坂口尚著。講談社漫画文庫刊。全5巻。
「内乱編」とサブタイトルがついてますように蜂起した共産党と王党派の内乱が勃発します。クリロたちは共産党のパルチザンに加わったので王党派、さらにはナチスに協力的なクロアチアの極右ウスタシなどとも戦わなければならなくなります。
ここら辺の思考が、当時のヨーロッパではナチス<ソ連となるようで、ヒトラー自身もソ連が最終的な敵というのはこの手のジャンルではよく見るんですが、ナチスの同盟国・日本がアメリカに勝手に宣戦布告してしまったため、結果的にナチスはアメリカとの和平の道を絶たれるのは、何というか、目先の利益に走るというか、大局的なものの見方ができないというか、井の中の蛙、島国根性の日本のまずさだなぁと思ったりします。まぁ、ここでナチスとアメリカが手を結んでしまうとナチスも大日本帝国も残っちゃうので結果オーライな気はしなくもありませんが、自分の国ながら阿呆というか、馬鹿っていうか…
フィーは叔父に再会し、マイスナー大佐の暗殺を命じられますが、心優しい少女なので果たせません。
クリロはパルチザンに加わった子どもたちをまとめる少年兵となり、以後、終戦まで戦い抜きますが、友人のイザークともども人を殺すことへの葛藤は捨てません。
この巻でイヴァンとマイスナー大佐が友人同士だったことが判明、イヴァンはドイツ人の血を引いているのですが、どこで会ったんだこの二人? イヴァンは故郷の村を離れて大学に行っていたんですがドイツにまで留学してないんだけど… 「マイスナー」と呼び捨てにしてるので、かなり親しいようなんだが…
ミルカがイヴァンを追っているのに男たちのあいだで翻弄されているのは見てて辛いです。あんまり登場しませんが。
そして、この巻から「
スケバン刑事」に登場した信楽老みたいなキャラ、モルトヴィッチ(ギュームという名前を使うこともあり、どっちが本名か、両方とも偽名かわからない)というおっさんが登場しまして、ナチス、王党派、共産党と登場する全ての勢力に追われることになりますが、このおっさんの登場はちょっとよくわかりませんでした。ユーゴ王国の金庫番なんですけど、何をしたいのか最後まで意味不明。わりとリアルな物語のなかで、年齢不詳というあたりも浮いているし。
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