忍者ブログ

されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

麦の穂を揺らす風

監督:ケン=ローチ
出演:デミアン=オドノヴァン(キリアン=マーフィ)、テディ=オドノヴァン(ポードリック=ディレーニー)、ダン(リーアム=カニンガム)、シネード(オーラ=フィッツジェラルド)、ほか
2006年、イギリス・アイルランド

たきがはのいちばん好きな映画監督さんのお一人、イギリスの名匠ケン=ローチ監督の1920年代のアイルランド独立と、イギリス政府と結ばれた条約を巡って対立する兄弟を描いた悲劇です。

1920年アイルランド。医者になろうとロンドンに行こうとしていたデミアン=オドノヴァンは、列車に乗り損ねたことからアイルランド独立を探る共和国軍に加入し、イギリス軍に指名手配される兄テディとともに戦う。しかし、1921年にイギリスが提示した休戦条約はデミアンたち、多数の共和国軍兵士の望んだものではなかった。アイルランド自由国軍に加わったテディと対立するデミアンは、やがて自由国軍に囚われてしまう…。

1920年〜1921年のごく短いあいだの話です。しかし、アイルランドを遠い国と思っているわしは、IRAの名前と過激なテロを行うという、テレビで得た知識はあっても、それ以上はまったく知らない国の話でした。第一次世界大戦が終わって、世界恐慌に至る前のつい90年前の出来事、なぜイギリスの領土に北アイルランドが含まれているのか知ろうとしなかったことをわしは恥じなければなりません。

武器も乏しく、イギリス軍の増援部隊を襲撃することはできても、その帰りに隣人がイギリス軍に暴行されているのを見ることしかできない無力さはありましたが、テディをリーダーとしていた時代、そこにはみんなが目指す共通の夢もありました。自由の国アイルランド、700年にわたるイギリスの支配から抜け出すための戦い、そこには地主もいない平等の国、ところが、1921年、イギリスから言い出した休戦条約には、北アイルランドをイギリスに残し、イギリス連邦の一部としてイギリス国王に忠誠を誓えと言う。自分たちが戦ったのはこんな国を作るためではなかったと思ったデミアンたちは、再び銃を取ります。しかしそれは、デミアンとテディが銃を向け合ったように、昨日までの隣人たちと、戦友たちと、家族と敵対するかもしれない道だったのです。

兄の「武器の隠し場所と仲間の名前を言ったら恩赦で出してもらえる。恋人と幸せに生きろ」という提案を蹴って、自分の信念を貫いたデミアンは、恋人のシネードに当てた遺書の中で「兄はもう心が死んでいる」と書いていました。テディの苦しみを誰よりもわかっていながら、銃を向け合わなければならなかった兄弟の悲劇には、甘ったるい結末なんか用意されていません。イギリスの地図から今も北アイルランドが消えていないように、希望を予感させることもありません。

でも、この人のそんな眼差しが好きだ。

登場人物中、いちばん印象的なのはダンでした。共和国軍としては古株のようで、以前、牢獄に入れられた経験を持ちます。しかし、そこで文字を覚えた、と語るダンはウィリアム=ブレイクの詩を諳んじ、高利貸しの金が武器を買うのに要るからと無罪放免しようとするテディに「俺たちの政府の法を守ってくれ」と訴えるのです。学はない。でも、戦いにおいては誰よりも勇敢で、リーダーでいるよりは皆の縁の下の力持ちであろうとしたキャラ、ダンにはそんな印象を抱いています。
テディと決別したデミアンがラスト、自由国軍に囚われたのは、そんな戦友だったダンの死のゆえでした。そんな、ダンのような人は無数にいたのだろうと思いました。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

拍手[0回]

PR

青い鳥

監督:ジョージ=キューカー
原作:モーリス=メーテルリンク
出演:母・光の精・魔女・母性(エリザベス=テイラー)、夜の精(ジェーン=フォンダ)、チルチル(トッド=ルッキンランド)、ミチル(パッツィ=ケンジット)、ほか
1976年、アメリカ・ソ連

