原作:山崎豊子
出演:陸一心(上川隆也)、陸徳志(朱旭)、松本耕次(仲代達也)、松本タキエ(田中好子)、松本耕平(牟田悌三)、ほか
音楽:渡辺俊幸
日中共同制作ドラマです。NHKが開局70周年で作った連続物で、わし、リアルタイムで見ておりました。16年もめぇだよ、おっかさん。原作も読みましたが、映像の方が圧倒的にいいです。ちゅうか、うまいこと感動物に仕立てています。この作品でメジャーデビューを果たした上川隆也さんのうまさもさることながら、中国のお父さん、陸徳志を演ずる朱旭さんが最高にいいのです。第1巻のタイトルは「父二人」ですが、わし、日本のお父さんはほとんど印象にありません。別に仲代達也氏が大根というわけではなく、それだけ朱旭さんが良かったという。もう惚れちゃったという。そのためにビデオを買い、サントラも買いました。朱旭さんの映画も3本(「變臉 この櫂に手をそえて」「こころの湯」「王様の漢方」)見ましたが、まだお元気なのだろうか?と思ってぐぐってみたら、まだご健在の様子。今年81歳になられる中国の人間国宝だそうです。納得。
第1巻は満州開拓団の一員だった松本一家が、一人ずつ死んでいき、生き残った勝男とあつ子もばらばらになってしまい、勝男は中国人に奴隷のような形で養われ、こき使われます。でも妹が長春という大きな町にいることを知って脱走、しかし、逃げた先でも売られそうになり、小学校教師の陸徳志に助けられ、養子として迎えられ、一心という名を与えられますが、国民軍と八路軍の内戦が激しさを増すなか、長春を脱出、という激動の子ども時代を文化大革命真っ最中で、日本のスパイ容疑で労働改造所に送られた一心が回想するという展開。
満州開拓団が、ソ連の参戦を知り、逃げ出す過程はまさに地獄図で、田中好子さんの体当たりの演技が光っております。日本のお母さんは中国のお母さんに比べるとずっと出番は少ないですが、印象深いです。で、この時、日本軍最強とかだった関東軍が、住民を置いてとっとと脱出したのも有名な話ですが、たまたま現地に残って機密文書を片づけていた、要するに貧乏くじを引かされた兵士たちがまたあれこれと無茶を言うのもさもありなんな展開なんでしょう。実際、沖縄戦でも子どもの泣き声で敵に見つかるから殺せと言ったわけですから。さらに日本の敗戦を報せに来た飛行機を撃ち落として万歳してるも、すぐに物量作戦で報復され、避難民巻き添えで皆殺しというのはもはや馬鹿としか言いようがありませんよ。
そんな地獄を生き延びた勝男(=一心)は、ショックで記憶障害となり、あつ子の名しか覚えていませんでした。近所のお姉さんに「かっちゃん」と呼びかけられたので、自分の名がかっちゃんだとは思い出しますが、お母さんの名前も思い出せないまま、現在に至っているようです。
で、あつ子も加えて3人で生き延びたものの、火事場泥棒にやってきた中国人にばらばらにされ、酷使されるわけです。
で、何とか列車にたどり着いて、ハルピンを目指したものの、漢字が読めないので、下りたところが大きな駅の長春で、そこがそもそもの目的地だったというのは追い打ちをかけるようです。
でも、そこで陸徳志さんに拾われて、いったんは重病のために捨てられそうになりますが、手を伸ばしたことでお父さんに考えを改めさせてめでたく養子に。ただ、日本人ですから、中国語の発音が悪いようで、お父さんもそういうことを隠す人でもなかったもので日本人として虐められるものの、お父さんとお母さんの愛情を一身に受けて、割と真っ直ぐな性格に育ちます。
で、大学まで行ったのに、1945年で7歳ですんで、1966年となると26歳で、文革に遭い、労働改造所に送られ、お父さんまで日本人を養子にしたので許さんというわけでつるし上げをくらった、というところで次巻へ続く。
日本のお父さんはそのあいだ、何をしているかと言うと、7年前(というのは1959年でしょう)に再婚したけど、マレーシアに出張中に奥さんを亡くし、また位牌が増えた程度でお終いです。まぁ、そんなもんだ。
原作を読んだらクールな展開でした。わしは主に朱旭さんで涙を絞られたので、こっちのが好きなのです。
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