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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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誰も書かなかった戦争

佐藤早苗著。光人社刊。水木しげる挿絵。

水木しげるさん追悼にこの本を思い出しまして、再読。

太平洋戦争の激戦地、ブーゲンビル島とラバウルについて書かれた本です。30年以上前に読んだんで、その頃はとても新鮮だったんですが、再読したら、いろいろとがっかりな本でした。

ラバウルの最高司令官・今村均大将を褒めすぎ。「硫黄島からの手紙」という映画でも硫黄島の最高司令官・栗林忠道がべた褒めされてるようですが、わし、本当にいい司令官というのは兵士をむやみに殺さないことだと思います。ラバウルは確かに10万人の兵士が自給自足できるような仕組みを作り上げました。周辺を連合軍に包囲されて、近くのブーゲンビル島やガダルカナル島では餓死者が続出しているのと同じ頃、ラバウルでは鶏を飼い、稲を植え、日本本土よりも豊かな食生活を送っていました。だから何とわしは言いたいです。10万人の兵士が自給自足できるのは確かに凄いことだと思いますが、銃後の国民を飢えさせておいて、何が自給自足ですか。そこで兵士が自給自足できたから何ですか。ラバウルだけ残って戦争が続けられるとでも思ってるんですか。連合軍がラバウルに手を出さなかったのは、難攻不落の要塞と化したラバウルに攻め込んでいたずらに犠牲を出すのをよしとしなかったからです。だったら、どうせ日本は制空権も制海権も失っているんだから、ラバウルから日本軍が出ないようにしておいて、それ以外のところを落とした方が速い。だからラバウルは無事だったんです。だいいち、イゼルローン要塞じゃあるまいし、ラバウル単独で戦えるわけもなかった。絶対的に武器が足りなかった。
今村大将に必要だったのは、これが負け戦であり、将兵をむやみに死なせずに降伏するという選択じゃなかったんじゃないでしょうか。当時の日本では「生きて虜囚の辱めを受けず」という戦陣訓がありましたが、そこに逆らってこそ、本当のいい司令官じゃないかと思います。

あと、ルポかと思っていたら、参考文献とかの1冊も紹介されなかったんで、著者が行ったインタビューからの構成が主体のようなんですが、日本軍贔屓が過ぎるなぁというのもがっかりな点でした。

挿絵は水木しげるさん独特のタッチが印象的で、ブーゲンビルとラバウルという両極端な戦場の空気をうまいこと描いているように思いました。
後年、水木しげるさんが亡くなったと聞いた時も、真っ先に頭に浮かんだのがこの本の挿絵と「劇画ヒットラー(リンク先プレビュー記事)」だったもんで…。

水木しげるさんだと、「劇画ヒットラー」というのがとても印象に深いのですが、手元にないので…。

ご冥福をお祈りします。

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何かが道をやってくる

レイ=ブラッドベリ著。大久保康雄訳。創元推理文庫刊。

富士見湯行ったら、向かいに古本屋がありまして、それが昔懐かしいたたずまいだったもんでふらふらと入って、目についたブラッドベリを買って帰りました。

10月の万聖節の夜、町にやってきたカーニバル。それに携わったことで13歳のジムとウィルの少年たちは一夜のうちに大人になり、永久に子どもではなくなってしまった…。

という話だったので、けっこう期待して読み始めたんですが、序盤、事件が起こるまでがちょっと冗長に感じられて退屈でした。ううむ… ブラッドベリの傑作だと聞いたのだが…

乗ると歳を取ったり若返ったりする回転木馬とか、逆に奏でられる葬送行進曲とか、全身に入れ墨をしたミスター・ダークとか、避雷針売りとか、想像力をかき立てられる言葉は満載なんですが、「たんぽぽのお酒」とか「太陽の金の林檎」のがおもしろかったです。

「火星年代記」を読み直したいんですが、その前に色々と溜まってるんで、そっちを消化しよう。

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戦争と人間9

五味川純平著。光文社文庫刊。全9巻。

やっとこ最終巻です。

インパール作戦から敗戦まで描きますが、予想どおり、解説が多いもので、小説の体をなしていません。

インパール作戦には標耕平が参加していたので、まだ小説っぽい部分は残っていたのですが、解説の部分はどうにもおもしろくないです。そして耕平、あっさり濁流にながされて絶命…

英介は根が小心者なので日本の敗色が濃厚になってくると慌てていますが、ここに来て、由紀子がどっしりとかまえた感じです。どうして長男だけこんなに俗物なのかと思うくらい、由紀子、俊介、順子と誰も似てません。

ソ満国境にやられた俊介は、玉砕に玉砕の継ぐ太平洋戦線から離れて平穏無事だったりしますが、苫と再会して、ひたすら睦み合ってます。極限状態の男女なので、そっちに行っちゃうのもわからなくもないんですが、なんというか、ここに来てそういうシーンばかり延々と書かれても… (´・ω・`)