有名な童話「青い鳥」の映画です。しかし、なぜ米ソ合作? なぜ全編ロシア語? で主役がチルチル・ミチルじゃなくてエリザベス=テイラーってどゆこと?な疑問点もいっぱりありますが、特に奇をてらったところもない、普通の「青い鳥」でした。童話の方はよく覚えてないけど。1976年当時としては最先端の特殊効果なんでしょう、派手な映像でファンタスティックな世界観を確立、特に冒頭の炎の精や水の精が現われるところなんか楽しかったです。

ただ、映画として楽しいかと言われますと、Wikipediaによると興行的には失敗だそうだし、子ども向けの童話のはずなのに主役がエリザベス=テイラーっておかしいんじゃないかと思うし、夜の精にいたってはなんでジェーン=フォンダをキャスティング?ってぐらいな感じでした。

まぁ、いいんだけどな。1976年ってまだまだ冷戦まっただ中だったような記憶もあるんですが、一緒に映画を作るぐらいには仲が良かったということなんでしょうか? 疑問。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

拍手[0回]

ゆきゆきて神軍

監督:原一男
出演:奥崎謙三、奥崎シヅミ、ほか
企画:今村昌平
1987年、日本

ニューギニア第36連隊の帰還兵、奥崎謙三氏が、戦地で起きた兵の銃殺事件を、生存者に訪ねて事実を掘り起こそうとする姿を追ったドキュメンタリー。無実の罪で殺された兵がなぜ殺されなければならなかったのかという事実を追ううちに、人肉食という日本軍の腐敗というか、困窮ぶりを表すようなショッキングな事実も浮かんでくるけれど、根底に流れているのは当時の日本軍の最高責任者でありながら、自らはまったく裁かれることなく、むしろ平和の象徴であるかのようにのうのうと生き延びたヒロヒトを断罪する気持ちである。

事実を明かすためならば暴力も敢えて振るう奥崎氏のキャラクターが強烈で、監督やスタッフの声はまったく聞かれない。そういう意味では「水俣−患者さんとその世界」とは対極に位置するスタイルであり、むしろ、まったく事情を知らない監督が口を挟んでも蛇足に過ぎないことをわかっていて、黒子に徹したと思われる。

作中、どうしても話すわけにはいかないと固辞する山田吉太郎さんが、奥崎さんの粘り強い説得により、ぽつぽつと話すあたりは真実だけが持つ迫力に満ちている。

問答無用、一度は見ておけ、な傑作。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

拍手[0回]

全身小説家

監督:原一男
見たところ:横浜シネマジャック
1994年、日本

「ゆきゆきて神軍」という一回見たら、忘れられないドキュメンタリー映画がありまして、シネマジャックでその監督の特集をやってます(5月14日まで)。で、「ゆきゆきて神軍」は見るのは決定なんですが、どうせですから、見たこともないのも見ようと思いまして、全部で5本しか撮っていない寡作な監督なんですが、ここで以前の映画馬鹿ならば、どうせなら全部見るぜ!とか言いかねないんですけど、まぁ、たきがはもプー太郎だし、ラインナップ見て、そこまで食指が動いたのがこれだけだったんで、2本にしときました。以前は食指が動かない映画も見てみようと思ったんですけど、最近はそこまで映画馬鹿じゃなくなったので、興味がないのはやめたのでした。

1992年に癌で亡くなった小説家、井上光晴さんの最期の3年くらいを追ったドキュメンタリー。

井上光晴ってどんな小説書いていたっけ? それとも詩人だっけ?とか言ってる時点でこの映画を見るにあたっての基礎知識が決定的に欠けてるような気もしましたが、唯一、「TOMORROW 明日」という映画の原作だそうで、つながりはそこだけでした。この映画から連想できるように、長崎県出身の作家さんです。

