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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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白旗の少女

比嘉富子原作。みやうち沙矢作画。別冊少女フレンドコミックス刊。

沖縄戦であまりに有名な白旗を掲げて米軍に投降した幼い少女の実話の漫画化です。

作画のみやうち沙矢さんは漫画図書館Zで「永遠のウィズ」という盲導犬とパピーウォーカーとなった少女との話とか、「キミノココロボクノココロ」というドッグセラピストの少年・少女と犬たちの話を描かれてまして、実は、たきがはが涙腺を絞られまくった(動物物には弱いから)作者さんだったので、絵を見た瞬間にあれ?と思い、最後の既刊の紹介でああ!と納得しました。上記2作に比べると絵が上手くなってます。巻末の体当たりな取材漫画も素直におもしろかったです。

しかしこの話の何が凄いと言って、6才の少女が父親の教えに従い、「自分で考えて行動しろ」を実行したことじゃないでしょうか。あの当時の沖縄で、いったいどれだけの人がそんなことをしていたのか、我が身をあの場所に置いてみても、果たしてそんなことができただろうかと思います。
だからこそ、彼女は生き延び、2人のお姉さんと再会することができたのではないかと思うのです。
そう、彼女は単に幸運なわけではなかった。生き延びるべくして生き延びたのだと思います。

それだけに味方さえ平気で殺す日本軍を恐れて、両手両足を失った老人と、視力を失ったその妻女のもとに身を寄せることを、きっかけは偶然とはいえ、厭わなかったのだろう。だから、後半の老夫婦とのやりとりが心を打つのです。
また彼女一人だけを投降させ、自分たちは洞窟で誰にも知られずに死を迎えようとするお二人には、かなうものならば穏やかなる死を迎えてほしいと願わざるを得ません。

絵柄はばりばりの少女漫画タッチで、読む人を選びそうですが、是非、目を通してほしい傑作です。

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水筒

新里堅進著。ゲン・クリエイティブ刊。全2巻。

サブタイトルが「ひめゆり学徒隊戦記」となっているように、ひめゆり学徒隊を描いた新里堅進さんの漫画です。タイトルの水筒は沖縄県平和祈念資料館に飾られている生徒さんの遺品で、当時の水がまだ入ったまま展示されている、というシチュエーションになっていますが、そう言えば、誰の水筒だったか描いてなかったですね。

ひめゆり学徒隊のことを、主に教師の一人の視点で描いてますが、「シュガーローフの戦い」に比べて絵が若い感じがしました。

卒業を前にして学徒隊として戦場に放り込まれ、南風原陸軍病院壕での奮闘、摩文仁への敗走、無責任な解散命令を出され、各個撃破という最悪の形で迎える死ときて、最後まで生き延びた学徒隊を描きますが、わしはラスト、死を選ぶよりも生きて皆のことを伝えねばという使命感で生き延びた学徒隊の目の前で、泣きじゃくる幼児を「Don't cry」と言いながら泣いて抱き上げた米兵の姿に妙に感動してしまいました。それまでは彼女たちにとっても沖縄の人びとにとっても日本軍の主張する「鬼畜米英」が、自分たちと同じ人間だったのだと理解するのにこれほどわかりやすい構図もないと思いまして。

だから思うのですよ。軍隊なんかいなければ沖縄は戦場にならなかったのだと。ならば、軍も基地もこの世界からなくさなければならないのだと。

新里さんの漫画は、わりとそういうメッセージ性は薄いところがあるんですが、はっきりと書いてもいいんじゃないかなぁと思います。事実を積み上げて、そこから何を読み取るかは読者次第というには、わしは日本人はあまりに幼いと思うのです。

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エル・フィリブステリスモ

ホセ=リサール著。岩崎玄訳。井村文化事業社発行。フィリピン双書3。

ノリ・メ・タンヘレ」の続編です。

前作はシーサやエリアスを書くことにより、階層的な広がりを見せていましたが、今作は話の中心は学生たちとアメリカ帰りの富裕な宝石商シモウンに移り、そのうちの1人は哀れな母シーサの息子バシリョでしたけど、世界はずいぶんと狭くなってしまいました。

ただ、その分、著者が己を託したとも思えるイバルラが意外な姿で再登場し、それでも革命家にはならずテロリストに留まって、その意図するところも失敗に終わってしまうのはもともと裕福な家に生まれて、生涯、実際の運動をすることなく、理論家として処刑されたリサールらしい終わり方ではないか、というのが訳者の感想でした。

巻末にリサールの書いた論文「フィリピンの今から百年間」と「フィリピン人の怠惰について」がついていますが、ちょっと大英帝国(当時は)を美化しすぎてて(隣の芝生は青い論理か)、フィリピンより文明の進んでいない(と思われていた)アフリカを貶めたような見方をしているのがリサールの限界かとも思いました。

