監督・脚本:小林正樹
音楽:武満徹
ナレーター:佐藤慶
見たところ:桜坂劇場
日本、1983年
4Kデジタルリマスター版のためか、4時間オーバー(途中休憩を挟むので実質5時間)の映画ですが、けっこうな入りでした。
もっとも、その分、お値段も通常の2本半分(会員だと1000円で見られるため)とくそ高く、また東京裁判といったら、欧米主観の上、ヒロヒトを含む皇族を裁かず、おぽんちなのはわかっていたので見に行こうか直前まで迷っていたのですが、桜坂劇場の9月の予定が見たいのが見当たらず、マ=ドンソク主演の2本は予想に反して上腕筋映画だったので見る気が失せた上、上映時間も遅かったため、しばらく行かないなら、午前10時の映画祭も9月20日頃に開始だった「砂の器」まで予定がないので、2本半とお高くてもいいか〜と思って行ってきました。
もっとも、期待というか、予想どおりに裁判はおぽんちな上、映画も4時間半も必要なかったやろ!と言いたい、蛇足というか、余計な映像のオンパレードで、だいぶ退屈でしたが、予想に反して、あんまり眠くなりませんでした。うーむ、爆睡を予想していったのだが、意外… 映画としては、ずっと出来が上だと思ってた「
スペシャリスト〜自覚なき殺戮者」は必ず寝るんだが… (´・ω・`)
わしが突っ込みたいところは下記。
・タイトルに反して「東京裁判」に関係ないシーンが多い。まぁ、そこに至るまでの顛末を描こうと思えば、やむなしなシーンなのは否定しないのだが、それにしても長い。もうちょっと短くまとめてほしい。そのためのナレーターでは?
そのため、映画全体では第二次世界大戦史みたいな流れになっている。正直、ヨーロッパのパートはもうちょっと削ってほしい。入れるなら、それこそ東京裁判関連にしてほしいと思った。
特にニュルンベルク裁判で、さも世界が初めてホロコーストの実態を知ったような演出してるんだけど、エリ=ヴィーゼルの著作とか読めば、そんなことはなかったわけで、1983年なら、先日、わしが読んだ「
死者の歌」だって出てたはずで。入れるなら、表面じゃなく、もっと突っ込めよと思いました。
いちばん関係ないと思ったシーン。エリザベス王女の結婚。くっそどうでもええわ ( ゚д゚)、・終戦なのか、敗戦なのか、どっちかに統一しろ、と思いました。監督のスタンスとしては中立を守りたかったんでしょうか。糞ですね。
・音楽が武満徹というのは稚拙。まぁ、クレジットに「脚本」と書いちゃったんで、純然たるドキュメンタリーではないんですが、いかにもなシーンでいかにもな、しかも武満徹(わしが知ってる曲だと「死んだ男の残したものは」とか)の重たい音楽というのは演出しすぎです。800回以上の公判を4時間半の映画にまとめたわけですし、そこにいろいろ枝葉をくっつけたわけなので監督の主観に則って作られた映画なんですけど(なので「純然たるドキュメンタリー」とは言いがたい)、それにしても
感情を音楽で誘導するというのはなしでしょう。もっとクールな作風の人だと思ってたよ。
・
ヒロヒトの詔書を全文、字幕付きで垂れ流しやがった。その後も特に「平和主義者」を騙ったヒロヒトへの批判的な映像はなかったんで、監督のスタンスはそこなんでしょう。
チラシを見たら、今回のデジタルリマスター版に際して、全文を完全字幕化したんだそうで、そっちに文句言いたいですわ。
拾い物だと思ったのは、「日本無罪論」を唱えたとされるラダビノド=パル判事(インド代表の裁判官)の、とかく被告25人の無罪ばかりが持ち出され、さも彼が日本は無罪だと主張したように言われているのが、別にそんなことはなくて、やっぱりそこはインドの方ですね。欧米が過去になした植民地の犯罪を引き合いに出しただけで、被告25人を無罪にしたからといって日本に戦争責任がないとは言ってなかったことがわかったことでした。しかし遊就館に、パル判事の写真が飾ってあんのは例によって都合のいいところだけつまみ食いしてるからなんでしょうが。
あと冒頭で、25人に被告の謀議とか共謀とかが疑われてたのに、被告の一人、賀屋興宣が「そんなまっとうなものなんかなくて、なんかあれよあれよという間に戦争がどんどん拡大してって、負けちゃったんだよ」という認識が全員に共通したものであろうとのナレーションは、どいつもこいつも自分の責任なんか絶対に認めない、しかも責任者が誰かもわからない、責任者不在のニッポン特有の反応で、おつむのよろしい欧米人にゃあ、理解できねぇだろうなぁと爆笑もんでした。
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