかります。しかし父は有媛の留学を李芳根が勝手に進めようとしたことに完全におかんむりになっており、苦慮した兄妹は有媛にべた惚れの崔龍鶴を利用して、父によって済州島に足止めを喰らった有媛をソウルに逃がそうと画策するのでした。
この崔龍鶴という人物は李兄妹に蛇蝎のように嫌われていますが(銀行員なので父には好かれているという皮肉)、まぁ、それもしょうがないと思わせる描き方です。たぶん、こんな時代、こんな場所でなかったら、もうちょっと評価も上がるのかもしれませんが、なにしろ動乱の済州島では無理というものです。

さらに李芳根は以前から言っていたように家を出ます。また日本の戦犯となった韓大用(ハン=テヨン)がゲリラに加わることを断られたので船を買って与え、ゲリラに便宜を図った密輸や密航などを行わせて、ますますゲリラたちに加担していきますが、党組織に加わることはしません。その一線は決して越えない自由人であるというのが李芳根の魅力のひとつです。

有媛を無事にソウルに逃した李芳根は、自身もソウルへ向かいます。有媛と結婚しようとしている崔龍鶴は済州島の人間でありながら、差別などを避けるためもあったのでしょうがソウルに籍を移しており、ソウルの人間以上にソウル訛りを話すこともあって、李兄妹に嫌われているのです。今は有媛を日本に逃がすためのいい口実として利用されています。
李芳根がソウルに行ったのは有媛のためだけではありません。謎の美女・文蘭雪との逢瀬もその目的だったりします。彼女はすこぶる美人な上、強力なバックがついていたりしますが、ちょっと便利すぎるきらいがあり、有媛のが魅力的だと思います。この話のヒロインは間違いなく有媛でしょう。
その有媛は、しつこく迫る崔龍鶴に自分が留置場に入れられたという話をして、結婚をぶち壊します。もちろん兄の指示です。崔龍鶴は驚愕しますが、有媛が諦めきれず、それでも「アカ」の有媛を見下すような態度をとるようになります。この当時の大韓民国では、「アカ」と呼ばれることは社会的な地位の抹殺を意味していました。しかし、これが叔父や父の逆鱗に触れる形となり、結婚の話は立ち消えます。その上で、李芳根は、妹がこれ以上、この国にいてもビラまきのような形であれ、共産党の活動に接することは避けられないと脅すような形で父を日本留学に説得しようとしているのでした。

さて、文蘭雪への思いを遂げた李芳根でしたが、梁俊午(ヤン=ジュノ)からの手紙で済州島にとんぼ返りします。
秘密党員だった梁俊午は、とうとう山に入る=ゲリラとなるというのです。
さらに、有媛と崔龍鶴の仲人になるはずだった恩ある弁護士から父も参加しての和平を訴える連判状を集め、ゲリラの指導者である康豪九(カン=モング)と会いたいとまで言われて、李芳根は話の内容もさることながら、父の変節ぶりに感動するのでした。
そこに麗水(ヨス)、順天(スンチョン)で駐屯部隊が叛乱を起こしたという報せが届いて、いよいよ最終巻です。

前巻のラスト、朝鮮民主主義人民共和国の成立は話にも出てきませんでした。そもそも、この巻では話が完全に李芳根のみで、南承之(ナム=スンジ)ら、ゲリラたちがどうしていたのか、わかりません。まだ警察・軍との間に戦闘が再開していないので、小康状態が続いている感じですが、この巻ラストの麗水・順天の叛乱により、物語はまた大きく動き出すのでした。

拍手[0回]

火山島Ⅴ

金石範著。文藝春秋社刊。全7巻。

3章仕立てで李芳根(イ=バングン)のソウルからの帰還、李芳根の結婚を巡る問題、南承之の城内(ソンネ)での出来事や四・三事件の途中経過です。

李芳根は、わしのイメージでは20歳くらい若いハン=ソッキュ氏なんかいいんじゃないかな〜と思って読んでいますが、なにしろ作中の登場人物の8割以上とお知り合い、もしくは名前を知られているという有名人、その理由も昨今の大河ドラマのような不自然さはなく、ごく自然に語られていくもので、まさにこれは大河小説なんだなぁという醍醐味を味わわせてくれます。

もっとも、その分、四・三事件の描き方が足りないなぁと思うのは贅沢というものかもしれません。

李芳根はソウルから羅英鎬(ナ=ヨンホ)、文蘭雪(ムン=ナンソル)、呉南柱(オ=ナムチュ)とともに済州島に帰ります。それはわずか2日足らずで仲がいいとは言えない父親に妹の日本留学を認めさせ、またソウルにとんぼ返りするという無茶な計画のためでした。案の定、父親はこれを承知しなかったばかりか、妹のことへの兄の介入を拒絶、有媛(ユウオン)をソウルから呼び寄せて一度断った結婚を強制します。
また妹の日本留学と引き換えに李家の跡取りとして結婚してもいいと持ち出した李芳根は親戚一同を呼び出しての門中会議に参加させられますが、謎の美女・文蘭雪との結婚をにおわせることでこれを逃れます。さらに父親との離別を決意した李芳根はひとまず城内の実家を出ることにするのですが、引っ越しは次巻のようです。
その間にも李芳根は梁俊午(ヤン=ジュノ)などを通じてゲリラに大金を渡しています。梁俊午は県庁の職員でしたが、県知事の秘書になった官僚です。李芳根にとっては弟分、南承之にとっては兄貴分という2人の主人公をつなぐのに重要な位置にいる人物な上、前巻ですでに南労党の秘密党員となっています。私生児の生まれのため、親戚がおらず、天涯孤独の身の上ですが、多くの同胞のように日本に逃げることをよしとせず、ゲリラに加担するという侠気のあるキャラです。

