永井豪著。中央公論社刊。
スケールの壮大なSF時代劇。この頃の永井豪って脂が乗り切ってて、描く話がどれもおもしろい。この話も日本の戦国時代が舞台になっているものの、23世紀の未来世界や、2万年前の石器時代、さらには宇宙にまで拡がっていくスケールの大きさは読んでいてわくわくする。
戦国時代の伊賀。若いながら、優れた腕前を持つ忍者、天王獅子丸は、斎藤道三の命を狙い、銅磨陣内と名乗る不死身の浪人と出会う。やっとのことで銅磨陣内を倒した獅子丸だったが、戻った伊賀の里は何者かに襲われ、壊滅していた。一方、百地三太夫からの連絡が途絶えたことを知った23世紀の時間局は3人のタイムパトロール員を送り込むが、彼らもまた、地球を巡る百魔と黒の志士たちの戦いに巻き込まれていくのだった…。
むぅ、粗筋が書きにくい。半分くらいまで、獅子丸もがきんちょで、銅磨陣内との戦いがクライマックスなんだけど、以降、それまで、それなりの伏線はあったんだけど、いきなりという感じもしつつ23世紀の時間局という存在が出てきて、獅子丸もいきなりがっちりした大人になってるし、話の中では10年とか簡単に経っちゃうし、連載中にこて入れで路線変更とかあったのかもなぁと邪推してみる。
もちろん、信長が百魔の手先として登場する前半もつまらなくはないんだけど、銅磨陣内という敵キャラがよほど気に入ったのか、そいつとの戦いがけっこう長いので、信長よりも銅磨陣内のがよっぽど大変じゃん!って感じ。それが23世紀の時間局が現われることでスピードがアップテンポになるので、圧倒的に後半のがおもろいです。獅子丸もおっさんになって、格好良さが数倍増してるし。
ただ、百魔という大元の敵が、なぜ獅子丸たちのいる宇宙を攻撃しているのか、という理由は、鬼について深いこだわりを見せる永井豪ならではの仕掛けがあり、そう思うと百魔って、名前こそ違えど、鬼同様なんだなってところが永井節です。
ラストの「戦いはまだ続く」ってのりは、打ち切りという感じもするし、これ以上、長々と続けてもしょうがないのでという気もするし。結局、魔王信長とか言ったわりには、信長大した活躍してねーじゃんという突っ込みもありますが、それなりにおもしろかったのでよしとする。
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