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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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ファイティン!

監督:キム=ヨンワン
出演:マーク(マ=ドンソク)、ジンギ(クォン=ユル)、スジン(ハン=イェリ)、ジュニ(オク=イェリン)、ジュニョン(チェ=スンフン)、チャンス社長(ヤン=ヒョンミン)、コンボ(カン=シニョ)、パンチ(イ=ギュホ)、ほか
見たところ:桜坂劇場
韓国、2018年

新感染 ファイナル・エクスプレス」での熱演も記憶に新しいマ=ドンソクさんの新作です。50cmの上腕筋というモノホンなパワーをひっさげつつ、アクションだけじゃない感動物に仕立て上げているのはさすがの韓国映画です。

アメリカでボディガードとして働くマークは韓国から養子に出された移民で、かつてはアームレスリングのチャンピオンになったこともあったが訳あって引退していた。そこに自称スポーツエージェントのジンギが現れ、マークに賭けアームレスリングをやらせたことでマークは職場を首になるが、韓国に戻ったジンギに声をかけられ、アームレスリングの世界に戻ることになる。ジンギが教えた実母の家に向かったマークは、母がすでになく、シングルマザーの妹スジンと二人の子どもたち、ジュニョンとジュニがいることを知る。なかなか三人と話せないマークだったが、ジンギが賭けアームレスリングを持ちかけたチャンス社長の持ちビルでスジンが洋品店を開いていたこともあり、スジン母子はマークを家族として受け入れるようになっていくが、ジュニョンから母からのメールの存在を知らされたマークは、スジンが本当の妹ではないことを知ってしまい、スジン母子に背を向けて、アームレスリングの韓国大会に向かうのだった…。

と、孤独でアームレスリング以外の特技を持っていない(+その腕っ節を生かせる)と思っていた男性が、本当の絆を得て、韓国のアームレスリング・チャンピオンになるまでの話です。
いや、結末は予想つくんですけど、途中経過がそう来たか!ってところはなかなか良かったですね。ジュニちゃん、まじ天使や… 特に、血がつながっていないと知り、スジンたちを拒絶したマークが、決勝で当のスジンたちとの繋がりを思い出し、奮起して勝つという展開はお約束なんですけど、主人公にいらっとしつつ、血を特に大事にする韓国の文化も知っているんで理解してやりたいと思いつつ、でもやっぱり、マークの実母を娘として看取ったスジンの誠実さも知っているし、ジュニョンとジュニ兄妹がいかにマークの心を和ませたかもわかってるんで、最後、家族を取り戻したマークの勝利者インタビューにはほろっとさせられました。

ジンギくんもただのチンピラ(というか、「LastRanker」のマキスを思い出したわけですが…)と見せかけておいて、友人の借金を肩代わりさせられちゃったお父さんがいるという設定なんかはひねりがあって良かったですな。また、お父さんがいい人で、決勝戦で、それまでマークが知り合った人たちがテレビ中継に見入ってるんだけど、お父さんとか、マークとジンギを逮捕しようとしちゃった警官とか、スジンと同じような借り店舗で働く女性たち(小売店の店長という感じでしょうが、なにしろ店が狭い。間口が1mもない。韓国ではよく見る形式でしたが)とか、そういうところも良かったですな。そのなかでもジンギくんのお父さんがいい人で、いい人だから友人の借金なんか肩代わりさせられちゃってるんだろうなぁと思うと、ジンギくんがひねたことしか言わないけど、お父さんのことを本当は尊敬してるんだろうなというのが伝わってきた演出が良かったですな。

初っぱなは「警察呼びますよ」とか言って生意気だったジュニョンくんも、シングルマザーとして頑張るお母さんと、妹のことを思いやっているのが伝わってきて可愛かったですね。それだけになかなか素直になれない大人に対して、妹と二人で「仕方がないんだ」と言い訳しながら、マークの決勝戦を応援しにいく(実は二人がメダルを取っちゃったからなんですが)、結果的に「応援に行くな」と言ってたスジンもやってくるという流れがわかりやすくて良いです。それにしてもジュニちゃん、まじ天使…

