監督:成島東一郎
出演:大島稔(田村高廣)、大島実・子ども時代(新井康弘)、母さわ(賀来敦子)、かくていじじぃ(藤原釜足)、祖父(伊藤雄之助)、母の再婚相手(小松方正)、たか(山岡久乃)、稔の友人(戸浦六宏)、ほか
音楽:武満徹
原作:一色次郎
1973年、日本
朝は涼しかったのに午後になったらすっかり晴れまして、わしが帰る頃には暑くなっていたので、映像だけでも涼しげなもの、ということで「海底二万哩」を捜しておりましたが見つかりません。で、タイトルの涼しそうなこれにしたところ、主演が田村高廣さんだってんで、
GJ、俺!!!な気持ちで見始めたところ、映像的にも沖永良部島の豊かな自然、特に海の中がたっぷり見られまして、話は文芸っぽかったんですけど、気分だけでも涼しくなりました。
36年ぶりに母の故郷、沖永良部島に帰った大島稔は、祖父の墓参りのついでに西鹿児島の町を歩き、幼い頃の思い出にひたる。それは母と過ごした最後の半年間にまつわる思い出でもあった。
ということで、何しろタイトルに「遠い日の母は美しく」とある時点でたいがいの話は読めますが、薄幸な少年時代を送った人が、それでも36年ぶりに故郷に帰って、母との思い出を懐かしく思い返したけれど、母の頭蓋骨を掘り出した(「骨改めを」と言っているので、沖永良部島では一般的な行為なんでしょうか?)ところでその骨に取りすがって大泣きする、という展開にはなにをか況んやっちゅうか、思い出の中のお母さまはどこまでも美しく、っていうか、まぁ、ぶっちゃけ、お母さんが亡くなって36年経っても、まだ立ち直れないでいる男性の話っていう感じでした(←身も蓋もない)。
わし的には、田村さんを初めとして、藤原釜足さんが最重要な役で出ていたり、殿山殿司さんや小松方正さんや伊藤雄之助さんまでちょい役で出るに至っては、そっちの方がごちそうさまvvな映画だったりしました。うーん、ちょっと文芸調…
なにしろ、このお母さんが「島で誰もかなわない白さ」とか「島で最後の島踊りの名人」とかことあるごとに言われるものですから、息子でなくても、もう神格化っていうのは大げさなんですけど、皆さん、そんなにさわさんのことが好きだったんだね〜!っていう感じなんですな。そのわりに、当人、17歳で嫁いで旦那とは息子を産んで死に別れ、息子は旦那の実家に取り上げられ、島に戻ってから再婚したけど、新しい夫も息子に優しくなくて、自分は病気になっちゃって島にやっと帰ってきて、息子も祖父が亡くなって継母(山岡久乃さんだった)にいじめられていたものだから、一緒に家出同然に帰ってきちゃって、で、不幸の固まりというか、「息子と過ごした最後の半年がなかったら、何のために生きてきたのかってぐらい惨めな人生」とか言ってまして、もう、そういう不幸を招いたのも自分の体質なのではないだろうかというか、どうも「タクティクス・オウガ外伝」のエレノアみたいに不幸オーラをまき散らしている感じで、あんまり好きになれませんでした。てへ。
で、なぜか、自分は息子を抱きしめられないって言うんだよね、学校でいじめられてきた子に。何で? 理由がわからないんですけど。話を見ている限りでは病気ではあるけど何の病気だかわからないし、死因は海での事故死だし、病気とか言って寝てることも多いんだけど、なぜか息子と釣りに行ったりしてる(しかも、そこで死んでる)し、よくわからないお母さんでした。
うーん、全ての息子には母は美しいのだ、というどっかで見たような絵を見させられた感じです。
こういうのは自伝だろうかと疑っていたら、ほんとにそうだった模様。わしには向かない映画でした。
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