監督:ロバート=ワイズ、ジェローム=ロビンス
出演:マリア(ナタリー=ウッド)、トニー(リチャード=ベイマー)、リフ(ラス=タンブリン)、アニタ(リタ=モレノ)、ベルナルド(ジョージ=チャキリス)、ドク(ネッド=グラス)、アイス(タッカー=スミス)、チノ(ホセ=デ・ヴェガ)、シュランク警部補(サイモン=オークランド)、クラプキ巡査(ウィリアム=ブラムリー)、ほか
音楽:レナード=バーンスタイン(作曲)、スティーブン=ソンドハイム(作詞)
見たところ:シネマパレット
アメリカ、1961年
というわけで立て続けに期待外れの映画を見たもんで、否が応でも盛り上がる「ウェスト・サイド物語」であります。相変わらずミュージカル映画の最高峰という評価は動かず、むしろ悲劇的な結末に向かうトニー、リフ、ベルナルドたちを思って今回は涙が止まりませんでした。
特にトニーのナンバー、「Something's Coming」「Somewhere」と、いつか、どこか、何かいいことを待ちながら、たった2日間で殺されたトニーの運命を思ってよく泣けました。そうなんです。この話、原案たる「ロミオとジュリエット」より短くて、たった2日足らずの話なんですよ。3日目の夜明け前にトニーが殺されて終わる。たったそれだけのあいだに愛する人に巡り会えたマリアとトニーの物語であり、社会的にはみ出させられたジェット団とシャーク団という不良少年たちの話であり、アメリカという国の暗部を描き出したところもある物語なんだと思いました。
そういや、多少の台詞はあるものの、大人たちはドク、シュランク警部補、クラプキ巡査、マダム・ルシア(マリアが勤める洋服店の店主)しか登場しなくて、これもまたおもしろい構成だなと思いました。まぁ、クレジットで名前がトップに上がるマリアを除くと、ジェット団とシャーク団の面々はほぼ成人してるんでしょうけど、それでも彼らはろくに働いているようには見えない。むしろマダム・ルシアの店で働くアニタたちの方がよほどしっかりしているように見える。そんなワルガキたちを見守る、注視する大人の存在がドク、シュランク警部補、クラプキ巡査だけなのは、ますます彼ら自身の疎外感を助長するように思えます。
あと、ちょっとましな大人かと思ってた警察官二人は、やっぱり台詞廻しとかがクソでした。そうなると、ますますワルガキたちを案じるのはドクのみということになり、またそれも絶望的な図だなぁと。
それでも最後、トニーさえも失い、ようやく目を覚ましたジェット団とシャーク団の生き残りたちは、協力してトニーの遺体を運んでいきます。ロミオとジュリエットを失うことで、ようやく和解したキャピュレット家とモンタギュー家のように。マリアという新しいリーダーを得た彼らが、本当の敵の存在に気づいてほしい。そんなことを思わせるエンディングでした。
しばらく映画館で見られることはなさそうなので、思う存分、堪能してきました。
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