監督:山田洋次
原作:椎名誠
出演:浅野昭男(三國連太郎)、浅野哲夫(永瀬正敏)、川島征子(和久井映見)、浅野忠司(田中隆三)、浅野玲子(原田美枝子)、浅野とし子(浅田美代子)、浅野徹(山口良一)、浅野綾子(浅利香津代)、浅野守(ケーシー高峰)、バイト先の主任(佐藤B作)、バイト先のおっちゃん(いかりや長介)、タキさん(田中邦衛)、タキさんの社長(レオナルド熊)、浅野きぬ江(音無美紀子)、浅野家の隣人(奈良岡朋子)、ほか
というわけで三國連太郎さん追悼第二弾です。リアルタイムで観たこともありますが(うちのままが永瀬ファンになった映画)、久々のDVD鑑賞です。
居酒屋でアルバイトをする浅野哲夫は、父からの電話で母の一周忌の法事が明日行われることを知り、岩手の実家に帰る。東京でサラリーマンとして働く兄・忠司、岩手県内に結婚して住む姉・とし子と違い、いつまでも定職に就かない哲夫は、父との溝を感じ、また東京に戻る。居酒屋を辞めて鉄工所に勤めるようになった哲夫は、仕事のきつさに辞めようと思うも、得意先で事務をする川島征子と知り合い、鉄工所を続ける。しかし、微笑みかけてはくれるものの、一向に話の進展しない征子に、哲夫は思いのたけを綴った手紙を渡すが、実は彼女が聴覚障害者であると知らされる。熱海で開催される戦友会に出席するため、昭男が上京してきた。哲夫の兄・忠司と玲子の夫婦は、昭男との同居を考えていたが、昭男は岩手の家を離れがたく思い、哲夫に再会する。哲夫は父に征子を紹介し、結婚するつもりであることを伝える。聴覚障害者である征子とFAXでやりとりを行う哲夫に倣い、昭男も哲夫と征子の見立てでFAXを買って、岩手に帰るのだった。
いや〜、こんなに親父ほいほいな映画だとは思いませんでした(←最初の感想がそこかよ!)v 山田監督GJ!な気持ちで観てました、わたしvv
実はこの映画が初見の永瀬正敏氏の演技は確かなもので、昭男には哲夫の上に忠司という息子もいるんだけど、標題の「息子」はやっぱり哲夫のことなんだろうなぁと思います。
ちゅうか、昭男にいちばん似てるのはやっぱり次男坊の哲夫だと思った。大学まで出たインテリの忠司ではなく、フリーターの哲夫。葉たばこ農家で、冬には東京に出稼ぎに来ていた昭男には、だからこそ、いつまでも定職に就かず、ふらふらしている(ように見える)哲夫がもどかしく、顔を合わせれば、心配のあまり、つい小言も出るんだろうと思うのです。
でも、そんなことは親父や兄キに言われなくても哲夫自身がいちばんわかっているはずで、そういう屈折した心のひだをやらせると永瀬正敏氏はうまいんだな〜
しかし、そんな哲夫にもついに転機が訪れます。ボーイミーツガール。古典的な展開ではありますが、好きになった女の子のために頑張る哲夫に、居酒屋にいたころの不安定さは見られません。しかも、好きになった征子が聴覚障害者だとわかっても「それが何だってんだ!」と強く否定する哲夫。思うに、哲夫のこの反応は、自分の「訛りが強くて口べた」なところに共感した部分もあったんじゃないかと。初っぱなの居酒屋のシーンでも、上司に「何を言ってるのかわからない」とか言われちゃってるので、かなり訛りがきついんですよ。だから、余計に口べたになってしまう。下手に口にしたら、訛りを笑われそうな気がして、口に出せない。生まれつき聞くことができず、話すこともできなかった征子に哲夫が共感する部分は大いにあったろうと思います。
ただ、哲夫がタキさん(この頃の田中邦衛さんは唾を飛ばすようなしゃべり方が特徴でして、それがいい!)のお見舞いに行った時に、タキさんに「いつ気づくかと思ってた」と言われて、「それが何だってんだ!」と何度も繰り返したのは、それを否定しようとする自分自身への戒めにも聞こえました。
それだけに父が哲夫のアパートに押しかけてきた時にはすっかり仲むつまじくなった哲夫と征子。その不器用だけれど確かな愛情は、岩手でも雪深い田舎で暮らす昭男には、長男の忠司夫婦のどこか他人行儀な親切さよりも暖かく写ったのではないかと思います。だからこそ、彼はいずれ哲夫と結婚する征子と話すためにわざわざ二人の見立てでFAXを買って帰った。そんなラストシーンでした。
原田美枝子さんの、きれいだし、言葉遣いもきれいなんだけど、どこかよそよそしいキャラというのは、相変わらずな気がしたよ。忠司役の人は、全然知らない人だったんですが、田中裕子さんの実弟だそうだ。道理で!
ただ、希望の残るラストではあるんですが、昭男が雪の深い田舎で暮らすという事態は変わらないわけで、でも、それが彼のいちばんの幸せなのだというところが、やっぱり最後の結論なんだろうなぁというしみじみしたいい映画です。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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