監督:市川崑
原作:手塚治虫「火の鳥 黎明編」
出演:ナギ(尾美としのり)、サルタヒコ(若山富三郎)、ヒミコ(高峰三枝子)、スサノオ(江守徹)、ヒナク(大原麗子)、グズリ(林隆三)、ウラジ(沖雅也)、弓彦(草刈正雄)、ウズメ(由美かおる)、ジンギ(仲代達矢)、スクネ(大滝秀治)、クマソの長カマムシ(加藤武)、クマソの呪術師(伴淳三郎)、オロ(風吹ジュン)、ヒミコの女官(ピーター、カルーセル麻紀)、タケル(田中健)、ほか
日本、1978年
38年前に見た印象が忘れられず、ソフト化もしていないという怪作です。いや、傑作とは言いがたいし名作でもないし、かといって駄作かと言われるとそれほどでもないので怪作と言うのがいちばん相応しいかと…
出演者がそうそうたる面子で、まぁ、そこは監督が市川崑だし、けっこう揃えられるだけ揃えたんだろうなぁという印象ですが、原作とのイメージはそんなにかけ離れてないと思います、わしは。まぁ、「火の鳥」のなかでも、そんなにこだわりのないエピソードではあるんで(一応、初「火の鳥」ではありますが。原作を読んだのは、たぶんこの後だったはず)、このキャラはこうじゃなきゃ駄目!ってこともないです。
尾美としのり氏が、これがデビュー作なもんで台詞が棒読みなのに加え、まだ声変わりもしてないとか、そっちのが驚いた。
若山富三郎さんのサルタヒコは、「火の鳥」の重要なバイプレイヤー猿田がまんま当てはまります。途中でヒミコの怒りを喰らって蜂に刺され、鼻が見慣れた形になるというエピソードがありますが、これはいかにもとってつけたような感じで、まぁ、時代が時代だからしょうがない…
高峰三枝子さんのヒミコはまぁまぁ。原作でも似たようなおばはん〜ばあさんだし。
江守徹のスサノオは、ヒミコを諫めようとしつつ、神話にならって死んだ牛をヒミコの宮殿に投げ込んじゃったもので目を潰され、国外追放とされてしまいますが、帰ってきたら、何か凄腕の剣士になってて、ジンギの部下8人(邪馬台国に斥候に出されてた)と大立ち回り。原作でも同じように目を潰されてたんですが、あんなに強い設定、あったっけ…
由美かおるさんのウズメは脱がないアメノウズメですが、何しろ38年前と若いし、「水戸黄門」でヌードを披露してたりしたのもこの後のはずなんで美人です。原作でも、わし的にはいちばん好きなキャラだったんで、まるきりまんまなエピソードが良かったですな。
仲代達矢のジンギも、わりと濃い顔立ちが「大陸から来た侵略者」ってイメージに合ってるし。
ただ、元の原作がけっこう長いんで、そこに原作のエピソードをほぼ詰め込み、さらに冒頭、弓彦をスクネとスサノオが追いかけて火の鳥の捕獲を依頼するとか、ちょっと余計じゃねなエピソードを詰め込み、間の悪いギャグ(例の「UFO」を躍っちゃう狼とか)を挟んだら、もうぱっつんぱっつんな話になるのは目に見えており、しかも個々のエピソードがけっこう尺が足りない印象もあり、わしがこの映画を怪作と評する由縁であります。いや、もったいない。
この描き方だと、サルタヒコがどうしてナギをそこまで気に入ったのかわからないんですよね。ヒミコに絶対の忠誠を誓うのにナギがヒミコの命を狙ってもなお庇ってやっちゃうし。そこら辺、もう少し丁寧に描いてほしかったなぁ。わりと主人公が決まってないような群像劇っぽい話なんですが、一応、ナギがけっこう主要な位置にいますしね。
興行成績がいまいちだったんで、この後に予定していた「宇宙編」が作れなかったらしいんですが、「宇宙編」てあれか…
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