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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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鴉の死

金石範著。集英社刊。コレクション戦争と文学1。

済州島四・三事件を描いた大河小説「火山島」の前身とも言える話です。

主人公の丁基俊(ジャン=キジュン)は、孤独な梁俊午(ヤン=ジュノ)、対する李尚根(イ=サングン)は梁俊午や南承之(ナム=スンジ)という友人を持たない李芳根(イ=バングン)、さらにでんぼう爺まで登場ときては「火山島」の世界に浸っていた頃のわくわくが蘇りました。

「火山島」にて、李芳根を主役に据えたのは、李尚根にもっと深みを持たせ、とことんその特異な人物像を掘り下げてみたかったんじゃないかと思ったり…。

ただ、梁俊午には家族も親戚もなく天涯孤独でしたが、丁基俊にはゲリラとして活動する幼なじみの親友・張龍白(ジャン=ヨンソク)がおり、その妹の亮順(ヤンスニ)という思い人もいるのですが、ゲリラ上層部の命令でスパイとして活動する丁基俊は、その事情を誰にも打ち明けられず、親友は知っているけれど、親友の家族は知らないという孤独な立場におり、亮順にまで誤解されたまま、亮順とその家族の処刑を目撃しなければならないという展開は「火山島」の大河ぶりとはまた変わった展開で、それだけに全てが終わった時に李芳根が自分の犯した殺人を償うように自殺したように、丁基俊もまた孤独な死を迎えるのではないかと思いましたが、小説はそこまで書かれませんでした。

同じシリーズの「日中戦争」はつまみ食いしたのですが、これは引き続き、残りも読もうと思います。

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蝗 ほか

田村泰二郎著。集英社刊。コレクション戦争と文学7。

これもTLで流れてきたんで興味を覚えていたんですが、わりと批判的な感想だったんで後回しにしていたら、読みたい本のリストに入っていたのが茅ヶ崎図書館でことごとく存在しなかったもので、7冊ぐらい一気にリクエストかけて、これと、あと何冊かまとめて借りてきました。重かった。

朝鮮人の従軍慰安婦と白木の箱を中国の前線に届けることになった軍曹とその部下2名の行く先と顛末を描いた短編。

なんですが、これがひどい文章で、もう馬鹿みたいに、(てん)打ちやがって、すごく読みづらくて読みづらくて、内容以前の問題でした。、(てん)や。(まる)というのはそこで思考というか、読むリズムを切るものなのであんまり小刻みに打たれると単純に読みづらいのですよ。一気に読んだ方がいいような内容が、(てん)で切られているのでぶちぶちと切れて、そのたびにイラッとして、あ、ここはつなげて読んだ方が意味が通るのかと気づいてまた読み直して、田村泰二郎二度と読まねぇと思いました。「肉体の門」とか長編なんか言語道断。話にならねぇ。

それに輪をかけて、慰安婦の兵士に対する純愛というか思慕というかが、もう完全にお伽噺の領域で展開もつまらなかったのですが、たきがは、字書きの端くれとして言いたい。無駄に、(てん)打ち過ぎ。

勢いで、同じ本に入っていた五味川純平のと小林秀雄のを読んだんですが、五味川純平のは満州の戦線からの帰還を省いた、無事に帰還できた「人間の條件」の梶(つまり作者自身の体験)の話で、「人間の條件」がまだ記憶に新しいものでおもしろみがなく、ただ、最後のソ連で講演した時に同じ戦場にいたというソ連の人と会ったというところだけ良かったです。
あと、小林秀雄は難解な文章で現代国語(という科目がわしらの時代にはあったのだよ)が超苦手だった(読解力が低いため、「作者の考えを述べよ」という問題が悉く外す。その代わりというわけでもないが暗記系の漢文と古典はわりと得意で、国語の点数はおもにこの2つで稼いでいた)わしにとっては超々苦手な作家だったのですが、「戦争について」というエッセイは1937年という時代まんまに戦争に向かって邁進しようという売文まんまで、小林秀雄も戦争に協力的だったんだなぁというのが大収穫でした。苦手だと思ってた難解さはそのせいかわりとおとなしめでした。

わし的には、同じ本に入っている胡桃沢耕史(「翔んでる警視」シリーズとかまったく読んだことなし)、駒田信二(中国の笑い話のような本を昔読んだことがあり)、阿川弘之(「雲の墓標」ぐらい読んだことあり)のを読もうかと思ってる次第。本命がないので、ぼちぼち読みます。

