山田芳裕著。講談社文庫刊。1〜4服、10服。
古田織部を主役にした時代劇。1577年、古田織部(改名前は佐介)が34歳の時から始まって、織田信長、羽柴(豊臣)秀吉と主君を替えながら仕え、数寄に凝っていく様がけっこうみっちりと描かれます。
茶の師匠が千宗易(後の利休)で、まるっきり「
黄金の日日」と同時代の展開ですが、あくまでも主役は武将なので庶民の登場は少ないです。今井宗久とかは出てるけど。
「黄金の日日」ではかなり潔癖な人物と描かれてた高山右近が、実は古田織部の義弟で、織部のような数寄者、それも南蛮かぶれの人物と描かれているのが興味深いところです。
あと「黒田官兵衛」に出てた荒木村重が名物(茶器とか焼き物のこと)にこだわった強欲なおっさんに描かれているのは、わりと似てるかもしれない。
しかし、いちばんの数寄者は、やっぱり数寄で天下を取ろうとする主人公、古田織部でして、その反応がいちいちおもしろく、頻繁に登場する物の本質を表すオノマトペがまた独特の表現で「はにゃあ(乳房)」とか「ズドギュッ(安土城)」とか「清水がペロンと形になったような(唐物茶碗)」とか愉快な表現のオンパレード。NHKでアニメになったそうですが、こういうの大河にすればいいのによ。ただ、信長、秀吉、家康はパターンが出尽くした感じもあるので戦国時代は飽き飽きなんですが。
残念ながら巻が途中で大きく飛んでまして、4服ではまだ秀吉が健在なのに、10服では関ヶ原前夜で、話の流れがちっともわからなかったです。織部も剃髪しちゃってるし。
織部の最後は家康の不興を買って切腹と、師匠・千利休みたいなことになってまして、興味深い人物がいたものだと思いました。
第5服、第7、8服が読めたので追記。
第5服では北条攻め。権勢を振るう利休と秀吉の仲にひびが入ってきた感じですが、切腹は第7服までお預け。この話の利休は、そもそも信長暗殺を明智光秀と秀吉にそそのかした張本人でかなり権力欲というか、名誉欲に囚われた感じの人なんですが、やっとその憑き物が落ちてきたけど、すでに秀吉の癪に障るところになりつつあるってところです。
第7服では利休の切腹が決まります。ここで秀吉の命をつけ狙った暗殺者がどうも五右衛門らしく、「黄金の日日」でも石川五右衛門は大泥棒じゃなかったので、どうもこの作者、「黄金の日日」をかなり参考にしてるっぽいのですが、どうなんでしょう? 利休の介錯に織部が命じられ、最初は断ろうとした織部でしたが、自身の器の浅さを秀吉に指摘され、また師(秀吉は信長を殺した張本人)殺し同士で仲良くしてくれとか言われて承諾します。
で、だい6服あたりから始まってそうですが、秀吉の朝鮮攻めがあり、朝鮮や明と和平を結ぼうと画策する小西行長とか織部とかが活躍しているのは「黄金の日日」と同じというか、史実がそうなっとるんじゃな…
ただ、この作者、細川幽斎を細川護煕そっくりに書いたり、加藤清正が元プロボクサーの具志堅用高そっくりだったりするのが、あんまりおもしろくなかったりします。
第8服では朝鮮との和睦が進みつつあるなか、織部が朝鮮に渡り、その窯や陶器を学んできます。しかし、その後、大阪に地震があり、聚楽第も消失、秀吉もいよいよ老いてきて、次巻では死にそうな感じです。
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