監督:キム=ジウン
出演:イ=ジョンチュル(ソン=ガンホ)、キム=ウジン(コン=ユ)、ヒガシ警務局部長(鶴見辰吾)、ハシモト警部補(オム=テグ)、イ=ビョンホン、ほか
見たところ:Megabox東大門店
たきがはの大好き映画「
反則王」の監督と主演が再度タッグを組んだシリアスドラマです。
日本統治下のソウル。朝鮮人の義烈団による朝鮮総督府爆破事件計画を追う朝鮮人警察官イ=ジョンチュルと、義烈団のトップ、キム=ウジンの友情と裏切りを描く歴史アクションドラマ。
例によって字幕なしで見たんで筋がおおざっぱですが案外わかるものですね。まぁ、ヒガシのみならずハシモトやイ=ジョンチュルまで日本語しゃべってたからな。
ラッピングバスの広告のソン=ガンホ氏の格好良さに惹かれて行ってきました。しかしソン=ガンホ氏は三枚目も良い。むしろ好き(爆
写真は劇場に飾ってあった巨大広告。
筋は、わしが追いかけている日本統治下の朝鮮だったので、これも予想外のヒット。
中盤、痛々しい展開が続きますが、お勧めです。
イ=ビョンホン(「
JSA」ではソン=ガンホ演ずる共和国の大尉を兄貴と慕う青年兵士役。主人公)が偉くなって登場したんで驚いていたら、カメオ出演だそうです。
この映画を機に日本が朝鮮で何をしたのか調べる入口にするのもいいと思いますよ。
この話、後から思い返してみるといくつか突っ込みどころがあったので追記。
義烈団が10人近くでやり遂げられなかったことが、イ=ジョンチュル一人でできちゃうというのは元警察官という肩書きがあるにしてもちょっと上手くいきすぎかなぁと思いました。まぁ、そういうカタルシスは必要ですが。
ただ、ジョンチュルが、そもそも何で警察官(=日本のイヌ)になったのかというエピソードは描かれていなかったようなので、同族人というだけのシンパシーではなく、過去のワンシーンがフラッシュバックして、日本のイヌになったようなジョンチュルが、ウジンやヒロインの拷問で朝鮮人としての誇りを取り戻して総督府の爆破につながるようなエピソードとかがあっても良かったのではないかと思いました。単にわしがわからなかっただけかもしれませんが。ただ嫁までいるジョンチュルが警察官でありながら義烈団に加担して裁判を受けさせられ、それでも潜入捜査を理由に釈放されたんだろうと思ったので反日の活動家となったジョンチュルの嫁の立場も案じられたり。
作中ではハシモトが完全な親日で、対するジョンチュルは最後は総督府の爆破までするんだけど、そういう「実はいい人」だったというのはなくてもおもしろかったんじゃないかと思います。ソン=ガンホ氏のキャリア的には、そういう悪人は十分可能だと思ってるので。
ラスト、義烈団の生き残りとすれ違うジョンチュルのシーンは「
第三の男」のラストへのオマージュでしょうかね。あっちはヒロインと主役、こっちは男同士という違いはありますが。
英語字幕で見直す機会がありまして、わかっていなかったところがかなり理解できたのでストーリーの補足です。
冒頭のシーン、反日の活動家の幹部を追うジョンチュルは、そもそもは自身も朝鮮の独立を目指す革命家でした。ただ、いったんはその活動が挫折し、転向して日本の警察官になったジョンチュルと幹部は知り合い、かつての仲間同士だったわけです。そこら辺は一応、察しがついたんですが。ジョンチュルが彼を助けようとしていたのは伝わってきたので。
さらに、ジョンチュルは警部という自身の身分を明かして、別の幹部ウジンに接触します。けれどもウジンの上司、つまり、現在の革命家たちのリーダーがイ=ビョンホンですが、彼はジョンチュルがかつて革命家であったことを知っており、もう一度転向させるためにジョンチュルに接触するわけです。そのためにジョンチュルと酒を飲み交わし、夜釣りをしますが、ジョンチュルは彼には立場をつまびらかにしないまま、ソウル(この時代は京城)に戻る列車に乗ります。
その後、義烈団内部のスパイのためにウジンたちが危うくなり、助けを求められたジョンチュルはハシモトとその部下をも殺してしまいます。後で列車から飛び降りて、負傷してソウルに戻りますが、ヒガシにはその心中を見抜かれている感じで、ウジンたちの居場所を密告するよう促されます。
それと同時に、ソウルに戻ったウジンたち義烈団に協力するハンガリー人の爆弾製作者さんがなぜか連行されることになってしまい、初めて見た時はどうしてヒロインが彼を追いかけるのか不明だったんですが、実は嫁だったことがわかりまして、彼女の行動に納得がいくわけです。
ただ、彼女は元はウジンの恋人でもあったらしく、それもあってウジンがカムフラージュに経営する写真館でスナップを撮ってもらっちゃうんですが、これが日本の警察には顔もわからなかった彼女を白日のもとにさらすことになり、拷問でそのことを知らされたウジンは激しい後悔の念にかられて、舌を噛みますが、死に損ないます。
しかし、その後、しゃべるのを止めて(あるいは舌を噛んだのでしゃべれなくなって)刑務所(西大門)内で「沈黙の人(Silent Boyとか字幕にあった)」と呼ばれたウジンは、裁判の一ヶ月後にヒロインが死んだことを聞かされて、再度、嗚咽を漏らすのでした。
ウジンたちの居場所を密告したジョンチュルでしたが、自身も逃亡したために囚われ、ともに裁判を受けます。ただ、「自分はあくまでも大日本帝国の警官だ」と証言したジョンチュルはヒロインの死の直後に釈放され、自らも拷問した(ぼかしが入っていますが、顔に焼きごてを押す、ヒロインは拷問の真っ最中でぼろぼろ、ウジンも指を潰される拷問を受けるなど、いろいろとPG指定の多そうな話ではあります。特に終盤)ヒロインの死を知り、その無惨な死体をも見、ウジンから引き取った爆弾でもってソウル総督府を爆破するというクライマックスに至るのでした。
初見の時は、わしは、ここでジョンチュルが心変わりしたのかと思ってたんですが、どうもそうではなくて、ジョンチュルは最初からそのために「自分は大日本帝国の警官だ」と証言したようなのです。
しかも、爆破の時に初めてジョンチュルの真意に気づいたヒガシも爆死させているので(確か、映像的に爆発に巻き込まれていた)、そのまま、何食わぬ顔で革命家と警官という2つの顔を続けていく、その最後の決意が「第三の男」ばりのラストシーンに至ったのかもしれませんが、時間が足りなくて最後まで見られなかったので(裁判で終わっちゃった)、そこら辺は想像に過ぎません。
ただ、顔もろくに写されませんでしたが、嫁が囚われて拷問とかいう展開にはならなかったので、ジョンチュルが警部という立場を守れたのは、そういう事情があったようです。
タイトルの密偵というのは、メインのジョンチュルとウジンの交流におけるジョンチュルの立場を指したものだと思っていたんですが、ジョンチュルのこれからを考えると、「とある密偵の誕生」とでも言っていいようなタイトルでもあったのかなぁと思いました。
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