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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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人間の條件(上)

五味川純平著。三一書房刊。全3巻。

仲代達矢主演の9時間超の大作映画(ただし全6部)で有名で、8月1日あたりに池袋の文芸座で一挙にかかると聞いたのですが、時間的に池袋に行ってられなかったので原作を読むことにしました。

その前にキャストを見たら、ヒロインの美千子が新珠三千代のほかに佐田啓二、宮口精二、山村聡、淡島千景、有馬稲子、東野英治郎、千秋実、藤田進ほかと、そうそうたるメンバーでした。わし的には王亭立を宮口さんがやってはるのが興味津々ですが、沖島に山村聡は合わない気がするのだが…。機会があったら見てみようと思っているのですが、なかなか長いので難しいところです。ただ、読んでいる間に梶の顔が仲代達矢にはなりませんでした。「男たちの大和 YAMATO」でケチつけちゃったから。

日中戦争中の満州で人間らしく生きようとする梶の戦いを描いた長編。

ヒロイン、つまり梶の妻である美千子が2/3くらいまでちょっとお馬鹿さんに見えてしまいまして、退屈でした。

そもそも、梶と美千子は満州に行って、鉄鉱石を掘り出す会社に勤めています。舞台は前半でイタリアの降伏が告げられ、初っぱなでスターリングラードの攻防が語られているので1943年、すでにミッドウェー海戦も終わっているので(1942年)、大きく広がりすぎた前線を維持できずに連戦連敗という時代です。
しかし傀儡国家満州の会社では、そんな負け戦もどこ吹く風、日本人は中国人(作中では支那人や満人)や朝鮮人を酷使し、梶はそのなかで人間らしくあろうともがくのでした。まぁ、根本的に場所が間違っているという話は右において。

そんな梶の苦悩に関心を持たず、ひたすらに自分たちの幸福を追求する美千子は、平凡でつまらない女性だと思いました。途中で女友達に愚痴って、梶の苦悩を共有しようとしますが、中国の捕虜(と言いつつ、正体は農民だったりする)が無意味に処刑されようとするのを梶が逃がして生かそうとするのを泣きながらに止めちゃう辺りでやっぱりなぁという感じで、それでも最後は頑張ったので以降に期待です。

結局、梶は憲兵に逆らったことで徴兵免除を取り消され、召集されてしまいます。以下、続いて、どういう展開になるのか興味津々です。

宮口精二さんがやってる王亭立は、もともと大学の教授でしたが、日本軍に奥さんを目の前で強姦されて殺され、捕虜として引っ立てられた人物です。梶とは特殊工人のリーダーという形で会います。梶は王たち特殊工人を他の工人並みに扱おうと奮闘しますが、根本的に侵略者である日本人を信用することはなく、梶が憲兵に引っ捕らえられたのをきっかけに王を中心に脱走します(それまでは3000ボルトの電流を流した鉄条網の中にいた)。梶に手記を渡したり、いろいろと影響の強い人物ですが、今後、再会することがあるのかは望み薄な気がします。再会しても敵同士だし。

沖島は梶の先輩で理解者であろうとしましたが、ちょっと喧嘩っぱやいところもある人物で特殊工人の扱いなどを巡って梶と対立したり協力したりしてます。「相棒」の水谷豊に対する寺脇康文みたいな感じでしょうか。山村聡はインテリっぽい感じなので合わないかなと思いました。

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ベルリンに一人死す

ハンス=ファラダ著。赤根洋子訳。みすず書房刊。

一人息子の戦死をきっかけに反ナチ運動を始め、やがて囚われ、死刑に処せられた夫婦の実際の事件を下敷きにした小説。

1940年、ベルリンに住む真面目な職工長オットー=クヴァンゲルと、その妻アンナのもとに一人息子の戦死の報せが届く。取り乱したアンナは息子の死がヒトラーと夫のせいだと罵るが、他人に関わりを持たず、ただ働き、一人静かに生きることにしか興味のなかったオットーのなかで何かが変わり始めていた。やがて、オットーは妻とともにヒトラーやナチ党を攻撃する匿名の葉書を書き、公共の建物に置くというささやかな抵抗運動を開始するが、それはゲシュタポの目に止まることになり、クラバウターマン事件として1942年、夫妻が捕えられるまで続いた。過酷な尋問は亡き息子の婚約者をも巻き込んでいくが、1943年、死刑の判決を受けて、オットーは従容として死を受け入れるのだった。

主人公はこのオットー=クヴァンゲルとアンナ=クヴァンゲルの、ごく平凡な中年の夫婦です。そこに近所に住む古参のナチ党一家や、ちんぴら、美人局や、その家族がからみ、物語は複雑怪奇に進んでいきますが、事件そのものはナチ党を攻撃する葉書を毎週書き続けたというシンプルなものです。ですが、捕まれば死刑しかないということはオットーもアンナもわかっているのです。

実在の事件を下敷きにしているとはいえ、クヴァンゲル夫妻、特にオットーの人物描写が大変良かったです。「薄い唇と冷たい目が鳥を思わせる、鋭い顔つきの」と形容されるオットーさんは、もともとは家具職人でしたが、戦争が進むにつれて家具を作れなくなり、爆弾の箱、最後には棺桶を作らされるようになっていきます。同時に自分にも厳しく、他人にも厳しいオットーさんはナチ党員ではないために会社のなかで出世できませんが、それが正義でないことを知り、「党費を払えない」と言い訳して党員になろうとしません。
つまり、この葉書を書いて置いてくるだけという戦いは、何か立派な政治信条を持って行われたものではありませんでした。それでも、オットーさんたちが見抜いているように、それは命がけの行動であり、ヒトラーやナチスのしていることは許せないからこそ、彼らは行動しなければならなかったのです。

