ツヴェタン=トドロフ著。宇京頼三訳。法政大学出版局刊。叢書・ウニベルシタス382。
サブタイトルが「強制収容所考」です。例によってホロコースト関連で手にしたんですが、さにあらず、サブタイトルの強制収容所には全体主義のみならず、共産主義が含まれており、読み通した限りではホロコーストにかこつけた全体主義と共産主義批判の内容でした。一緒くたにしてる時点で、見事に欧米の意図にはまっちゃってるのが丸わかりになるくらいには最近はいろいろと見えてきたんで、そういう点では日本人向けの著作なんだなぁと思います。
つまり、いろいろとあちこち囓り散らかしてわかってきたんですけど、ホロコースト関係者(生存者でも研究者でも)というのは全体主義国家という認識はナチスの次はソ連・中国なんですな。アジアへの視点はそっくり抜け落ちてて大日本帝国という推しも押されぬ全体主義国家と、その後継である日本はまるっきり視界に入ってこないんですわ。どっちかというと日本は原爆の被害者みたいな視点しかない。なので、加害者としての日本を見ていない、というのが一般的なんじゃないかと思います、最近。こういう視界はとかく被害者ぶりたがる日本人には凄まじく居心地がいいんでしょうね。だからホロコースト関係の訳書って日本じゃすごく多いんじゃないかなと。だってナチスと地続きで日本って責められないもんね。
というのが最近の、ことホロコースト関連読んだ時の、わしの感想です。
著者がブルガリア出身でちょうどスターリニズムが東欧諸国を吹き荒れた時期にあたるもんでソ連憎しというよりスターリン憎しなんでしょうな。いろいろとホロコーストの生存者の著作から引っ張ってきて、いろいろ理屈をこねてみたけれど、結論はそこだろうと。
いくつか拾い物もあったのでメモ。
コルベ神父(アウシュヴィッツで別の囚人に替わって餓死させられたことで聖人とされたことで有名)が戦前、熱烈な反ユダヤ主義者だった。へぇぇぇ。
ヒトラーが日本の天皇制をうらやんでいたことはお抱えの建築家シュペーヤーの著作で知れる。「我々がよき宗教を持たないのは不運だ。なぜ我々には、祖国への献身を至高の善とする日本人の宗教がないのか?」21世紀にもなって、そんなものをますますありがたがる日本人の愚かさよ。
2020年もよろしくお願いします。
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