監督:黒澤明
出演:八木原幸枝(原節子)、野毛隆吉(藤田進)、八木原教授(大河内伝次郎)、八木原夫人(三好栄子)、野毛の母(杉村春子)、野毛の父(高堂国典)、糸川(河野秋武)、毒いちご(志村喬)、筥崎教授(清水将夫)、ほか
見たところ:うち
BDに撮っておいたのをやっと見たぜ〜! わしの好きな黒澤映画5本に入る1作(ほかは「
白痴」「
七人の侍」「生きる」「
赤ひげ」)です。なにしろ、我が永遠のヒロイン、日本映画史上、最高の美人・原節子さんを、これでもか〜!と汚した脚本があっぱれだ。藤田進さんの硬い表情も役柄生きてるし、久しぶりに見直したら、青臭さもあるんだけど、黒澤監督も5作目と若いので、言いたいことがストレートに出たんだなと思いました。
昭和8年、京都。法学部の八木原教授のもと、学生生活していた野毛や糸川、八木原の娘・幸枝たちであったが、八木原教授への弾圧により、学生運動に身を投じた野毛は、日本が戦争へ傾いていくなか、その戦争を食い止めるために戦うようになっていった。燃えるような生き方を求めて親元から独立した幸枝は、東京で再会した野毛の隠れた運動を知り、彼とともに生きたいと願う。しかし昭和16年、ついに野毛は捕らえられ、幸枝もその妻として留置され、そのあいだに日米開戦を知る。娘のために野毛の釈放を願う八木原教授だったが、野毛はすでに死亡しており、幸枝は野毛の遺骨を故郷へ届ける。しかし、野毛の両親はスパイの親として村中で孤立しており、絶望した父はいろりの前から動かず、母も夜、人目を盗んで農作業に従事していた。幸枝は野毛の家に残り、農作業を手伝うが、持ち前の負けん気の強さで日中でも働きに出、母とともに田んぼを起こす。ところがやっと田植えを終えたところで幸枝は倒れてしまい、母から田んぼがめちゃめちゃにされたことを聞く。幸枝は田んぼに行き、苗を植え直そうとし、ようやく父も立ち上がる。戦後、八木原教授は大学に戻るが、幸枝は野毛の故郷に居続け、農村の婦人たちを啓蒙する運動に携わるのだった。
相変わらず、あらすじを短くまとめるのが下手ですな。てへ
事件のモデルは「京大事件」と「ゾルゲ事件」だそうです。
戦争をやってはいけない(日中戦争はやっていたわけですけど)と、自己の信念に基づいて行動する野毛と、彼を愛する幸枝。その生活はわずか半年足らずのものでしたが、彼女は野毛の信念と、父の言葉に従い、野毛の故郷に行きます。野毛が見せてくれた両親のもとに、野毛の遺骨を届けるために。スパイの親と誹られる2人と暮らすために。
ここら辺の展開が台詞も少なに綴られるのが個人的には好きなのです。全体的に説明調の台詞少ないしな。新聞の記事でばば〜んと見せられるために、そんな必要もないけどな。
キャストを見ていたら、相変わらずの黒澤組の出演で嬉しい限り。常連さんで出ていないのは藤原釜足さんとか左卜全さんとかがいないくらいか? 「七人の侍」で村の長老(「腹減らした侍雇うだ」と言ったじさま)をやった高堂国典さんを見た時には「うっひゃ〜!」と歓声ものだったね。しかも、ほとんど座ってるお父ちゃんですからな。裏のテーマは「女は強し」だなと初見から言ってるんだけどね。志村喬さんもお若いわ〜 勘兵衛なんか枯れてますからなぁ。でもそこがいい!
あとはなんといっても原節子さんの美しさですよ。前半の無邪気なお嬢様のあたりが、この方の真骨頂なんでしょうけど、野毛に去られて糸川に「そこに跪いて謝ってちょうだい」と無理難題を突きつけつつ、実際にやられるとむっとする表情とか、見ててたまりません。演技ってね、見せるだけじゃなくて、こうして表情によってわからせるのがプロなんだよとか、もう、勉強してもらいたいよね。女王然として高貴さと残酷さ、野毛に見せる素直さ、後半の土と泥まみれになっても「およしなさい」と言う姿勢の美しさとか、不世出の女優さんだな〜
「虎の尾を踏む男たち」では、全然、何を言ってるんだか、半分も聞き取れなかった大河内伝次郎さんの台詞がちゃんと聞こえたのは、現代劇だったからなんだろうか…?(←失礼)
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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