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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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太白山脈 第4巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

サブタイトルは「トラジの歌」です。トラジとは朝鮮語で「ききょう」のことですが、作中で金範佑(キム=ボム)が学徒兵として出陣させられ、米軍の捕虜となり、地球を一周してきて日本軍としてではなく朝鮮人として連合軍に協力したいと申し出、その訓練をハワイあたりで受けていた時に通訳となった二世の女性の名前でもあることがわかります。名字が都(ト)で、名前がラジで、続けて「トラジ」と読めるようにしたというエピソードが挿入されまして、彼女の影響を受けて、金範佑が左翼にも右翼にも距離を置き、民族主義を貫こうとしているという話が同僚の孫承旻(ソン=スンホ)に明かされます。

話としては山中に立てこもっていた廉相鎮(ヨム=サンジン)たちがいよいよ反撃に出るようになり、筏橋(ボルギョ)からわりと近い栗於(ユロ)という山間の村を解放区として支配することになります。
廉相九(ヨム=サング)に犯されて、とうとう身ごもってしまった姜東植(カン=ドンシク)の妻、外西(ウェソ)宅が自殺を図ったり、素花(ソファ)が鄭河燮(チョン=ハソプ)と再会したり、痛々しい展開が続きます。

戒厳軍司令官の沈宰模(シム=ジェモ)も廉相鎮に一杯食わされたり、奇襲したりと忙しいですが、なにより、地主よりも小作人に味方しがちな姿勢が地主たちに恨まれて、とうとう廉相鎮の部下の妻を妊娠させようと骨を折ったことで容共として訴えられ、司令官の地位も剥奪されそうな予感…

そんな沈宰模に思いを寄せる娘さんがいたり、鄭河燮がつき合っていた本屋の娘がいまだに彼のことを思っていたり、ここら辺はちょっとのほほんとした展開ですが、概ね、左と右が憎み合い、血で血を洗う話は最後まで止みそうにありません。朝鮮戦争の休戦まで描いているから当然なんですが、辛いところです。ただ、それ以上にエンタテイメントとしておもしろく、歴史大河小説の名にふさわしい小説だと思います。

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外伝一本あげました

オウガバトルな100のお題に「061.幻影:剣、失いし者」をあげました。

時間軸的には「082.狂気:狂気の坩堝」の前後です。

元ネタは土星版の追加シナリオ「サージェム島:剣、取りし者」ですが、逆転してます。「セウジト地方:笑う商人」と同じパターンですね。

この話もネタを思いついてからずいぶんとかかりましたが、その上、落ちもあれな展開ですが、よろしくお願いします。

\( ̄ー ̄|電柱| ̄ー ̄)/

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太白山脈 第3巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

サブタイトルは「金羅道の悲しみ」です。

そのタイトルにふさわしく、廉相鎮(ヨム=サンジン)とともに山に立てこもったパルチザンたちの筏橋(ボルギョ)に残った家族たちや、人情的な医師、全明煥(チョン=ミョンファン)、安昌民(アン=チャンミン)を愛する女教師、李知淑(イ=ジスク)らが負傷した安昌民をかばい立てし、治療したことで巻き込まれる病院事件と、鄭河燮(チョン=ハソプ)に金を渡していたことがばれてしまい、過酷な拷問を受けて流産する素花(ソファ)、鄭河燮の両親などの苦悶も描かれます。

わしは素花ちゃんのしていたことがばれるのは河大治(ハ=デジ)の妻、ドルモル宅(本名ではなくて既婚の女性の朝鮮風の呼び方。出身地の名を取る)とその息子たちと同居することになったため、子どもの何気ない一言からかなぁと勝手に推測してどきどきして読んでいたので、章(作中の台詞などがついていて、1巻当たり10章くらい)が変わったら、あっさり「捕まって拷問を受けた」とか描かれていたんで驚きました。

筏橋に戒厳軍の司令官として沈宰模(シム=ジェモ)が赴任してきまして、けっこう良心的なキャラなんですが、軍人としては国策・滅共に逆らうわけにはいかず、いずれ地主と小作人との板挟みになっちゃいそうで心配です。いっそ反乱を起こした第14連隊(麗水・順天事件)みたいに反旗を翻してくれればいいのですが、まぁ、そうはならない予感…。
警察署長も寝汚い南仁泰(ナム=インテ)から穏健派の権炳済(クォン=ビョンジェ)に変わったけど、警察だからな…