12月27日追記。
で、「東干(トンガン)」胡桃沢耕史、「脱走」駒田信二、「(タイトル忘れた)」阿川弘之の3作を読んだんですが、期待したほどおもしろくなかったです。
「東干」はモンゴルの奥地に住む反中国的な民族に日本人の娘を娶らせて関係を強固にしようとしたけど、肝心の民族が敗走しちゃって、娘は一緒に逃げることになるけど、その前にそこまで一緒に来た濃い顔だと理由でこの任務に選ばれた兵士(沖縄出身という設定)を殺すという結末で、娘の素性とか、日本との密約をばらされないように元々殺されることになっていたのですが、しかも名前が佐藤佐藤という誤植かと思っていたら、「さとう すけふじ」と読むんだそうで、本来は沖縄の名字なのに佐藤姓の奥さんに婿入りしたので変な名前になった。しかし、その名前でギャグを取るような展開ではなく、多少、人間的に弱さを持っているけど、ごく普通の、故郷にいる奥さんを恋しがるおっさんで、英雄性とは無縁だけど、笑いものされる謂われもないもので、作者の沖縄の人に対する悪意を感じちゃったりして、いまいちでした。
「脱走」は陣地から軍旗を守って敗走することになった四人の兵士の話なんですが、情景や感情の描写がくどくてくどくて、単純におもしろくなく。
阿川弘之のは敗戦して、病院で寝てる下士官が、捕虜虐待の罪でどっかに行く話だったかな。これもあんまりおもしろくなかったですわい。

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朝鮮戦争論

ブルース=カミングス著。明石書店刊。栗原泉、山岡由美訳。

戦争と人間」ですっかり遅れましたが、やっと読むことができました。

副題が「忘れられたジェノサイド」とあります。

朝鮮戦争について、その意味とアメリカや日本にもたらした変化、アメリカが主力となった連合国軍について、主に朝鮮戦争のことを忘れたアメリカ人に語ったドキュメンタリーです。

わしも朝鮮戦争について恥ずかしながらほとんど知らないので大変勉強になりました。いまさらながら、TLで流れてきてたアメリカを憎む朝鮮の方の話が実感できました。無知で本当に申し訳ないと思いました。朝鮮戦争が「敗戦にあえぐ日本を一気に経済大国に押し上げた特需」ぐらいにしか思っていない大多数の日本人も読むべき書物だと思います。日本がかつて朝鮮半島を植民地にし、搾取したために今の大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国があり、その前に朝鮮戦争があったのだという事実はもっともっと日本人に重い事実、罪として受け止められていいはずです。

名著なのですが、翻訳の不満があります。朝鮮民主主義人民共和国や、その国の基礎となった朝鮮人民軍に対してずっと「北朝鮮」という訳を使い続けるのはおかしいです。それは今の日本では侮蔑であり、蔑称であり、差別的な使い方をされている言葉です。38度線以南の南朝鮮との対比という意味で使うならばまだしも、共和国のことも一緒くたにされてるのは変です。訳者の持っている朝鮮への差別意識が現れていて、このような人にこういう本を訳させないでほしかったなぁと思う次第。テーマのために頻出する単語なので、もっと気を遣って言葉を使い分けてほしかったです。それもできないような、そもそも朝鮮を差別しているような人が訳すなと言いたいですよわしは。

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骨餓身峠死人葛

野坂昭如著。小学館。昭和文学全集26。

野坂昭如さんの追悼に「火垂るの墓」を読もうと思ったのですが手元にも実家にもなかったので、実家にあったのを借りてきまして、いちばん短い話を読みました。

九州のとある炭鉱跡から水を引くことになり、その竣工式の日から、炭鉱跡、葛炭鉱の成り立ちと滅んでいく様を綴った短編。

なんですが、たいへん気持ち悪い話でした。炭鉱主の男が嫁をもらい、大きな炭鉱には叶わないまでも細々と経営を続けるというくだりは良かったのですが、そのうちに夫婦の間に兄妹が生まれてからが駄目でした。

人里離れた炭鉱で育った兄妹は、やがて互いを異性と意識するようになります。しかも妹は死体から栄養を吸収して美しい花を咲かせる死人(ほとけ)葛を好むようになり、妹のために兄は死体を買います。そのうちに労咳にかかった兄は死んでしまいますが、妹は今度は父親と寝るようになり、子どもまで作ります。
そうしている間にも戦争はこの小さな炭鉱にも無縁ではなく、石炭も出なくなってしまい、炭鉱は閉鎖されることになりますが、最後の時になるとろくな坑夫がいない状態で、他の鉱山では雇ってもらえないような者も少なくなく、凄惨な殺し合いになります。死体は炭鉱に葬られましたが、今度の水源としての再利用でその死体が外に出ようとしている、というところで幕。

何でこんな話入れたんだか、どういうテーマなんだか、野坂昭如はよくわからん ┐(´ー`)┌

文体が「火垂るの墓」の冒頭のように。が少なくて改段も少ないもので、嫌らしさに拍車をかけておりまして、こんなんで追悼になるのか俺(爆)

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珊瑚舎スコーレ まちかんてぃ

TLで流れてきたんで見てみましたが、46分があっという間の良質のドキュメンタリーでした。いい仕事してはるわ。



いろいろな事情があって、子どもの頃に通えなかった学校に通うおばあちゃんたちのお話。登場されてた方はほとんどが沖縄の地上戦なんですが、いくつになっても学ぶという心を忘れない人たちを見てると、ぼけとか縁がないんだろうなぁと思います。要するに学ぶことを忘れてしまった人がぼけるのではないかと。

涙と笑いがいっぱい詰まった素敵な話でした。

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