終盤、ゲシュタポに捕えられ、未決囚拘置所へ送られたオットーさんは先住の音楽家ライヒハルト博士と出会います。孤独に生きてきて、妻以外はほとんど話をしないできたオットーさんにとって、初めてで最後の友人でした。
この友人によってチェスや音楽という新しい喜びに目覚めたオットーさんは、さらに自分の抵抗が、たとえ書いた葉書の9割がゲシュタポに提出されてしまっていたとしても決して無駄ではなかったのだと聞かされます。

以下、引用。

「自分のためになります。死の瞬間まで、自分はまっとうな人間として行動したのだと感じることができますからね。そして、ドイツ国民の役にも立ちます。聖書に書かれているとおり、彼らは正しき者ゆえに救われるだろうからです。ねえ、クヴァンゲルさん、『これこれのことをせよ、これこれの計画を実行に移せ』と私たちに言ってくれる男がいたら、そのほうがもちろん100倍もよかったでしょう。でも、もしそんな男がドイツにいたとしたら、1933年にナチスは政権を掌握してはいなかったでしょう。だから、私たちは一人一人別々に行動するしかなかった。そして、一人一人捕らえられ、誰もが一人で死んでいかなければなりません。でも、だからといって、クヴァンゲルさん、私たちは独りぼっちではありません。だからといって、私たちの死は犬死にではありません。この世で起きることに無駄なことは1つもありません。そして、私たちは正義のために暴力と戦っているのだから、最後には私たちが勝利者となるのです」

引用終わり。

この小説の映画化が進んでいるようですが、オットーさんをデビッド=ストラザーンさんがやってくれたらいいなぁと思います。

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証言・花岡事件

野添憲治編。無明舎出版刊。

花岡事件を追い続ける秋田在住のジャーナリストの聞き書き。先日の「花岡事件 日本に俘虜となった中国人の手記」が中国の人の語りだとすると、こちらは直接的には関係ない人が多数の、言ってみれば普通の日本国民が見た花岡事件という感じです。事件の当事者であり、本来は加害者として扱われるべき鹿島組のなかでも通訳と雇員というあまり重要なポストにいなかったような人たちの証言な上、人によっては花岡事件そのものは見ておらず、敗戦後、俘虜となっていた中国人たちを手当てした看護婦さんとかも出てくるわけです。まぁ、70年も前の事件ですから、当事者が生きていることもないでしょうが、生きていて証言していたら、鹿島組の態度も違うような気もしますので、いちばん俘虜の方たちを虐待した補導員とかの人たちは墓場まで自分の知っていることを持っていってしまったように思います。この本は1986年出版で、著者がインタビューをしていたのは、その数年前でしょうが、あまり生き残っていないか、生きていても表に出てこなかったかもしれませんし。

そう考えると被害者の方の手記はあるのに加害者の告白はないという片手落ちな感じですが、だいたいにおいて日本が強制連行した朝鮮や中国の方たちについての扱いというのは、そもそもどこの誰を何人連れてきたという名簿さえ現存しているのが珍しい状況だったりすることが多いので、花岡事件ほどはっきり残っているのは逆に珍しいとも思いました。

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花岡事件 日本に俘虜となった中国人の手記

劉智渠 述。劉永鑫・陳蕚芳 記。岩波書店・同時代ライブラリー。

花岡事件に参加した八路軍の元兵士・劉智渠さんの手記です。

重労働をさせておいて食事が1食につき饅頭1個と根菜1本とか、生々しい虐待と、実際の蜂起の様子とそれが失敗に終わってしまったこと、さらに日本の敗戦により解放されるまでを綴っています。

もとは1951年と、まだ敗戦の記憶も生々しい時代に出された本で、花岡事件を描いたものとしてはいちばん早いそうですが、岩波書店が同時代ライブラリーに収録したので、今の時代に生きる我々にも読めるのです。岩波書店は何だかんだ言われていますが、こういう貴重な書籍を出すという点では評価に値する出版社だと思います。売れてなんぼのKADOKAWAとかには逆立ちしても真似できないだろうという。

文庫なんでさらさらと読んでしまいました。

日本と日本人は、沖縄とアイヌと侵略したアジアの全ての国々に、容易に返すことのできない負債を負っている。そのように思います。

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口笛が 冬の空に…

木下順二著作集4。未来社刊。全7巻のうちの1冊。

小松川事件に関連する話だというので「罪と死と愛と」を読んでからずいぶん経ってしまいましたが読んでみました。

内容は主人公が小松川事件で犯人とされた李珍宇で、その家族も出てきますが、メインは彼が思慕を寄せる少女と、その少女とできているという担任教師で、つまらなかったです。別に実際の事件と違って主人公の少年が最後に自死を選ぶという展開が駄目だったのではなくて、事件とは何の関係もない少女と教師が好き合っているというどうでもいいエピソードが駄目でした。というか、気持ち悪いぐらいでした。まぁ、確かに特定の生徒を贔屓にするような教師というのはわしもざらに見てきたので、わし自身も可愛がられたりしたんで、別に不思議はないんですけど、教師が妻子ある身でありながら、少女を愛しているというのが気持ち悪かったです。いや、そういう教師がいてもいいんだけどね、小松川事件というのはそういう教師とは何の関係もないわけで、なんでそんなエピソードを足したのかわからなくて、蛇足にしか見えなくて駄目でした。作者の偏愛趣味が垣間見えるというか…

あと、主人公の家族の描き方がずいぶんと差別的じゃないかなぁと思ったのもマイナス。

あんまり期待外れだったんで、木下順二はもういいので、別の本を借りてこようと思う次第。

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