マ=ドンソクさんはアームレスリングの理事とかもやってるそうなんで戦い方もリアルなんだろうと思います。終盤、スジンの家を出ちゃって、一人でトレーニングしてるところも実際にやってそうな感じとかもなかなか。

期待どおりの良作でした。

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リベラ・メ(何度目か)

監督:ヤン=ユノ
音楽:イ=ドンジュン
出演:サンウ(チェ=ミンス)、ヒス(チャ=スンウォン)、ヒョンテ(ユ=ジテ)、ミンソン(キム=キュリ)、ハンム(パク=サンミョン)、班長(イ=ホジェ)、インス(ホ=ジュノ)、マンチ(キム=スロ)、ジョング(パク=チェフン)、チョン=ミョンジョン医師(チョン=エリ)、ほか
韓国、2000年

たきがはの好きな消防アクション&サスペンス映画です。釜山で人命救助率第1位と言われるクムジョン消防隊(という設定)の消防士対天才的な放火犯ヒスとの戦いをスタントなしの、ほぼロケで描いた、モノホンの炎にたっぷりひたれる映画。

ネームバリューから言ってもチェ=ミンスさん演ずるサンウがトップに来るんですが、実質的な主役は初見から言ってますが放火犯のヒスです。まぁ、放火犯にとっちゃ消防士は不倶戴天の敵(お互いに)ですから、ヒス対消防士という構図で、なかでもヒスに真っ先に気づいたサンウが目の敵にされ、サンウの身代りになってヒョンテも殺されちゃったんで終盤はヒスにさらわれたミンソンのこともあって、ヒス対サンウという構造になりますが、本質はヒス対消防士です。それぐらい、今回は個性豊かな消防士たちの活躍がいちばんおもしろかったです。初めて見た時はヒスに目を奪われたものでしたが(たきがはの好きな暗い過去とか… これだけ子どもへの虐待が後を絶たぬ昨今、こういう野次馬根性な見方も何なんですが)、今回は消防士たちの活躍が初っぱなからクライマックスっぽくって、良かったです。まぁ、火事となると命がけの消火活動になってしまうので、クライマックスになるのはしょうがない一面もあるのでしょうが、特にラスト、作中では通算3度目の火事の舞台となった大病院バプテストに赴く消防士たちが、病院のすぐ手前で渋滞に巻き込まれ、真っ先に消防車を降りたサンウを見習って、現場に駆けつけるクムジョン消防隊のみんなを、思わず集まった野次馬たちが声援を送るシーンなんかいいですね。思わず、一緒に手をたたきたくなります。ここ、ハンムの見せ場でもありますし。
そういう意味ではいちばん目立っているのはサンウなんですけど、班長の落ち着きぶりはいつも頼もしく、マンチは台詞がない(火事で喉をやられたという設定)けど存在感を見せ(背が高いのと、「シュリ」「反則王」で知ってる顔なので)、ハンムは同僚のために怒るシーンとか(消防士は治療費が自己負担とか、病院がいっぱいなので断られかけたとか)せっかくのクリスマスに家族サービスもできず(薄給だから?)最後は死んでしまうとか、3枚目のパク=サンミョンさんが演じると味があります。しかし、嫁がすごい美人だったので、娘(双子)は母親似だろうか? 新人のいじられキャラのジョングとか、途中でリタイアしちゃったヒョンテとか、そもそも1カット(死体の写真も含めて2カット)しか出てないインスの存在感とか、あと2,3人いるんですけど、そういう彼らがいちいち愛おしくて格好いいです。

班長が「太白山脈(アン=ソンギさん主演)」に出てたっていうんで役柄は何かと思ったら、ヨム=サンジンたちに同情的な慈恵病院のチョン院長でした。ああ、合うかも…

あちこちでたきがはが気にしてるホ=ジュノさん(ちゃんとした出演作はほかに「火山高」「シルミド」しか知らないもんで…)は今作は特別出演でしたが、ううむ、「達磨よ、遊ぼう!」には出てないのかなぁ、やっぱり…

