監督:ジュリアン=デュヴィヴィエ
出演:ぺぺ(ジャン=ギャバン)、ギャビー(ミレーユ=バラン)、スリマン刑事(ルカス=グリドゥー)、イネス(リーヌ=ノロ)、ほか
軟派なお国柄のイメージがあるフランスですが、作る映画は硬派。むっちゃ硬派。その硬派の代表格と言ってもいい、フランスの名優ジャン=ギャバン氏の代表作。
カスバを牛耳るぺぺは、フランスで銀行強盗を犯して指名手配され、ここまで逃げてきた。その後もぺぺは犯罪を重ね、くらえば20年は間違いない。しかし、ぺぺはカスバに飽いていた。カスバを一歩出れば、たちまち警察の網にかかることを知っているので、カスバを出られぬことが、ぺぺをより強い望郷の念に駆り立てる。そんな時、カスバ見学に訪れたギャビーと会ったぺぺは、彼女からパリの匂いを感じ取る。急速にギャビーに惹かれるぺぺ。だが、彼を捕らえんとする警察の網は、今にも締まらんとしていたのだった。
ええ、正直言って、たきがは、中盤で船を漕ぎかけました。ぐぅ〜 どちらかというと、ジャン=ギャバン氏は年寄りの頃の映画から入ったのでそっちのイメージが強く、若いジャン=ギャバン氏にあんまり思い入れがないというのもあるのですが、ええとですね、この時のぺぺの設定って30代ぐらいだと思うんですよね。脂ののったお年、男が惚れるええ男、というのがカスバの帝王ぺぺです。でも、たきがは的には30代のぺぺが望郷の念に駆られて、パリの匂いのするギャビーに惹かれていくのも、カスバに飽きてしまったのも、いまいち、おんどれのせいやろ〜と思うわけです。若気の至りっていうの。認めたくないものだな、若さ故の過ちというやつはっていうの。だから、30代の若造がおうち帰りたいと言われましても、それはギャビーに惚れたのか、それともパリが恋しいのか、どっちやねん、おらな感じで見てたんですよ。
これが、50代、できたら60代いきますと、全然話が別物になります。先日、「
ショーシャンクの空に」で見ましたね。すっかり年取ったモーガン=フリーマン氏のいかすこと! ジャン=ギャバン氏もそうなんです。「
シシリアン」とか「
脱獄の報酬」とか見慣れた目には、若造ジャン=ギャバンにはときめかんのです。でもおじいちゃまなら話は別。さんざん悪事を重ねてきた暗黒街の帝王が、自分の死を自覚するような年になって、望郷の念に駆られる。うわぁ〜 もう、涙腺絞られますわ。もう、おじいちゃんの罪も許して、故郷に帰って、余生を静かに送ってよ、とか思いますわ。なんて自分勝手な。
だけど、今作のようなぺぺがおうち帰りたいと言うのは、カスバの帝王(という言い方は作中はしてないんですが)になったぺぺが、実はその世界のすごく狭いことに気づいて、カスバにいるのに飽きちゃったから、どっか行きたいな〜的に見えたわけです。いやぁ、そんなこと言われても、さんざん悪事重ねてきたのあんたやし。そろそろ責任取りいな。とか思って見ておったわけです。あふあふ
ラスト、ぺぺが死んだとスリマン刑事に騙されたギャビーは、どうやら愛人ぽいおっさんと帰ることに同意します。たぶん、彼女も商売女だったんだろうと思います。ぺぺは彼女を追って船にまで乗るのですが、警察に見つかってご用。でも、最後の頼みで、船を見送らせてくれと言います。デッキに現れたギャビーに思わず叫ぶぺぺ。気づかぬギャビー。その冷たい微笑が印象的なフランス美人でした。
作中の描き方も、ぺぺが惚れているのはギャビーで、パリの香りはいいわけ程度に見えたというのも、あんまり同情しなかった要因です。う〜む…
それはそれとして、邦題いいよね。「望郷」ってのが。原題は「Pépé le Moko」です。ここら辺に訳者のセンスとこだわりを感じるよな、この頃の輸入映画は。
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