そして、前巻で囚われの身となってしまった趙瑞芳さんは、とうとう731部隊の丸太にされて、殺されてしまいました。服部医師がそこにやられて、丸太たちの健康状態を診るという役割を負わされ、眼光鋭い女性丸太がいたところ、実はそれが瑞芳さんだったという… 印象的な人物はどんどん死んじゃうなぁ… まあ、「人間の條件」で主人公を野垂れ死にさせたんで、みんなが生き延びてハッピーエンドみたいな最後はわしも予想してませんでしたが、まさか、瑞芳さんが731部隊とは…・゚・(つД`)・゚・
さすがに敗戦後、大塩雷太は捕まって、処刑されましたが、悪の師匠だった鴫田は生き延びて、武居に至っては行方も知れません。

行方不明と言えば、7巻あたりで出番のなくなった柘植も、とうとう最後は書かれず、軍人なのでどこかの戦場で倒されたんでしょうが、最後ぐらい書いてほしかったなぁと思いました。あれだけ多彩な登場人物を出しながら、どうも比重が偏りがちで、やっぱり大河ドラマのラストって数ある登場人物たちの最後というか、その後というかを見るのも楽しみの1つじゃないですか。意外なその後とか、予想されていた死に様とか、そういうのが全然書かれなくて、つまらないなぁと思いました。

俊介もさんざん「最後は見られない」とか言われちゃってたんで、ソ満国境で野垂れ死には予想していたんですが、最期は描かれず、名もない敗走する日本兵が俊介の死体の傍を通り過ぎるだけで、さんざんスケッチを描いていた手帖があったので俊介とわかるようなもので、呆気ない死でした。

ラストは男たちの死んだことも知らず、揃って待つ順子と邦で締め。ちょっと味気なかったです。

今までさんざん書きましたが、やはり伍代家を中心とした架空の財閥とそこに関係する人びとを描くか、実在の事件、日本が戦争に至った事件とか作戦とかを描くかという二兎を追う者は一兎をも得ずな感じで、どっちも中途半端な読後感でした。第1巻の時点だと大した事件も起きていなかったせいか、いろいろな登場人物の動きとかダイナミックでおもしろかったんですが、実際の事件に誰もからめないせいで解説ばかりになってつまらなくなってしまいました。

この小説を戦争文学の最高峰とは認めたくないものだな…

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戦争と人間8

五味川純平著。光文社文庫刊。全9巻。

クライマックスにさしかかり、伍代家の人びともかなり変節が激しいです。特に絶対安泰かと思っていた当主の由介が、市来善兵衛と軍に批判的なことを言い始めたもので、商売がうまくいかないと言って英介に退陣を迫られ、あっさりと了承しちゃうというのは予想外の展開でした。伍代財閥は日本が満州事変を起こした時に、その尻馬に乗って儲け、現在の地位を築いたという自覚はある御仁なのですが、日中戦争は長引くばかりでいっこうに解決しそうな目処も立たずに泥沼化し、それなのにアメリカと開戦しちゃったもので戦争の傷口は広がる一方で、ある程度の見識を持つ人だったら、日本の敗戦なんて見えていただろうに、それを公然と口にすることも許されなくなっていく日本を由介はただ苦い思いで見守るのみです。
軍以上に強気というか、神国日本を信じて疑わない英介は、伍代家では異色な人物で、唯一、叔父の喬介に似てる感じですが、満州伍代を率いてきた叔父に比べると才覚の点でも度胸の点でもてんで足元にも及ばず、ただ小物感を満載して威張っているところが鼻持ちならない人物として描かれます。俊介があんまり美青年ぶりを強調されるもので辟易して英介どうかと思いましたが、わしは心情的には圧倒的に俊介や高畠、耕平に近いと思うので、英介がいいとは思えないようです。まあ、お父さんや叔父さんと一緒に滅びることなく、最後まで生にしがみついてくれたら、それはそれで貫徹してていいかもとか思ったり。
高畠と結婚した由紀子でしたが、高畠が伍代を辞めたついでに上海へ行き、そこで反日的な活動をしている篠崎と会ったりしたというんで逮捕されちゃいまして、さらに由紀子に気がありつつ、妻と別居することもせず、技術屋だった矢次もぱくられたもので、由紀子、俄然燃えちゃって、2人を助けられるのは自分だけ!と張り切ってます。別に高畠や矢次がそれほど好きなわけではないんですが、この人もいろいろとお嬢様なので、人のできないことをして悦に入ってみたいタイプなのか、満州から東京まで出て来て、いろいろと画策します。もっとも、肝心の高畠も矢次も獄中で転向しちゃいまして、由紀子は熱が冷めて高畠と離婚するんですが、これはこれでおもしろかったので、よしとします。映画だと由紀子は柘植の後を追いかけるようですが、小説の由紀子の方が、わしには魅力的かなぁと思います。
順子は耕平を待ってます。たいがいのキャラがエロい想像をせずにいられない五味川小説には珍しく、耕平と順子はずっと清い関係のようです。いや、何となく。
高畠と一緒に伍代を飛びだした俊介は、結局、邦とくっつきます。斯波発子ともつかず離れずの関係だったし、苫は振っちゃったしで、女性キャラが家族以外に残っていないという消去法めいた落ちですが、梶と美千子みたいに将来を誓い合った仲もいないんで、まあ、無難なところなんでしょう。ただ、当人も覚悟していたとおり、またしても兵隊に取られちゃいます。