一方、南承之は城内に来て、梁俊午と会ったり、その仲介で李芳根や有媛と会ったりしています。また前巻で有媛が南承之に編んだセーターは無事に李芳根から梁俊午を経て南承之に渡されています。もっとも南承之もまだ若い(23、4歳くらい)せいか、けっこう落ち着きがなく、有媛に会えると思ってはときめき、李家の裏戸を工作員となった下女のブオギが開けていることを李芳根に知られたらと思って動悸が激しくなり、少しはもちつけと言いたくなること請け合いです。しかし、登場人物のなかでも若い方なので、しょうがないのかもしれませんが、それにしても落ち着けと。

9月9日の朝鮮民主主義人民共和国の設立を前に次巻へ続きます。

拍手[0回]

火山島IIII

金石範著。文藝春秋社刊。全7巻。

済州島四・三事件が勃発した後で一度は完結した第3巻を受けての続編です。

第3巻から1ヶ月くらい経ち、戦線は停滞しています。今はゲリラも警察も力を貯めている状態です。
そんな緊迫した済州島の状況を傍観する李芳根(イ=バングン)は妹がビラまきで警察に捕まったというので父の代理でソウルに行きます。第4巻はこのソウルでの李芳根の話で3章使ってて、抗日の闘士で拷問で左腕が不自由になった作家や第3巻で強烈な印象を残した謎の美女と出会ったり、妹の釈放を祝う同級生と一緒に酒飲んだり、まぁ、相変わらずです。
1章だけ南承之(ナム=スンジ)に割かれていますが、彼は組織のオルグなので戦闘員ではないそうで、やっぱり直接的な戦闘シーンは描かれません。まぁ、そういう話なのですな。

李芳根は妹と話し合いますが政治的に目覚めてしまった有媛(ユウオン)はかつての音大生ではありません。今後も祖国に残る限り、その影響を受けないことはないでしょう。
しかも李芳根がソウルにやってきて間もなく、南朝鮮に大韓民国が成立してしまいます。反対する者を共匪(コンピ)、すなわち共産党、主に北朝鮮の息のかかったゲリラと決めつけ、警察よりたちが悪い西北(スプク)、つまり脱北者たちに狩らせています。大日本帝国の敗北により解放されたはずの朝鮮、しかし皆が夢見たはずの祖国の姿はアメリカの居座りにより歪んだ形になってしまっているのです。そして、かつて大日本帝国の手先となって同じ朝鮮人を苦しめた親日派が権力の座に戻り、また同じ構図が繰り返されています。
つまり有媛がソウルであろうと済州島であろうと、祖国に残る限り、そのような影響を受けないはずがなく、正義感が強い有媛は、父や伯父、学校が求めるような「二度と共産党に与するような活動は行わない」という誓約が守れるはずもないと李芳根は兄心ながら案じ、妹を日本に留学させようと思い始めるのです。

もっとも展開がゆっくりな話なんで、李芳根はこの巻ではソウルを離れることなく、続きます。

1章のうちに2回も3回もお酒飲んだりご飯を食べている李芳根を見ていると、朝鮮料理が食べたくなります…

拍手[0回]

火山島Ⅲ

金石範著。文藝春秋社刊。全7巻。

Ⅰ、Ⅱ巻に比べるといきなり厚くてびっくりしていたら、書き下ろしの第10章〜12章が入ったからのようです。しかも「メニー・メニー・シープ」どころじゃない、この後どうなるんじゃ〜!!! なところで終わっているので続編が書かれたのも宜なるかな。

この巻ではいよいよ南朝鮮労働者党を中心としたゲリラが蜂起、全島の警察署を襲います。ただし、当事者である南承之(ナム=スンジ)はほとんど登場せず、もっぱら第三者的な見方を貫き続ける李芳根(イ=バングン)の視点で物語は進みますので実際の戦闘シーンは書かれません。しかも全島で一斉に蜂起するはずだったのに不手際があり、李芳根の住む城内(現在の済州市)では蜂起が起きず、平穏な日常が続いている上、李芳根は妹のことでソウルに行ったりしているので、蜂起はどこか遠い世界でのことのようです。これは、著者自身が済州島に帰れない歳月が長く続き、当事者ではいられなかったことと無縁ではないのかもしれません。

ゲリラ対警察という対立が鮮明になっていくなか、鎮圧のために訪れた軍はゲリラとの和平を目指し、交渉に乗り出しますが警察の流したデマにより、一度はまとまりかけた和平案も頓挫してしまいます。再び始まるゲリラの襲撃、アメリカの主導による鎮圧、登場人物たちの暗澹たる運命を予感させて、後半、第Ⅳ巻以降に続きます。

拍手[0回]

カレンダー

01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28

最新CM

(06/14)
無題(返信済)
(05/29)
(04/27)
甘くない態度(返信済)
(04/26)
謹賀新年(返信済)
(01/04)

プロフィール

HN:
たきがは
HP:
性別:
女性

バーコード

ブログ内検索

かうんたあ

脱原発意思表示Webステッカー

バタリーケージの卵を食べたくない!キャンペーン