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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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百年の孤独

ガブリエル=ガルシア・マルケス著。鼓直訳。新潮社刊。

南米のとある国(国名は明かされず)の架空の村マコンドと、そこを建設したホセ・アルカディオ=ブエンディアから始まるブエンディア一族の始まりから終焉まで描く。

なんですけど、これでノーベル文学賞だかもらったらしいんですけど、翻訳のせいかもしれませんけど、内容は長大なあらすじでおもしろくありませんでした。マコンドで起こる数々の事件を、ほとんど地の文で説明しちゃうので、こんなんが小説だと認めたくないものだな…の心境です。
タイトルの「孤独」というのは、主人公といってもいいブエンディア一族の誰もが孤独で、それがマコンドで100年続いたってことらしいんですけど、残念ながらブエンディアの皆さん、どいつもこいつも一癖も二癖もある奴らばっかりで、あんまりお友だち以前に知り合いにもいてほしくないというか、そういう連中が「孤独」とか言っても一種、自業自得じゃね?の感もあり、誰にも共感できないで読んでいたのも辛かった理由です。まぁ、敢えて出すなら、創始者の嫁で150歳くらいまで長生きしたウルスラがいちばん共感できたかもしれませんが、それも消去法で選んだら最後に残ったぐらいのレベルです。
そもそも初っぱなのホセ・アルカディオの奇矯も自分勝手過ぎて嫌いでした。

名前が男はアルカディオかアウレリャノ、女がアマランタかウルスラでこんがらがりそうな話でしたが、実際にそういう感想も見ましたが、書き分けはできてたので、わしは混乱しませんでした。まぁ、ウルスラがいみじくも言ったとおり、「同じようなことが繰り返されている」小説なんで、どのアルカディオか、そんなに特定しなくてもどうせ一緒じゃね?という感想もなくもありませんが、そこは一応、本読みとしては読み分けました。うん、たぶん、混乱はしなかったと思います。

先日の「オイディプス王」以来、ふだん、読まないようなジャンルの本ばかり読んでいるのは(永山氏の著作を除く)辺見庸氏の「永遠の不服従のために」と「瓦礫の中から言葉を」でいろいろな本の引用があったので参考に読んでみているからです。まぁ、つくづく、自分はいろんなものを見落としているなぁと思います。ただ、個人的に趣味が合わないので、そろそろやめようとは思ってますので、たぶん、これが最後です。

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捨て子ごっこ

永山則夫著。河出書房新社刊。

未成年のうちに4人の強盗殺人を犯し、死刑にされてしまった永山則夫氏の著作です。実はちゃんと読んだことがなかったので手に取ってみまして、「第7回死刑映画週間」を見に行くのに電車の中と昼飯とカフェで読んでました。

表題作のほかに「破流(はる)」を収録してます。

時間的には「捨て子ごっこ」→「破流」なんですけど、どっちも著者の実体験に基づく話のようで、読んでてしんどかったです。
「捨て子ごっこ」が未就学児、「破流」は中学生です。
精神的にも物理的にも追い詰められていくというか、作中で「N」で表された永山氏だけではなく、姉や母親、兄たちと同じ立場に立たされたら、自分もどうなっているのかわからないです。それぐらい辛いです。永山則夫氏の犯した犯罪を肯定するものではありませんが、彼を絞首刑で殺してしまうことは、やっぱりしてほしくなかったと思いました。

同じ立場に置かれた人びとが同じような犯罪を犯すわけではない、という言い方はずっと恵まれた立場にいる者が言ってはいけないと思います。

いい機会なのでいろいろと読んでみようと思いました。

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弁護人

監督:ヤン=ウソク
出演:ソン=ウソク(ソン=ガンホ)、パク=ジヌ(イム=シワン)、チェ=スネ(キム=ヨンエ)、ドンホ事務局長(オ=ダルス)、チャ警監(クァク=ドウォン)、キム弁護士(チャン=ウォンジュン)、ユン中尉(シム=ヒソプ)、ウソクの妻(イ=ハンナ)、カン検事(チョ=ミンギ)、パク弁護士(チャ=グァンス)、ほか
見たところ:渋谷ユーロスペース
韓国、2013年

高卒で裁判官になったソン=ウソクは実入りの少ない今の職に見切りをつけて弁護士に転職した上、不動産登記に目をつけ、相手かまわずに名刺を配りまくったおかげで、たちまち売れっ子になる。パク=ドンホを事務局長として雇ったウソクは、恥知らずと陰口をたたいた同業者たちが不動産登記を始めたのを知ると今度は税金専門に鞍替えしたが、その裏には家族を養うために苦労してきた事情があった。しかし、1981年、ウソクの馴染みのクッパ屋の息子ジヌが行方不明になったと知らされ、しかもジヌがアカの疑いをかけられたことを知り、ウソクは大企業ヘドン建設との取引を振ってでもジヌの弁護に奔走する。後に釜林(プリム)事件として知られるようになった読書会事件である。舌鋒鋭くジヌたち9人の学生の無罪を勝ち取ろうとするウソクだったが、1978年の朴大統領の暗殺後、1980年の光州事件を経て、反動化の波が韓国を覆いつつあるなか、警察上層部の仕掛けた国家保安法違反の捏造事件はジヌたちに2年の刑期を与えて幕を下ろす。しかし、この事件を機に人権派の弁護士に転身したウソクは法の専門家として民主化運動の先頭に立つのだった。

