監督:チェ=グクヒ
出演:ハン=シヒョン(キム=ヘス)、ユン=ジョンハク(ユ=アイン)、ハン=ガプス(ホ=ジュノ)、パク=デヨン(チョ=ウジン)、IMF専務理事(バンサン=カッセル)、ほか
見たところ:桜坂劇場
韓国、2018年
1997年に韓国で実際に起きた通貨危機を元にした社会派ドラマです。
誰もが韓国経済の急成長が、このまま続くと信じて疑わなかった1997年、それは突然、起きたように見えた。早くからこのことを予測していた韓国銀行の通貨政策チーム長ハン=シヒョン、元大手金融コンサルタントのユン=ジョンハク以外には。あと7日で国家が破産する、政府は慌てて対策チームを結成するが、国民に報せるべきと主張するシヒョンと、ハーバード出身の財務局次官パク=デヨンの主張は対立する。また切り札としてIMFからの融資を取りつけようとするデヨンに対し、シヒョンは日本やアメリカから融資を受けるべきと主張するが、大手企業を守ろうとする国家の方針は中小企業や一般民衆を苦しめるものだった。一方、経済状況に疎く、町工場を経営するハン=ガプスは大手の百貨店から取引手形で大口の注文を受けるが、それは転落の始まりであった。ユン=ジョンハクは、わずかな顧客とともにこの危機を、先手を打って乗り越えようとしていた…。
わしは経済のことにはまったく詳しくないのですが、そうも言ってられない状況なんじゃないかと思って見てました。IMFの融資を受けることになった韓国でしたが、シヒョンが見抜いたとおり、その背後にはアメリカの思惑が働いており、韓国経済に深くアメリカが食い込んできたからです。逆に、この危機に素早く動くことでジョンハクみたいに濡れ手に粟で大もうけしようとする人間もいるわけですが、そういうのはやっぱり経済のこととか詳しくないと無理だよなぁ…
と思うくらい、今の日本の状況も1997年の韓国の状況によく似ているというより、さらにまずいことになっており、またアメリカの狗という立場ではよく似た日本と韓国ですが、それもこれも国家を牛耳る官僚がアメリカの大学出身で、その価値観をたたき込まれており、どっち向いてんだよな方向性が、嫌になるくらいそっくりでした。
まぁ、この国の行き着く先は世界中の原発から出された放射性廃棄物の捨て場所というのがフクイチ以来のわしの持論で、それだけでは飽き足らず、この国を我が物顔に牛耳ってる官僚も政治屋も、アメリカに全部、それこそ、人的物的資源を全て売り渡さなければ気が済まないんだろうなぁと思ってるので、そっくりな韓国も似たような状況なのは不思議でも何でもないなぁと思いました。
シヒョンは、脚本家や監督が「あの当時、いて欲しかった人物」と語るように、庶民の味方、みたいなポジションで描かれまして、ラスト、再び危機が訪れた時も「二度も負けるわけにはいかない」って独白するのがいい感じでした。ただ
「グッバイシングル」の主役のキム=ヘスさんだったとは最後まで気づきませんでしたが…
ただ、そんなシヒョンが、辞表を提出して、IMFとの協議を暴露して帰ろうとした時、それまで全然接点のなかった町工場のガプス社長が現れ、実はお兄さんだったと知らされ、兄のたっての頼みをどうやら、その後の展開で聞けなかったらしいの(お兄ちゃんが「融資してくれる銀行を紹介してくれ」と言ってたのに、車で一人泣きじゃくるシヒョンという構図は、断ったとしか思えないため)は、彼女にも彼女なりの事情があったのに、せっかく頼ってきた兄を助けてやることもできない自分の無力さを嘆いていて、でも最後ではやり手の社長になっていたのがなかなか良かったです。
そのお兄ちゃん役がホ=ジュノさんでして、どうも「
シルミド」「
火山高」のイメージで覚えていたはずなのに「
達磨よ、遊ぼう!」に出ていなかったのは、顔を間違えていたからだったと今日、わかりました。うーむ、どこで間違ったのだ…
いい人だったんだけど、どう考えても不渡りになった手形(大手デパートからの)を借金の代わりに渡したために、相手のチョン社長を自殺に追い込んだ節があり(前後のシーンからの推測ですが)、20年後には息子に「誰も信じるな。人は裏切ると思え」と言ってるのは、決して妹に裏切られたからだけではなかったんじゃないかと思いました。町工場は復活(途中で差し押さえとか貼られていたため)したけど、イスラム系っぽい外国人の労働者を使ってて、韓国にもまさか技能実習生制度なんてあるんだろうかと別の意味で心配になりました。
自殺者が42%も増えたという国家的危機のなか、わずかな成功を自分の力でつかんだ勝ち組のジョンハクは、「
王の運命〜歴史を変えた八日間」の思悼(サド)王子でした。あの映画だとほとんどやつれたりしてたからなぁ…
そして、監督は「
Split(邦題は「パーフェクト・ボウル 運命を賭けたピン」)」がデビュー、こちらが二作目だそうですが、なかなかいい演出をするなぁとシヒョンとガプス、ガプスとチョン社長の葬式のシーンで感心させられました。語りすぎないのが上手いですね。
今年は桜坂劇場に行くのはこれが最後になりそうなんで、最後にいい映画を見ましたわい。
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