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太白山脈 第2巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

この巻のサブタイトルは「天空をさすらう雲」です。

筏橋(ボルギョ)出身の国会議員、崔益承(チェ=イクスン)が登場する第2巻です。話は山に逃げ込んだ廉相鎮(ヨム=サンジン)たちの家族にまで右翼たちの報復が及ぶ描写が多く、わし的に辛い展開が続きます。

金範佑(キム=ボム)は前述の国会議員のせいで警察に捕まって拷問まで受けてしまいますが、お父さんが金一族のトップ、金思鏞(キム=サヨン)なので助かります。ただ妻の兄が左翼に金を流していたということで捕まってしまっていまして、こちらはどうにもならないようです。

あと医者の鑑と言いたいような全明煥(チョン=ミョンファン)先生が登場して、思想に関係なく分け隔てなく治療するという良心を見せてくれますが、この方は第3巻で退場しちゃいそうな感じです。→追記、第6巻まで読み進みましたが、まだまだお元気です。筏橋唯一の医者なんで、そうそう退場はさせられませんね。

首都警察庁から討伐隊の隊長、林萬洙(イム=マンス)がやってきますが、それほど大きく物語は動かない感じでした。

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太白山脈 第1巻

趙廷來著。伊學準監修。川村湊校閲。筒井真樹子、安岡明子、神谷丹路、川村亜子共訳。集英社刊。全10巻。

というわけで大本命の「太白山脈(映画化した方)」をやっと読み始めました。来週、藤沢市総合図書館が特別整理で休みなんで急がんとかあか〜ん。

1948年の麗水・順天事件から、全羅南道の地方村落、筏橋から始まる物語。共産党の筏橋の委員長を務める廉相鎮(ヨム=サンジン)、その忠実な部下、河大治(ハ=デチ)、廉相鎮の弟でありながら父親と兄に深い恨みを持ち右翼となった相九(サング)、左右どちらの思想にも肩入れせず民族主義を貫こうとする金範佑(キム=ボム)、筏橋の近くに住む巫堂(ムーダン)素花(ソファ)、金持ちの息子でありながら共産主義に傾倒し秘密党員となった鄭河燮(チョン=ハソプ)といった多彩な人物の視点で朝鮮戦争に至り、分断が固定されるまでを描いた大河小説です。

この巻のサブタイトルは「白い花という名の巫堂」です。素花ちゃんの名前は「白い花」という意味なのです。サブタイトルにふさわしく、子どもの頃に知り合った鄭河燮が素花を訪ねるシーンから開幕です。

昔、林權澤(イム=グォンテク)監督の映画で見て以来、よく筋も登場人物もわかってなかったので原作で読み直したかったのです。同じ民族同士が争う、ただただ悲しい話だったというのしかわからなかったもので。

キャストを見たら金範佑がアン=ソンギさん、廉相九がキム=ガプスさん(「KT」でKCIAの主役だった方)、鄭河燮がシン=ヒョンジュンさん(「銀杏の木のベッド」でファン将軍やった方)と、後で見ていたら、もっとわかったのになぁと思ったりしなくもなく。
しかし、40代のアン=ソンギさんに27歳の金範佑はちょっと無理がないか… いや、わしも好きな俳優さんだけど…

名前の読み方を覚えるのが一苦労ですが、話にのめり込んでしまうと人間関係も含めてするすると頭に入ってきまして、第1巻ながら掴みは十分、どうなるのかは概ねわかってしまっているので、登場人物たちの一喜一憂や活躍、暗躍などを楽しみに読もうと思います。

しかし素花ちゃんを「巫堂でなければ自分のものにしてやるのに」と廉相九が思うシーンでは、すでに鄭河燮を結ばれているだけにばれた時の惨劇が見えるようで辛いですよ。

あと金範佑は「火山島」の李芳根(イ=バングン)を彷彿とさせて(金持ちの息子、心情的には左翼に味方、立場は中立、右翼にも一目置かれる、反日・抗日経験ありと共通項も多く)、主人公に置きやすいのかと思いました。ただ、はっきり主人公だった「火山島」と異なり(話は李芳根と南承之が主人公で交互に変わる)、視点は次々に入れ替わるのですが。

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