宋友恵著。愛沢革訳。藤原書店刊。
前に読んだ「
伊東柱」の再改訂版だそうです。今度は全訳されてるので索引とか解説も含めると600ページ超の大ボリューム。内容も尹東柱(ユン=ドンジュ)一人に絞ることなく、その先祖が北間島(プッカンド。現中国領)に移住するまでのところから始まって尹東柱の死後の評価に至るまでと、まさに民族詩人・尹東柱について知りたかったら、まずはこれに相応しい大作です。ただ尹東柱作の詩は完全には網羅されてないので詩集をお求めの向きには向きません。
ただ読んでて、著者が尹東柱を好きすぎて、ずいぶん感傷的だなぁという文が目立ったのと、中国共産党よりも国民党の評価が高いようなのはいただけないと思いました。
まぁ、同じ朝鮮の人ですから、民族詩人・尹東柱への思い入れは日本人のわしなんかは思いも寄らないような強さがあるんでしょう。そこは、いつまでも過去を顧みようとしない日本という国を恥じる気持ちとは反対の、朝鮮を誇る気持ちというのもあるんだろうと思います。
ただ訳者が書いた解説で朝鮮民主主義人民共和国にて尹東柱の評価が高まっているようだというのを紹介した時に、日本の尹東柱研究者が「南北の文学観が、一歩近づいたことを喜びたい」と紹介し、これに「異議を唱える人はあるまいと思う」と述べるのは、わしは大いに異議を唱えたいですわ。朝鮮半島分断の原因を作った日本人が、よりによって
「南北の文学観が、一歩近づいたことを喜びたい」とか、どの面下げて言えるんでしょうかね? 何、その上から目線。
尹東柱を殺したのは日本だって自覚あるのかおら、な気持ちです。
あと、「尹東柱」読んだ時には尹東柱は巻き込まれたと思ってましたが、特高的には宋夢奎(ソン=モンギュ)が要視察人だったんで、一緒に行動してた尹東柱も尾行されてたみたいで、訴状を読んだところでは二人が徴兵制度を利用して、朝鮮人を逆に鍛えようとしたのがそもそも問題視されたとありまして、でも、ここら辺の考え方は二人というより、特高のだったらいいなという決めつけに近く、その路線に沿って宋夢奎や尹東柱を描いてしまった「
空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」は駄目くね?と思ったりもしました。
尹東柱の詩は、なにしろ「序詩」の
引用ここから。
いのち尽きる日まで天を仰ぎ、
一点の恥じることもなきを、
引用ここまで。
のような清廉潔白さが特徴の1つだと思います。この限りなく澄んだ視線の前で、わしは、
引用ここから。
恥の多い人生を送ってきました。
引用ここまで。
な人間なもんですから、けつまくって逃げ出すしかないなぁというのが正直なところです (´・ω・`)
好きというのもおこがましいっていうか。
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