監督:エヴァ=ウッソン
出演:バハール(ゴルシフテ=ファラハニ)、マチルド(エマニュエル=ベルコ)、ほか
見たところ:桜坂劇場
フランス・ベルギー・ジョージア・スイス、2018年
クルド人の女性が銃を取ってISと戦うというネタだったので興味を覚えて行ってきましたが、正直、凡作の感がぬぐえません。
「女に殺されると天国へ行けない」、そう信じられるイスラムの戦闘員たちのなかに、かつてISの奴隷にされ、逃げ出してきた女性たちだけの部隊を率いるバハールというクルド人の隊長がいた。彼女は夫と息子を持ち、若い頃はフランスにも留学した経験のある弁護士だったが、ISの襲撃を受けたために夫を殺され、息子を奪われ、自身も奴隷とされながら逃げ出した過去があった。クルド人たちの戦いを取材しに来た戦場ジャーナリストのフランス人マチルドは、最初は頑なだったバハールと同じ生活を続け、その話を聞くことで親しくなっていく。マチルドが最前線に現れて3日目、バハールは息子がISの戦闘員養成学校にいるという情報を得、その司令部を襲撃する計画を立てる…。
話に膨らみを持たせたかったんでしょうけど、マチルドの事情が蛇足な感じがしました。夫もジャーナリストでリビアで戦死したとか、シリアでの取材で政府軍の砲撃を受けて片目を失明したとか、フランスに娘がいるとか、なくても良かったんじゃないかなぁと思います。
と言うのも、あんまりそれが生きているとは言いがたいからです。主題はクルド人の女性たちが被害者であるよりも戦う方を選んだことにあるはずで、そこに西洋人の価値観が入る余地はないと思うのです。と思ったら、製作した国が見事に西側ばっかりで、道理でマチルドが片目を失った理由に無関係なシリアを持ってきたわけだよ、と思って序盤でどっちらけになっちゃったんで、マチルドの話は正直、邪魔でした。盛り込みすぎっていう。
それよりも何か十把一絡げな扱いのバハールの部隊の女性戦士たちをもうちょっと掘り下げてくれれば良かったのになぁと思いました。バハールが部隊の部下たちを「あなたたちは私の誇り」とか言うんだけど、そういうのをもっと演出してほしかったなぁと思いました。言葉だけではなぁ。
あと、「
女に殺されると天国へ行けない」というのがこの映画のキャッチコピーっぽいんですけど、そのわりには恐れられてるようにも見えなかったんですけど、これは前面に立ててないんですかね。
それと、最初にこのコピーを読んだ時に、わしは例によって女性に肩入れするもんですから、
壊すしか能のない男が生み育てる女に殺されることの罪深さを思い知ったかと思いましたけど、全然関係ありませんでした(爆
個人的にはISに洗脳された息子とバハールが対面して…というクライマックスを予想していたんで、ハッピーエンドは予想してませんで、もうちょっと辛口なのが良かったんじゃないかなぁと思いましたけど、まぁ、そこはどっちでもいい気もしますが感動物に仕立てるには演出不足かと。むしろ、それまでに戦死したバハールの部下の女性たちの死に方の唐突さがぬぐえず、凡作と評する所以です。
たんぽこ通信 映画五十音リスト2019.4.30追記
映画の全体2/3を占めるのがバハール関連のエピソードであるにも関わらず、最初と最後をマチルドで締めるという描き方はマチルドの物語であるように思わせます。そういう意味ではタイトルの「バハールの涙」は相応しくないのではないかという気がしましたが、原題が「Girls of the Sun(をフランス語で)」なので、そのGirlsには間違いなくマチルドも含まれていることを考えると、むしろ主役はマチルドじゃないかなと思いました。
ただ、その手の戦地に行って取材するジャーナリストすげぇな西側映画は手垢がついてると思うので、それなら最初からこの映画、見に行かなかったんだけどなぁと思います。
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