あとはガダルカナル戦がメインですが、こちらは解説もしつつ、斯波発子の従兄弟という青年が出て来まして、彼メインで小説が進む分もあり、それほど退屈しなかったです。斯波発子の従兄弟といっても、それまで登場したわけではないのですが、一兵卒で上の不始末を罵るというキャラに感情移入できたのが良かったんでしょう。他の解説もこんな感じで進めてくれれば良かったんですが、こことミッドウェー海戦で死亡した市来善兵衛の甥っ子は例外中の例外で、基本、解説部分は作者のやりたい放題で解説してる感じで、再三文句言ってますけど、そこが最後までおもしろくないような感じです。
あとガダルカナルでは懐かしい不破医師が登場しましたが無事に生き残って帰れたんかなぁ…

徐在林と白英祥は名前も聞かなくなっちゃいました。まぁ、前の巻で徐在林も捕まっちゃったんで、無事だとは思えないんですが、それにしてはおざなりな扱いです。この作者、大河ドラマというのは書けないのかなぁと思います。登場人物がどんなに多くても、そういう人びとが一堂に会するとか、思わぬところで出会って読者だけが作者の紡ぐ運命の非情さにどきわくしているという展開は望めない感じです。どうも話がミニマム…

そして、たきがはがいちばん気に入っていた趙瑞芳さんは、とうとう大塩雷太に捕まってしまいまして、さんざん弄ばれています。あんまり扱いが酷すぎるんで、雷太の情婦が案じるくらいで、すっかり憎々しいキャラになりましたが、全然魅力的じゃないんで、作者の寵愛っぷりが疎ましいというか…
雷太の師匠の鴫田も武居なんかと組んで裏ででかい顔とか、つまらないキャラになってしまいました。まあ、親玉の日本がみみっちい悪役止まりなんでしょうがないっていうか…

いよいよ次が最後の巻だというのに、惰性になってるのが辛いところです。

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戦争と人間7

五味川純平著。光文社文庫刊。全9巻。

とうとう日米は開戦しました。俊介や高畠や由介や市来といった少数の人びとが日本の生産力では決してアメリカにかなわないと言っているのをよそに真珠湾攻撃からとんとん拍子に勝ち進む日本。
でも、この巻では一気に話がミッドウェー海戦まで進み、あとは日本の敗戦にまっしぐらです。

英介はよくある好戦派と描かれ、もともと、あんまり頭が良くなさそうな感じ(時流に乗る才覚はある)なのが、日本はアメリカに勝てると思い込んじゃった感がイタイです。
市来の息子は長年、由紀子に横恋慕してしましたが、全然振り向いてもらえず、飛行機乗りになってミッドウェーに行って、戦死したようです。市来って名前だし、けっこう出撃から戦死まで割いていたんで、信吾って名前は出てこなかったけど、合ってると思います。
と思っていたら、8巻で名前が出てこなかったのは信吾の従兄弟だったことが判明、信吾は健在なようです。

前巻のラストで俊介と入れ替わりで兵隊に取られた耕介は、千田(滝の知り合い)が中隊長になるという幸運に恵まれましたが、捕虜の虐殺に我慢がならなくなって、捕虜を逃がしてしまい、営倉入りで、どんな処罰が与えられるのかわかりません。
耕介の身を順子が案じていますが、それを慰める俊介も、日米開戦でいつ戦場に逆戻りかわからない身です。

一方、鴫田はすっかり小物になっちゃって、武居と組んで上海へ行っちゃって、そこにいた雷太を配下に事業を興すようですが、こういう小悪党のやってることばかり、うまくいっちゃうのは読んでいて爽快感がありませんが、もともと日本自体がそういう小悪党っぽい国家なんで、その時流に乗っていると見れば、どうしようもないのだと思います。

久々に服部医師が登場しましたが、趙瑞芳の身を案じつつ、すぐ傍にその行方を追ってる雷太がいるとか、あるのに、知る機会を逸するとか、雑多な登場人物が一同に介してという大河ドラマの醍醐味はありませんでした。残念。

あと2巻なんで頑張って読もうと思いますが、日本の敗戦に向けて、ますます小説よりも解説が増えるのかなぁと思うと、むずむずします。

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