田村泰二郎著。集英社刊。コレクション戦争と文学7。
これもTLで流れてきたんで興味を覚えていたんですが、わりと批判的な感想だったんで後回しにしていたら、読みたい本のリストに入っていたのが茅ヶ崎図書館でことごとく存在しなかったもので、7冊ぐらい一気にリクエストかけて、これと、あと何冊かまとめて借りてきました。重かった。
朝鮮人の従軍慰安婦と白木の箱を中国の前線に届けることになった軍曹とその部下2名の行く先と顛末を描いた短編。
なんですが、これがひどい文章で、もう馬鹿みたいに、(てん)打ちやがって、すごく読みづらくて読みづらくて、内容以前の問題でした。、(てん)や。(まる)というのはそこで思考というか、読むリズムを切るものなのであんまり小刻みに打たれると単純に読みづらいのですよ。一気に読んだ方がいいような内容が、(てん)で切られているのでぶちぶちと切れて、そのたびにイラッとして、あ、ここはつなげて読んだ方が意味が通るのかと気づいてまた読み直して、
田村泰二郎二度と読まねぇと思いました。「肉体の門」とか長編なんか言語道断。話にならねぇ。
それに輪をかけて、慰安婦の兵士に対する純愛というか思慕というかが、もう完全にお伽噺の領域で展開もつまらなかったのですが、たきがは、字書きの端くれとして言いたい。
無駄に、(てん)打ち過ぎ。勢いで、同じ本に入っていた五味川純平のと小林秀雄のを読んだんですが、五味川純平のは満州の戦線からの帰還を省いた、無事に帰還できた「人間の條件」の梶(つまり作者自身の体験)の話で、「人間の條件」がまだ記憶に新しいものでおもしろみがなく、ただ、最後のソ連で講演した時に同じ戦場にいたというソ連の人と会ったというところだけ良かったです。
あと、小林秀雄は難解な文章で現代国語(という科目がわしらの時代にはあったのだよ)が超苦手だった(読解力が低いため、「作者の考えを述べよ」という問題が悉く外す。その代わりというわけでもないが暗記系の漢文と古典はわりと得意で、国語の点数はおもにこの2つで稼いでいた)わしにとっては超々苦手な作家だったのですが、「戦争について」というエッセイは1937年という時代まんまに戦争に向かって邁進しようという売文まんまで、小林秀雄も戦争に協力的だったんだなぁというのが大収穫でした。苦手だと思ってた難解さはそのせいかわりとおとなしめでした。
わし的には、同じ本に入っている胡桃沢耕史(「翔んでる警視」シリーズとかまったく読んだことなし)、駒田信二(中国の笑い話のような本を昔読んだことがあり)、阿川弘之(「雲の墓標」ぐらい読んだことあり)のを読もうかと思ってる次第。本命がないので、ぼちぼち読みます。
12月27日追記。
で、「東干(トンガン)」胡桃沢耕史、「脱走」駒田信二、「(タイトル忘れた)」阿川弘之の3作を読んだんですが、期待したほどおもしろくなかったです。
「東干」はモンゴルの奥地に住む反中国的な民族に日本人の娘を娶らせて関係を強固にしようとしたけど、肝心の民族が敗走しちゃって、娘は一緒に逃げることになるけど、その前にそこまで一緒に来た濃い顔だと理由でこの任務に選ばれた兵士(沖縄出身という設定)を殺すという結末で、娘の素性とか、日本との密約をばらされないように元々殺されることになっていたのですが、しかも名前が佐藤佐藤という誤植かと思っていたら、「さとう すけふじ」と読むんだそうで、本来は沖縄の名字なのに佐藤姓の奥さんに婿入りしたので変な名前になった。しかし、その名前でギャグを取るような展開ではなく、多少、人間的に弱さを持っているけど、ごく普通の、故郷にいる奥さんを恋しがるおっさんで、英雄性とは無縁だけど、笑いものされる謂われもないもので、作者の沖縄の人に対する悪意を感じちゃったりして、いまいちでした。
「脱走」は陣地から軍旗を守って敗走することになった四人の兵士の話なんですが、情景や感情の描写がくどくてくどくて、単純におもしろくなく。
阿川弘之のは敗戦して、病院で寝てる下士官が、捕虜虐待の罪でどっかに行く話だったかな。これもあんまりおもしろくなかったですわい。
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