映画は1989年から1992年に亡くなるまでの三年間ですが、あいだに井上さんに関わった人びと(前半は圧倒的に女性が多かった)へのインタビューも挟み、文学について、小説について語る作家を映します。さらに中盤から少年時代の思い出って感じでイメージ映像が挟まり、ところが、これが虚構だというのが親戚や同級生によって明らかにされていくのです。なんていうの、「井上光晴」という小説家を演じたとでも言いましょうか。自伝に書かれた年譜がことごとく事実と異なる。でも、当人はその年譜とか自分の体験と称して講演してるんだけど、関係者に確認すると全然違うと言う。そこら辺がタイトルの「全身小説家」なのかな〜と思いました。

ただ、中盤のイメージ映像で久々に舟を漕ぎかけて、ちょっとやばかったです。井上氏を賛美する人びとのインタビューとかイメージ映像が散漫な印象でした。イメージなんてなくても問題なくて、やたらに長いなぁと思いました。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

拍手[0回]

禁じられた遊び

監督・脚本:ルネ=クレマン
音楽:ナルシソ=イエペス
出演:ミシェル(ジョルジュ・プージュリー)、ポーレット(ブリジット・フォッセー)、ほか
1952年、フランス

フランスの名匠ルネ=クレマン監督の反戦映画。「反戦」なんて言葉は一つも言われていないけれど、ポーレットの置かれた状況を鑑みるにこれは明確に「反戦」を謳っていると思います。

音楽がギターの名手ナルシソ=イエペスさんであるのは有名ですが、たきがは、この方のコンサート、行ったことがあります。クラシックでいちばん好きなアランフェス協奏曲をやるってんで、しかもギターがナルシソ=イエペスさんだ! 絶対に行く〜!と張り切ったのはいいのですが、見事に沈没 zzzz  (´・ω・`)ショボーン
以後、クラシック・コンサートは決して行かないという戒めになってしまいました。CDとか聞いていたって眠くなるんだから、コンサートで寝ないはずがなかったという…  (´・ω・`)ショボーン

久しぶりに見直したら、意外とミシェルとポーレット以外の話もあって、馬に蹴られて死んでしまう長兄のジョルジュとか、犬猿の仲である隣家の息子と乳繰る(←もう少し言い方があろうかと小一時間…)長姉のベルトとかにスポットが当たってたよ。
ただ、タイトルの「禁じられた遊び」がミシェルとポーレットのお墓作りであるのは有名ですが、そのために十字架を村の墓場から盗んだミシェルが、ポーレットが警察に引き取られ、孤児院に送られる段になって、「十字架の場所を教えれば連れていかせないと約束して」って言ったのに、父親があっさりとこの約束を違えるのは、大人ってずるい、な子ども目線の映画でもありました。

勉強は嫌々やってるみたいだけど、けっこう頭のいいミシェル少年の行く末が心配な結末です。そして、駅の雑踏にミシェルとママと呼びながら駆けだしていったポーレットは、きっと、この時代のフランスばかりでなく、戦争をしていたあらゆる国に無数にいたのだろうなぁと思いました。そして、作中では哀調を帯びたテーマ曲を使っているこの映画ですが、ラストにおいてのみ音楽なしで、雑踏に紛れるポーレットを映して「Fin」とは、フランス映画らしい幕切れだなぁとも思ったり。

ポーレットを演じたブリジット=フォッセーさんは「さらば、友よ」にも出ていたってね。驚いたよ。ポーレットって、確かに垢抜けた感じのお嬢ちゃんだったし。

結局、「その男ゾルバ」はなかったので、ヨーロッパ映画つながりで「禁じられた遊び」を発掘。ハリウッド映画って、たきがはは基本、1960年代までが黄金時代だと思ってるので、見たいのもたいていはそこら辺なんですけど、たまにこの派手さに辟易して、堅実なヨーロッパ映画が見たくなるのでした。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

拍手[0回]

カレンダー

01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28

最新CM

(06/14)
無題(返信済)
(05/29)
(04/27)
甘くない態度(返信済)
(04/26)
謹賀新年(返信済)
(01/04)

プロフィール

HN:
たきがは
HP:
性別:
女性

バーコード

ブログ内検索

かうんたあ

脱原発意思表示Webステッカー

バタリーケージの卵を食べたくない!キャンペーン