キム=スロさんは「達磨よ、遊ぼう!」に出てた時は、なぜかそんなに大きく見えなかったんですが、ユ=ジテくんが同じくらいの背格好だったので、意外と大きな共演者が多かったのかも、と逆に思いました。190cmの長身なんですけど。で、キム=スロさんの初見と言えば、やっぱり「シュリ」なので、久しぶりに見たくなりました。

ちなみになんで唐突に「リベラ・メ」見たのかと言ったら、なぜかユ=ジテくんが見たくなったからなのでした。あの、ちょっと頼りない、人の良さそうな笑顔が見たかったのでした。「Split」では格好良かったけど。

ヒロインというか、インスの恋人で、今作でサンウとくっついた(でもキスシーンもなかったけど)ミンソンを演じたキム=キュリさんは、あんまり映画への出演はないようで、ちょっと残念。男ばかりの消防士という社会で、唯一の女性消防調査員という役柄で頑張ってたミンソンが好きです。途中、放火専門のソル刑事に、インスの焼死体の写真を見せられて、それでも気丈に振る舞い、一人になった時に滂沱するミンソンが魅力的でした。最後、ヒスを止めたのもミンソンだったしな。

ちなみに最後で焼死してしまったハンム(パク=サンミョンさん)が、最後に煙草を吸ってたのは「火事現場で喫煙なんて!」と批判されるのをよく見るんですけど、あれ、死に水ならぬ死に煙草だよね。もう、自分の死を悟っての末期の煙草ですよね。韓国の男性は徴兵制のために、たいがいの人が喫煙癖を身につけてくるんだそうです。そのわりに、日本ほど「喫煙者くっそ迷惑!!!」とか思うことが少なかったのは、マナーがちゃんと身についてるからなんだろうなぁと思いましたが、今作中でもサンウがぷかぷか、しょっちゅう吸ってるんですよ。でもハンムのあれはこの世の名残の煙草だなぁとハンムの表情を見ていて思いました。

そんなことを確認しての再見でした。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

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V.I.P. 修羅の獣たち

監督:パク=フンジョン
出演:パク=ジェヒョク(チャン=ドンゴン)、チェ=イド(キム=ミョンミン)、リ=デボム(パク=ヒスン)、キム=グァンイル(イ=ジョンソク)、ポール=グレイ(ピーター=ストーメア)、ほか
見たところ:桜坂劇場
韓国、2017年

何かやってないかな〜と桜坂劇場のサイトをチェックしていたら、こちらが今週末までとあったので、それっと行ってきました。全然、予備知識も仕入れずに行きましたが、なかなかおもしろかったです。

韓国国家情報院とアメリカCIAの企てにより、北から亡命させられたエリート高官の息子キム=グァンイルが、ソウルを騒がせる連続婦女暴行殺人事件の有力な容疑者として浮上する。前任者が自殺したことで捜査本部のトップに返り咲いたチェ警視は、グァンイルが犯人であることを確信し、追っていくが、国家情報院の保護下にあるグァンイルは再三、チェの包囲網をくぐり抜けてしまう。CIAの捜査官ポール=グレイは、グァンイルが知っているといわれる北の隠し口座の番号を狙っていたが、そこに朝鮮民主主義人民共和国・保安省の工作員リ=デボムが現れ、事態は彼らの思いも寄らぬ方向へ進んでいくのだった…。

初っぱなが2013年の香港、何でこんな半端な時期?と思っていると、それは最後の方で明らかに。粛清されたという共和国高官を利用してしまう辺り、抜け目がありません(まぁ、その事実もいろいろ言われているんですが…)。