あとカバーの裏に登場人物の紹介があるんですけど、いきなりのネタバレはやめようよ…

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ノリ・メ・タンヘレ

ホセ=リサール著。岩崎玄訳。井村文化事業者発行、フィリピン双書1。

偶然読んだホセ=リサールの伝記漫画で、フィリピン独立の英雄だと知り、興味を覚えて図書館を検索したら置いてあったので早速読んでみました。

植民地時代のフィリピン。スペイン留学から帰ってきた理想に燃える青年、地主の息子クリソストモ=イバルラに託して描いたフィリピン独立前夜の物語。

教会を信じ、敬虔な信者だったイバルラは、やがて父がその教会によって貶められ、遺体さえも湖に投げ捨てられたと知っても、なお教会こそがフィリピンを導くのだと信じて己の理想を貫こうとしますが、飽くまでもイバルラ父子と対立する教会は、イバルラをフィリブステロ(フィリピンにおいてスペインからの独立を果たそうとする者を指しますが、超反動的な教会によって諸悪の根源と見なされ、神にも逆らう極悪人と信者には吹き込まれていたそうです)として裁こうとするのです。

リサールがこの小説を著した時、教会はフィリピンにおける諸悪の根源でもありました。超反動的な考え方により、スペインからの独立を良しとせず、多くの土地を有して貸し付け、リサールの父も年々上がる賃料に苦しめられます。また精神的に人びとを支配することで世論を誘導することも可能でした。
なので、理想に破れて全てを失っていくイバルラは、フィリピンで銃殺刑に処せられたリサール自身にも重なって見えます。

けれども、この小説が優れていると思うのは、イバルラは主人公であり、作中でも最大の苦難を味わわされますが、しょせんは地主、金持ちなんですよね。それ以上に苦しむ庶民の姿を、2人の息子を持つ母でありながら、謂われのない教会の責め苦により、狂人となってしまったシーサや、元は中流階級の出身でありながら、イバルラの祖父によって貶められたエリアスなども描くことによって、話が大きく膨らんでいくところです。
なので中盤、イバルラをそれと知らずに助けたエリアスが、貧しい人びとの願いを託そうとして断られたシーンなんか読んでると、イバルラの世間知らずっぷりとかお坊ちゃんぶりにイラッとしたりなんかもするのでした。
父祖の仇の子孫であるイバルラを、たった一度、命を助けられたという理由で恨みを捨て去り、命がけで守ろうとしたエリアスは間違いなく、この話のなかではいちばん格好良かったです。

その一方で、教会と同じように権力を持ち、人びとを苦しめていた自衛隊(正規の軍隊ではない)や、イバルラの周辺の人びとなんかも描くことで、その醜さをあぶり出しているところなんか、当時のフィリピンでは危険な書物だったんだろうなぁと思わなくもなく。
それ以上に、多才な登場人物や、フィリピンの習慣とか文化の描写もおもしろかったです。

リサール自身は処刑されてしまったため、フィリピンの独立を見ることはありませんでしたが、その死は人びとを奮い立たせ、革命へと導きます。
たった2ヶ月ばかりの縁でしたけど、無関係とは思えないフィリピンという国の一面をこうして読むことはとても興味深いものでした。

引き続き、リサールの「エル・フィリブステリスモ」も置いてあるそうなんで読むつもりです。

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日本残酷物語5

宮本常一、山本周五郎、揖西光速、山代巴監修。平凡社ライブラリー刊。全5巻。

サブタイトルは「近代の暗黒」ですが、今までの巻でいちばん駄目だなぁと思ったのはラッコなどの密猟者「海の男スノー」の一節のせいです。日本残酷じゃないじゃん! ただの英雄譚じゃん! 

あと、第3章「大地のうめき」は、今までの農民残酷物語とかぶるところが多かったんですが、わざわざ章立てにした意味がわかりません。小作争議や米騒動なら、ちゃんと焦点を絞って書いてくれなくちゃ。

さらにアイヌと同等、あるいはそれ以上に収奪された朝鮮半島についての記述が最後にちょっとありましたが、それは片手落ちというものだよ…。

そして、なぜか、同じ4章に入ってるんですが、軍隊について書くなら、空襲で負傷させられ、何の保証もない民間人についても言及しなくちゃ。

と突っ込みどころのが多かった巻でした。

これで全巻読んだことになるんですが、やはり第1巻の壮絶さがいちばんで、巻を追うごとにインパクトが薄れてしまうのは尻切れトンボな印象です。

あと、監修はあくまでも全体のまとめで個々の節、あるいは章単位で執筆者が変わるらしく、そのレベルがけっこう差が大きいのもマイナスかな。

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