許筠著。野崎充彦訳注。平凡社東洋文庫刊。
朝鮮で有名な義賊の一人、洪吉童(ホン=ギルトン)の小説ですが、作者が刑死した許筠というのは諸説あるようで、はっきりした作者はわかってないみたいです。
宰相の次男として産まれながら、生みの母親が卑しい身分だったために、父を父と呼べず兄を兄と呼べぬ不遇を嘆いた洪吉童が出奔し、義賊となり、朝鮮の南に理想の王国を作るまでを描いた話。
だったんですが、両班(ヤンパン)が身分にうるさいのは知ってましたけど、生みの母の身分次第で子どもの扱いが変わるとか日本とはまた違った事情がいろいろと主人公を苦しめます。さらに加えて、武術を磨いても将軍になれず、科挙に受かっても宰相にもなれないとか、どんだけうるさいんだろうと思って驚きました。
ただ、才に長け、不思議な術まで使う洪吉童、野に降ればやることなすこと思いどおりなのはそれはそれで恵まれてるわけで、最後は一国の王とか栄華を極めます。
いくつか種本があるようで2種類訳されてましたけど、話の筋は基本、同じなので退屈でした。うーん、わし的にはあんまりときめかないもんで。
あと許筠がいろいろな仙人みたいな師匠のこととかを書いた「異人伝」も掲載してますが、仙人って朝鮮でも流行ったんですかね。
むしろ許筠が、反乱計画に加わったとか訴えられて、四肢をばらばらに切り刻んで処刑され、50歳で死んだという事実の方が、何でもできて、理想の嫁ももらって、やることなすことうまくいく洪吉童より、よほどドラマチックだと思いました。
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