そして、それぞれの立場からグァンイルに絡む4人の男たちが、CIAはまぁ置いておいて、主に南北朝鮮の3人がいろいろな思惑があって、共感できる人物を見つけたら、この映画、はまると思います。
グァンイルを保護しなければならない情報院(KCIAのことかな?)のパク=ジェヒョクは、まさに中間管理職って感じでがちがちの役人ですが、彼が映画の冒頭でがらっと雰囲気を変えてワイルドな風貌になっているところを見ると、いつまでも小役人ではいますまい。
暴力が問題視されているチェ=イド警視は、裏返せば、それだけ正義感が強いということでもあります。確かに強引な捜査方法ではありますが、前任者の自殺で警察の上部は連続婦女暴行殺人事件の解決に躍起になっているので、そこは目をつぶれるレベル。むしろ、チェ警視がいちばん共感しやすい人物でした。
そして、いちばん最初(じゃないかもしれないけど画面上では)にグァンイルが起こした事件からグァンイルを追って脱北までした工作員のリ=デボム。しかも途中で、グァンイルを追ったことで逆に報復され、部下を失い、自身も傷を負ったことを明かします(相手はチェ警視)。ある意味、チェ警視以上にやりたい放題で自由に動いてますが、それもこれもグァンイルを捕まえるため、なぜならグァンイルはリの部下だけでなく、共和国で12人も婦女暴行殺人を起こした稀代の殺人狂なのですから。その最初の事件はいたいけな女子学生が襲われ、しかも一家も惨殺されたという悪質なものを観客は見せられているのです。どうしてリ=デボムの行動を批判できるでしょう。

けれど彼らはいずれも国家機関に所属する、いわば、国の狗です。だから自分の正義感だけで動いても、上司がそれを認めるとは限らない。あるいは時には反対もされる。自分が消されるかもしれない。パク=ジェヒョクが不本意ながらグァンイルを保護しなければならなかったように。チェ警視が決定的な証拠を見つけてグァンイルを追いつめても、捜査本部が閉鎖され、協力的だった検事に見捨てられ、やむなくグァンイルをジェヒョクに渡さなければならなかったように。12人(韓国でさらに7人、香港でも2人)も殺していながら、父親が最高幹部の部下であったために見逃されてきたグァンイルが、その幹部が失脚したために、今度こそ、北で裁けると最後に捕えたリ=デボムが、国のトップが代替わりすることで最高幹部が復活、当然、グァンイルの父親も復職、捕えたはず、今度こそ裁けるはずのグァンイルに撃ち殺されたように。

そんな過去が描かれ、グァンイルを追った2人は表舞台から消えた。過去とは180度も変わったようなワイルドな風貌になった香港に現れたジェヒョクは、あの時、自己保身に走ったから生き延びたとも言えます。少なくとも彼はグァンイルに目をつけられ、殺されずに済んだ。だからこそ、最後、グァンイルにとどめを刺すのはジェヒョクの役割になったのかもしれません。

そんな狂気と紙一重の男たちに比べて、CIAのポールは俗人です。やってることは国家レベルの悪巧み(グァンイルの協力で共和国の中国にある隠し口座から大金を奪おうとしている)ですが、人物はいたって平凡な感じです。

そして、そんな男たちを時に翻弄し、嘲笑い、見下し、命令することに慣れた稀代の殺人鬼(判明しているだけで21人は殺してるわけですから)キム=グァンイル。正直言って、画面を見ていて、グァンイルが登場して、薄笑いを浮かべるたびに、わしは目を逸らしたくなりました。それぐらい、えぐい。年齢制限ないのが不思議なくらいです。いや、そういう話じゃなくて、それだけグァンイルの存在は徹底した悪でした。上にあげた3人の男たちが善ではない。ただ、グァンイルが悪、それも絶対悪というのだけは決まっているように思います。その悪に比べれば、どんな悪も霞みそうな、凄まじい悪です。それを演じたのが29歳の若手というところに韓国映画界の豊潤さを感じました。ハンサムなだけに、余計えぐい。薄笑いを浮かべて、被害者を絞殺する。捕まえられても証拠をあげられても薄笑いを浮かべてみせる。ハンサムなイ=ジョンソクが演ずると、その分、邪悪さが増した感じです。よくこんなキャストしたな。よくこんな役を引き受けたなと感心します。
公式サイト行ってごらんなさい。まるでアイドルですよ。でも、この若さでこんな悪役を演じきった彼は、やがて、凄い俳優になるんじゃないかと思います。見ていた時はそんなことは考えもせず、グァンイルが最後に殺された時はすっきりしちゃいましたけど。

知った俳優さんはチャン=ドンゴンさん(「友へ 〜チング〜」見た)ぐらいしかいませんでしたが、出演作見てたら、パク=ヒスンさん(リ=デボム)さんが「密偵」出てまして、冒頭で日本の憲兵に追われたジャンオク役でした。ハシモトじゃなくて良かった…

