五味川純平著。全9巻。光文社文庫刊。
やっと中間まで来ました。わし的にはだれまくりの第5巻です。
いちばんだれたのは、第1巻からずーっと続いていた伍代家の次男坊・俊介が、人妻となった狩野温子と結ばれるシーンがけっこうボリュームがありまして、これがつまらなかったのです。
まず、温子にあんまり魅力を感じません。由紀子と違って平凡な印象が強く、英介にふられて、成り行きのままに狩野市郎という男の妻になり、でも、ずーっと横恋慕してきた俊介にもふらふら、狩野に気づかれてからはねちねちといじめられ、でも、芯は意外と強いので、それなりに俊介を守ろうとし、でも、最後は通州が中国軍に襲われて、巻き込まれた温子は死亡となりまして、一気に片づいてしまいました。ふぅ…
俊介はなにしろ美貌の姉がいる上に、自分も美青年とか書かれている青年に育ったんですが、演じているのが北大路欣也なんですが、この方、壮年の頃からしか知らないので(石原裕次郎と勘違いしていたんで訂正しました。11/20)、しかも最近はすっかりお父さん犬なもんで、全然イメージがつながらなくて、だいたい俊介が美青年という設定の必然性がまったく見当たらず、それを生かして悪事を働くとか、大それたことでもやればおもしろいんですが、作者の趣味だろな美青年設定なので、美青年美青年と描写されるたびにうんざりしてきてるので、俊介周りはどうでも良くなってきてしまいました。
邦ちゃんには憧れの若様になったようですが、俊介はもういいよわしな気持ちです。
むしろ、1巻からおぼっちゃんで、傲慢で、好かないタイプなんですが、むしろ、英介の方が我が道を行ってる分、すがすがしく見えてきた。
たぶん最後は破滅するんでしょうけど。
ただ、わしは演じる高橋悦史さんは50代くらいからしか存じ上げないので、英介と由介が親子に見えないのが困りものですがががが。
柘植は軍人版の梶になってきました。とうとう南京大虐殺にまで参加して、良心を保とうとしていますが、まぁ、焼け石に水です。というか、日本軍を止める気なら発砲とかしないと無理だよ兄ちゃん。とか、せいぜい頑張ってくれいという感じで眺めてます。あんまり良心を強調されても白々しいんで。ほどほどに。
そして、すっかり鴫田は出番がなくなっていまいまして、たまに名前が出るくらいで、ほとんど動きません。つまらん…
不破医師も出なくなっちゃいました。服部医師は趙瑞芳と一緒にしか出番がありません。
高畠は由紀子と急接近ですが、どうなのだろう…
趙瑞芳は映画だと栗原小巻さんが演じたんですが、これが良家のお嬢様でありながら、抗日レジスタンスに資金出したり援助したりと活動していて、英介にレイプされた後も「私を殺さなかったら、あなたを必ず殺させます」とか言っちゃうあたりなんかがわりと好みで、とうとう上海あたりに脱出したはずなんですが、後で登場してくれるか心配。
栗原小巻さんはもろに「
黄金の日日」の美緒で、いちばん好きな女性キャラだったもんで、そのイメージも強くて、いい感じです。お父さんがまた飄々としたとぼけぶりで張家の再登場はあるのか気になる。
わし的には第3巻で抗日レジスタンスが失敗して、敗走した白英祥と徐在林に復活はあるのか、そこがいちばん気にかかるところで、伍代家はだんだんどうでも良くなってきました。主人公なのに。
この巻は2・26事件に大幅に紙面を割いた前巻に比べるとだいぶ話が大きく動きまして、小説の部分も多かったのですが、相変わらず史実を語るところになると完全に説明調になっちゃって、そこがわしがいちばんおもしろくない部分です。映画で言ったら、重要な事件を延々とナレーターがしゃべってる感じ。こりゃつまらんわい。
もう註を読み通す気力はないんで、さっさと次を借りてきて終わらせよう。そして朝鮮戦争の本を読むんだ。
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