中国映画の傑作です。
相変わらずトン=ルージュンさん(父親役)の凛とした格好良さを堪能しましたが、一日目はよそよそしかった息子との関係が癒され、ラストでは息子がもう父親ばりの背中を見せて出かけていくところまで良かったですね。
最初の村では父を見送りに来た村人の姿に父の仕事の大切さに気づき、2日目では初めて「父さん」と呼び、交わす会話は少ないながら、確かに受け継がれていく父から子への思い、仕事の重さ・大切さ、母への思いが映像と演技で描かれた名作です。
そして相変わらず次男坊が可愛かったです。いや〜、名犬ですよ、ほんとに。初っぱなこそお父さんと一緒じゃないと出かけないけど、次男坊なりにこの旅のなかで理解したんでしょう。ラストでは息子を追って駆け出す、名演でした。
そんな父と子を支えるお母さん、きっと息子と結婚することになるだろう侗(トン)族の娘さん、女性たちの出しゃばらないしっとりとした美しさもいいです。娘の方はたぶんお母さんほど引っ込んでないように思いますが。息子がお父さんより理屈っぽいことを言っていたように。しかし、今の時代になってもこの風景はそれほど変わらないのだろうかなぁとも思います。映画の設定だと1980年代と40年近く前のことなんですが、中国の山間が劇的に開発されることもないでしょうし。
あと、今回、初めて気づいたんですけど、作中では夏なんでしょうけど、これ、冬とか、雪や雨が降ったら、とんでもない道だよなぁと。それでも待っている人がいる限り、届けるべき郵便物がある限り、郵便配達員は行くのだろうなぁと。そう思ったら、ますますお父さんが格好良く見えました。
また侗族の村にある鼓楼が映画まんまにWikiに載ってて、すごいロケしたんだなぁと、また感動しました。
全然関係ないですが、今読んでる「笑傲江湖」の舞台がちょうど湖南省衡陽市で、本作の舞台は湖南省と最初に出ましたが、なにしろ湖南省1つで日本の2/3くらいの広さなもんで詳細な場所は不明ですが、侗族の住まいを経由するんで、西の方なんだろうと思いました。侗族は湖南省よりも西隣の貴州省に多く住んでるそうなんで。
一度は見てほしい、しみじみと絆を取り戻す親子の情に浸ってほしい名作であります。
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