というわけで行ってきました「第7回死刑映画週間」。今回の目玉は何といってもソン=ガンホ氏主演の「弁護人」であります。故・盧武鉉(ノ=ムヒョン)大統領が弁護士だった時代をモデルにしたという本作、3枚目なソン=ガンホと2枚目なソン=ガンホを堪能できる傑作でありました。
前半、金儲けに奔走するソン=ウソクが3枚目で後半、ジヌたち9人の学生を助けるために熱弁を奮い、商業高校卒の学歴なんぞ何のその、猛勉強の果てに取得した弁護士バッジが黙っちゃいねぇぜな2枚目です。

ここにたきがはもはまった(韓国でいちばん美味かった料理!)豚クッパ屋の主人スネさんと母一人子一人の息子のジヌとのふれあいが涙をそそり、しかもそれが前半と後半で盛り込まれているもんですから、ここに警察による拷問とかが絡んで盛り上がりも最高潮なわけです。
で、敵側だったユン中尉の証言でジヌたちの無罪を勝ち取ったと思う間もなく、ユン中尉は無断で休暇中の、いわば脱走兵の扱いだったことが明かされて結局、ジヌたちは2年の懲役を喰らうのでした。実際、この釜林事件はもっと長くかかっており、2014年にようやく全ての被告たちの名誉が回復されたという韓国史の暗部でもあります。

しかし映画はここで終わりではなく、ジヌも釈放された後の、たぶん9人のうちの一人が亡くなった追悼集会を主催したウソクが扇動罪みたいな罪で捕まり、裁判になるものの、弁護してくれるのはもともと人権派でならすキム先輩で、さらに釜山の弁護士142人のうち99人が弁護に立ち、その名を裁判長が一人ずつ呼ぶところで幕を閉じてまして、被告席に座らされたウソクが微笑むところで終わりとなってます。かつて金儲けにあくせくしてみんなの鼻つまみ者だったウソクが、いざ有罪となったらみんなが弁護してくれる奴になったという、いってみればウソクの成長物語でもあるわけです。
そこにクッパ屋のスネ母さんとジヌとの絡みが加わるものですから前半から泣かせてくれます。高卒だったウソクは工事現場で働いていました。でも一度、司法試験を諦めて参考書とかを売り払ったのです。その時に偶然入ったクッパ屋で出会ったジヌ少年の勉強する真っ直ぐな眼差しがウソクに勉強することを諦めさせなかった。クッパ屋の代金はおかげで踏み倒しましたが(食い逃げ!)本を買い戻したウソクは改めて本の小口に書いた「絶対に諦めるな!」という文句を見直し、見事、司法試験に合格するのでした。もっともウソクがクッパ屋を再度訪れたのは自分が建てて壁に「絶対に諦めるな!」と刻んだアパート(日本でいうところのマンション)の10階の一室を無理に買ってからのことでした。ここら辺のエピソードの入れ方もぬかりないです。パイナップルを手土産に500万ウォンも上積みしてマンションを買い、すかさず次のシーンでは壁に刻んだメッセージを家族にも読ませる展開が上手いなと思いました。そして、その後、弁護士事務所を開いてから欠かさず通うことになるクッパ屋、スネさんの店を7年ぶりに訪れたウソクはやっと7年前の食い逃げを謝罪することができ、家族ぐるみの付き合いをするようになるのです。ここが前半のクライマックスで、泣いたね、わしゃ。実際にわしは韓国に行った時に韓国のおばちゃんたちの情の厚さに触れています。その実感もあって、スネさんがウソクを抱きしめるシーンはすごく良かったですね。
そのスネさんとジヌが後半でアカの疑いをかけられる、ウソクが奮闘する、その流れがいいのです。特に初っぱな、スネさんが1ヶ月も行方不明になっていたジヌを探して、とうとうウソクに助けを求め(その前にクッパ屋でウソクが友だちと喧嘩して入店禁止を喰らっているので)、警察に行ってようやくジヌを見つけた時、心優しいジヌ(その前のシーンで女子学生たちに朗読してあげてからかわれるところあり)が別人のようにやつれ、怯えているところを見させられたら、スネさんじゃなくても母性本能を刺激されちゃいますよ。しかも、ところどころにジヌが受けた拷問シーンが挿入されます。ここの体当たりの演技と特高を彷彿とさせるチャ警監たちの悪辣ぶりもジヌへの同情を大きくかき立てるわけです。