ちなみにタイトルの「V.I.P.」は、当然、グァンイルを指すんですが、これは90年代くらいまでの韓国で見られた「北から亡命させた最重要人物」だそうで企画亡命者というんだそうです。

監督は「新しき世界」の監督で、次回作も期待できそうですわい。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

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1987、ある闘いの真実

監督:チャン=ジュナン
出演:パク所長(キム=ユンソク)、チェ検事(ハ=ジョンウ)、看守ハン=ビョンヨン(ユ=ヘジン)、女子大生ヨニ(キム=テリ)、キム=ジョンナム(ソル=ギョング)、チョ刑事(パク=ヒスン)、記者ユン=サンサム(イ=ヒジュン)、ヨンセ大学生イ=ハニョル(カン=ドンウォン)、ソウル大学生パク=ジョンチョル(ヨ=ジング)、ほか
韓国、2017年

光州(クァンジュ)事件を描いた「タクシー運転手 約束は海を越えて」より過ぎること7年、ある大学生の拷問死をきっかけに大きく動いた韓国の民主化闘争の流れを描いた傑作映画です。主役を一人に絞ることなく、ポスターにも示されたとおり、6人のまったく立場の違う主要人物を追うことで繋ぎ、ラストまで引っ張っていく力量はさすがの韓国映画、無駄もなく、隙もありません。

反共活動の中心地、南営洞で一人の大学生が拷問死させられた。責任者のパク所長はその事実を伏せようとするが、死んだその日のうちに解剖もさせずに火葬にさせようとしたことで、常々パク所長以下、南営洞のやり方に不満を抱いていたチェ検事は、大学生の遺体を強引に解剖させ、その事実を新聞記者のユン=サンサムにリークする。事実をすっぱ抜かれたことで言い逃れのできなくなったことを知ったパク所長は2人の部下を実行犯に仕立てることで事件を収束させようとするが、軍事政権に抑圧されていた民衆の不満は容易に収まらず、学生たちのデモも激しさを増していくが…。

ソル=ギョングのネームバリューが大きいですし、さすがの民主化運動のリーダーとしてパク所長が長年追いかけている大物ですが、比重はそれほど大きくありません。要所を締める重鎮って感じの使い方が贅沢です。

看守のビョンヨンは「タクシー運転手」でもお馴染みのユ=ヘジンさん。最初は夫を失った姉とその娘と同居する、ちょっと頼りない叔父さんに見せつつ、実は民主化運動のリーダーと刑務所に収監された新聞記者を繋ぐ鳩役として、その信念は作中の誰よりも強い役どころが美味しいです。しかし、再三の拷問にも耐えていたのに、パク所長に身の上話をされ、姉と姪を殺すと脅されて、とうとうキム=ジョンナムの居場所をばらしてしまったのは非情に徹しきれなかった人情派が逆に良かったですね。そのくせ、捕まった時にとっさに姪の持ち物に通信文を隠す辺りの機転の効き方なんかがたまりません。パク所長らが捕まえられ、釈放されてすぐに姉に電話したシーン、声だけの演技なんですけど、いかにもな拷問明けって感じの痛々しさが伝わって、こっちもお姉さんと一緒に涙です。

チェ検事は最初に力強く映画を引っ張っていく正義感溢れる人物でしたが、辞職させられて、ちゃっかりユン記者に拷問の証拠とかを残していく辺りなんかがいい感じでした。どうやら妻のお父さんのおかげで、多少やんちゃでも目をつむってもらえていたのを、「勝ち目はゼロ」と言いながら、酒を煽りつつ大学生の拷問死事件を闇に葬らせない動きはハ=ジョンウさんのクールな眼差しもあって、反共という伝家の宝刀に楯突く駄犬(と言われてた)ぶりがさらに格好良かったです。その後、弁護士に転身したのもいい選択。「ベルリンファイル」に出ていたというので調べてみたら… ジョンソンかよ!!! ガ━━━(゚Д゚;)━( ゚Д)━(  ゚)━(   )━(゚;  )━(Д゚; )━(゚Д゚;)━━━ン!!!!! 道理で癖のある格好良さ…

