和田久太郎著。幻燈社刊。秋山清解説。鈴木清順による「物語村木源次郎」も収録。
「
テロル」で消化不良だったうちのアナキスト、和田久太郎氏の書簡集を集めた1冊です。もっとも時期が福田雅太郎暗殺未遂で収監されてからなので時期が限定されますし、検閲がかかるので内容が思想的なものは難しいのですが、「労働運動」などで書いた文章は残っているのかどうかも怪しいので人間、和田久太郎を知るにはまぁいいんじゃないかと思います。いろいろと不満は多いですが…
ちなみにたきがはのイメージしている和田久氏はこんな感じ。
「黒旗水滸伝(竹中労著。かわぐちかいじ画)」より引用。
実際の内容も多分にオブラートがかかっているとはいえ、このイメージを裏切らない感じでした。特に虐殺された大杉栄氏の遺児・魔子を案ずるところや、「後事頼み置く事ども」で名前の挙ってる望月桂氏の娘さん、公ちゃんに書いた手紙やら童謡やらはアナキスト、和田久太郎のイメージを払拭するかわいらしさだったりしました。
もっとも、それはあくまでも和田久氏の一面に過ぎないこともわかってるのです。ただ、さんざん書簡のなかで「簡単には死なない」と言っていた和田久氏が、秋田刑務所に移されて3年目、「もろもろの悩みも消ゆる雪の風」という辞世の句を残して縊死したのが残念だと思うだけで。
もしかしたら、文中で何度も「革命は近い」と言っていたのが官憲の弾圧により、むしろ時代的には遠ざかっていくのがわかっていたのかもしれません。そう容易に死を選ぶような人ではないだろうと思いますが。
「
ある弁護士の生涯」で紹介されていたように布施辰治弁護士の名前も何回も登場しました。けっこう信頼されてる感じがうかがえると同時に、裁判にしても警察同様にしょせんは権力を守るための組織に過ぎないという和田久氏の洞察は深く頷くところがありました。
あとは常々、わしが批判している正力松太郎(特高出身)がここにも顔を出していたので、悪辣な奴だなぁという思いを新たにしたのと、そんな奴を社長にした読売新聞のゴミさ加減を再認識しました。
クロポトキンに再三、言及してるので、そろそろ読まないと駄目かなぁと思ったりします。
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