ジョージ秋山著。青林工藝舎刊。
ネットで「アシュラ」に関する記事を見ていたら、ふと読みたくなり、密林で検索。そうしたら、「アシュラ完結編」が載った「ジョージ秋山捨てがたき選集」というシリーズがあることがわかり、それではついでに未だに読んだことのない「銭ゲバ」とか読んでみるかと思い、ついでに短編集も読んでみようかとぽちっとな。
で、最初に届いたのがこの本でした。
「30年」「ザーメン」「赤い海」「糞虫忍法帖」「ありふれた旋律」「羽根がはえた漫画少年」「慚愧」「ドストエフスキーの犬」が入ってます。帯によると、単行本に未収録の短編(「赤い海」除く)だそうで、改めて、いろんな作風を持っている人なのだなぁと思いました。
「30年」は実験作とでも言いたいような画風で、ラフみたいなタッチの、とあるサラリーマンの一日という漫画で、こういう日常を入社してから30年も続けてきました、という風刺にも読めるし、手抜きにも見える。
「ザーメン」はタイトルどおり。性にもんもんとして、毎日のように自慰してる中学生が、両親のセックスに衝撃を受けて、近所の女の子にいたずらをして、迎えに来た両親に「人間じゃないよ」と言っちゃう話。これに近いネタ、「赤ちゃんと僕」にもあったよな…
「赤い海」は、わしがいちばん読みたかった話で、元は菊池寛の戯曲「順番」らしいです。そっちも読みたい。いかにも菊池寛らしいというか。読んで「イティハーサ」の青比古も同じような境遇だったけど、あの美しさは少女漫画だなぁと真っ先に思いましたが、わしは実は青比古がいちばん好きになれなかったのでした(登場人物の誰もが「きれいだ」を連呼するので。そういうマンセーキャラって嫌いなんですよ)。誰が好きということもなく途中まで買っていたんですが、途中で掲載誌がなくなり、なんか買うのをやめてしまいまして、最後は立ち読みで済ませました。あ、そうだ、桂が好きだったんや。
閑話休題。
杉原の血に代々続く、忌まわしい病気(そう言えば、「羊のうた(冬目景著)」もそんな話だったな…)に、ラスト、「負けるもんか」と繰り返しながら、東京の学校へ通うことになった主人公ユタカ。この最後の6ページが、原案である「順番」にはないジョージ秋山オリジナルだそうで、わずかな希望と、それでも暗示される暗い未来とが印象的でした。
「糞虫忍法帖」は、白土三平の「カムイ伝」とか横山光輝の「伊賀の影丸」とか読み慣れていると、逆に格好悪い分、本物の忍者っぽかったです。
表題作の「ドストエフスキーの犬」は、淳が主役と見せかけて、勝三なんだろうな、このタイトルだと。
「銭ゲバ」と「アシュラ完結編」が楽しみっちゅうか、読んでて辛い漫画なんだけどね、「アシュラ」は…
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