いや、ほんとに上手いわ、この監督。

作中、国家の手先として悪役を演じるチャ警監の父親が特高だったとカン検事に打ち明けるシーンとか、ジヌたちが被告として着せられたのが「密偵」でウジンやゲスン、ジョンチュルたちも着せられていたのと同じ青(ウソクは白)とか、植民地時代を彷彿とさせた演出もあって、韓国の暗部に色濃く陰を落としているのはほかならぬ日本だという暗示も良かったです。まぁ、これはわしの深読みかもしれませんが。

映画初出演のジヌ役のイム=シワンくんも可愛かったし、オ=ダルスさんは安定の相棒っぷりだし、脇役まで手堅いのが韓国映画のいいところだなぁと思いました。

チャ警監は「母なる証明」や「ベルリンファイル」、「アシュラ」、「哀しき獣」にも出てたそうなんですが、うーん… 調べてみたんですけど「母なる証明」はちょい役だったみたいで役がわかりませんでした。「ベルリンファイル」はハン=ソッキュを叱った大統領府の調査官でこれまたちょい役っぽいです。「アシュラ」は英語版で見たから、見た顔だとは思ったんですが、ちゃんと筋を理解してないくさいので見直したいところです。調べたら主人公の弱みを握った検事役でした。「哀しき獣」は大学教授だったそうなんですが… あ、主人公が殺すよう依頼されたターゲットなのに別の人に殺されちゃった役か!

「脱走兵の戯れ言」とか言われたユン中尉は行く末が心配です。せっかく勇気を出して告発したのに。でも、もうちょっと早く言えば良かったのにという気がしなくもないですが、言わなかったよりはましでしょう。

ウソクの先輩弁護士のキムさんは最後はウソクの弁護を担当します。まぁ、ほかに98人もいるのでその筆頭。もともと人権派の弁護士で、「おまえとは理想も目指すところも違う」とウソクに言っちゃうところもありましたが、一回はウソクに釜林事件の弁護を依頼しようとしてました。ただ、この時はジヌが関係していることを知らないウソクは「自分には荷が重すぎる」と言って断り、弁護士を辞めてヨットの選手としてオリンピックに出たいなんて野望を語っちゃってますが、結局、これは潰えたわけですな。まぁ、この時のウソクは無邪気に国家を信奉してますんで、新聞記者になった同級生とも喧嘩することになっちゃうんですけど。でスネさんに塩をまかれるんですけど。

一本で二度美味しい上に細部まで手堅い、ソン=ガンホの新たな代表作にもなりそうな傑作でした。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

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追悼 大杉漣さん

当ブログでも出演作を何本か記事にさせてもらってた俳優の大杉漣さんが急性心不全のために亡くなったそうでご冥福をお祈りします。

調べてみたら「休暇」「一枚のハガキ」「たそがれ清兵衛」「シン・ゴジラ」の四作でしたがレビューを書いていないのを含めるともっとありそうです。日本映画では「またか」と言われるぐらいの常連俳優さんだったと思いまして、いい役から悪役からわりと何でも多彩にこなされる名バイプレイヤーだったと思ってました。

「休暇」の主任さんはよく覚えていないんですが(所長かと思ったら主任の方だったんで)「一枚のハガキ」の友子に横恋慕してる村の世話役みたいな、ちょっと口うるさいけど話に膨らみを持たせる大事な脇役という役どころが多かったと記憶しています。

あんまり気を入れて見ていませんが、昨年の草薙剛主演のテレビドラマでも孤児院の院長という役どころもそんな感じでした。もうちょっと裏がありましたが。

66歳とまだこれからのお歳でしたが、わしはこれからの日本では標準的な寿命になっていくんじゃないかと思ってるんで、その先駆け的な感じで記憶していくと思います。

数々の名演・怪演をありがとうございました。

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コロノスのオイディプス

ソポクレス著。高津春繁訳。岩波文庫刊。

オイディプス王」の続編です。

「オイディプス王」の最後で我が目をつぶしたオイディプスが放浪の果てにアテナイ(アテネ)にたどり着き、テセウス王に庇護を求めて叶えられ、アテナイに永遠の祝福と繁栄を約束して黄泉の国に旅立つまでを描きます。

テーバイの支配者を巡ってオイディプスの息子たちが争う「テーバイ攻めの七将」、オイディプスの娘「アンティゴネ」などの話もあるようですが、ギリシア悲劇は哲学的なんでもういいかなというのが印象。

あと「オイディプス王」では前王ライオス殺しとかオイディプスの暗殺とかを疑われたクレオン(オイディプスの妻イオカステの弟)が、なぜかこちらでは一転して悪役っぽく描かれているのはなぜなのか不明です。

またオイディプスが実の母を妻としてしまい、エディプスコンプレックスの語源となった件は二人の年齢差を考えたら無理がないかと思ったんですけど、なぜここで突っ込んでいるのかは不明…

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