ヨニちゃんはビョンヨンの姪で、2人の話から察するに労働組合の運動を引っ張っていながら、仲間に見捨てられ、失意のために酒に溺れて交通事故死した父のことがあり、民主化運動を冷めた目で見ちゃってたんだけど、叔父さんの活動とか、デモに巻き込まれて同じ大学の先輩イ=ハニョルくんに二度も助けられた縁もあって、最後の方でそのハニョルが瀕死の重傷だっていうんで泣きながら飛び出していって、最後はデモ隊と一緒にシュプレヒコールをあげるシーンまでの熱演が等身大の学生って感じで良かったです。考えてみたら、ヨニちゃんて、わしと同年代なんだよね〜 それを意識して見ていたわけではないんですけど、ヨニちゃんのシーンがいちばん共感しました。

記者のユン=サンサム、権力の言うことなんか黙って聞いてやらねぇぞ!って侠気がジャーナリズムに溢れてて、いいですね。ジャーナリズムはこーでねーと。もうね、編集長っぽいおじさんが記者たちにそういう指令を出すシーンなんか見てて、ガッツポーズ出るよね。ていうか、日本の自称ジャーナリストたちは韓国の記者たちの爪の垢でも煎じて飲めばいいんですよ ヽ(`Д´)ノ

そして、これらの人びとに悪役として対立したパク所長、北出身だと紹介されたんで、西北(スプク。「火山島」参照)かな〜と思ってたら、そんな感じでした。家族を朝鮮人民軍に殺され、一人だけ南に逃れてきたことは上にも書いたとおり、ビョンヨンを脅す際に語られていますが、自分が地獄を見たからといって、自分の気に入らない人間をアカ(という言葉では物足りないほどの悪意を「パルゲンイ」という言葉から感じるわけです)に仕立て上げるのはしちゃいけないんだよ…

パク所長の部下でスケープゴートに仕立てられそうになるチョ刑事は途中、約束どおり執行猶予にならないので反抗しようとしますが、そこは子飼いの悲しさ、家族を人質にとられて泣く泣く受け入れます。ただ、事情はあるとはいえ悪に徹したパク所長に比べると中途半端さはいかんともしがたく、メインの6人に入れるにはちょっと物足りない感じがしました。

むしろビョンヨンの上司の刑務所長の方が、最初のうちこそ規則大事の官僚的でしたけど、パク所長の部下の暴行でビョンヨンが鳩(つまり連絡係)を務めていた記者さんに面談の記録を渡して、それを記事にさせる辺りなんかは良かったですね。ただ、あくまでも官僚的な人物だったんで最後にパク所長が刑務所にぶち込まれた時も嫌みの一つも言うでなし、黙って縄をほどくとか淡々とした感じでした。

そして最初から死者だったパク=ジョンチョルくんは終盤の拷問のシーンと、そもそもの発端になってたために遺影ではしょっちゅうお目にかかっておりまして、ソウル大学といったら韓国一の名門大学です。そこに入った息子に両親の期待はさぞ高かったろうと思われるだけにジョンチョルの遺灰を川に流し、その川が半分凍っているもので遺灰が氷の上に残ったのを見て、お父さんが泣く泣く「そんなところにいちゃ駄目だ」と言って雪の降りしきるなか、川に入って遺灰を流すシーンは涙をそそられましたし、ラスト、ついに明らかにされるジョンチョルくんへの拷問の実行犯を教会が訴えるシーンでも、その日がわざわざ5月18日(言うまでもなく光州事件の発端!)というのも胸を熱くさせてくれました。

そんなジョンチョルくんと直接の知り合いではないにしても「何かせずにいられない」と言ってヨニちゃんの心を鷲づかみにしたイ=ハニョルくんはチョ刑事に代わって6人目のメインキャラでも良かったんじゃないかと思いましたよ。デモ隊が警察の暴行でいったんは鎮まりかけたのをまた先頭に立って叫ぶ侠気、それゆえに催涙弾が頭に当たってしまい、亡くなってしまった不運さ、彼が重態だというのを知ってデモに反対していたヨニちゃんを大学まで走らせ、最後はデモ隊とともに拳を上げてシュプレヒコールを叫ばせた思い、そんないろいろなことを思って最後はヨニちゃんと一緒に泣きながら観てました。
ハニョルくんが2回目にヨニちゃんを助けた時も、そっとスニーカーを置く優しさとか、ハニョルくんはいい奴でした。それは当然、「タクシー運転手」のジェシクくんもそうだったように心優しい学生だったわけで、そんな人物は大勢いたわけで、そんな彼らが立ち上がり、戦わざるを得なかった民主化、そうして無数の血を流すことで民主化を勝ち取った韓国の人たちをわしは無条件で尊敬し、信頼するのです。それは決して日本という国が経験していないことであり、ゆえにこの国は平気で過去を忘れ、その過ちを繰り返しうるのではないかと思うのです。
そう、今日はたまたま沖縄県の知事選の投票日でしたが、その選挙権を勝ち取るための痛みさえ、わしらの先祖は経験していない(女性の参政権は敗戦後だから)と思うと、日本という国の唱える民主主義がどれだけいかがわしいか、先の敗戦の反省をろくにせず、サンフランシスコ講和条約を結ぶことで素知らぬ顔で西側に与した日本という国への疑義は日々、増すばかりなのでした。それは国ばかりでなく、従軍慰安婦や南京大虐殺、平頂山事件などは言うに及ばぬ過ちを犯して、そんな国に騙されたと平気で言えるこの国の国民への疑義でもあるのです。

9月29日から公開の予定が台風のために一日遅れたためか、今日はけっこうな入りでした。でも、それを見ている人たちのどれほどが韓国という国の痛みを思い、それに引き換え日本は…と思っていたのか… そんなことを思いながら劇場を後にしたのでした。

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鉄人28号 白昼の残月

監督・脚本:今川泰宏
原作:横山光輝
出演:金田正太郎(くまいもとこ)、ショウタロウ(粟野史浩)、敷島博士(牛山茂)、大塚署長(稲葉徹)、高見沢(石塚理恵)、村雨竜作(若本規夫)、村雨健次(幹本雄之)、ビッグファイア(中村正)、クロロホルム(西村知道)、ベラネード(内海賢二)、萱野月枝(鈴木弘子)、山岸弁護士(麦人)、寺町警部(仲木隆司)、関刑事(関智一)、官房長官(石森達幸)、秘書(鈴木勝美)、ナレーション(矢島正明)、ほか
日本、2008年

ふと見たくなり、鑑賞。三度目です。戦争と敗戦がひときわ濃い八月だからでしょう。1950年代の高度経済成長期に入らんとする日本を舞台にしながら、戦争の遺した傷痕と闇を追い、その中心に鉄人28号を置く原作アニメが、ひときわ好きだからかもしれません。

原作ではお高ちゃんと綾子さんがいちばん好きなキャラ(次点、敷島博士)だったりしますが、今作ではやはり今作のみ出演(と言いつつ、主役の正太郎、敷島博士、大塚署長に比べると皆さん、微妙に立ち位置とかキャラ設定が違ったりしてますが)の萱野月枝さんとショウタロウがいちばん好きだなぁと思って見てました。
まぁ、この母子がいちばんテーマを濃く反映してますからね。

あと、原作では第2話で死んじゃったものの、ブラコン健次によってけっこう長く尾を引いて影響力を発した竜作が今作ではしっかり生き延びた(辰がいないせいかもしれない)のも好きです。

あとはオープニングだけの登場ですけど、やっぱり原作13回の出演が印象深い大好きな矢島正明さんのナレーションも良い良いv

しかし、大元の漫画でも言及されてなかったように記憶してますが鉄人の動力源って何なんでしょうかね? やっぱりガソリン? 大鉄人を動かすのになんぼいるんじゃいと思って見てたラストシーン、大鉄人の存在は本土を守る切り札というより、大和に近いなぁと思いました。あんなもん動かせるなら、いくつの飛行機が飛ばせるやら… って飛行機を作る材料もないか…

いつもと逆でオープニングに正太郎マーチ、エンディングに鉄人28号のテーマの明るさも相変わらずのアンバランスさ。なのがいい。

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