監督・脚本:オリバー=ストーン
出演:レ・リー(ヘップ・ティ・リー)、レ・リーの父(ハイン・S・ニョール)、レ・リーの母(ジョアン=チェン)、スティーブ=バトラー(トミー・リー=ジョーンズ)、スティーブの母(デビー=レイノルズ)、ほか
音楽:喜多郎
アメリカ、1993年
「
スノーデン」がなかなかおもしろかったんで監督繋がりで見てみることにしました。
ベトナムからの難民レ・リーの自伝に基づく一代記。
ベトナム中部の町ダナン近郊の村、キーラに住むレ・リー。兄2人と姉3人の末っ子で、両親に可愛がられて育つが、彼女が15歳の時にベトナム戦争が始まり、レ・リーの人生は激動していく。
幸せな少女時代を送った女性が、兄2人をベトコンにとられ、自身もベトコンに加担したために村にいられなくなり、サイゴン(現ホーチミン)に流れていくも、雇い主の子どもを妊娠したためにサイゴンにいられなくなり、子どもを育てながら、一時は娼婦にまで身を落とすも、アメリカ海兵隊の軍曹スティーブと知り合い、アメリカに渡り、スティーブを失うも自立していき、最後は生まれ育った村に帰るも、すでにそこは彼女の帰るべき土地ではなかったけれど、全てを受け入れ、許すという仏教的な思想で落ちでした。
レ・リーの人生が波瀾万丈、七転び八起きなもんで、いったいどこが落としどころなのか最後まで読めませんでした。
ただ、初っぱなのレ・リーがベトコンに通じていたために憲兵に囚われ、拷問されるというシーンは、どこがベトコンに通じていたのか、全然わからなかったので、監督、カットしすぎだと思います。おまけでカットしたシーンが9つついてきたのですが、そっちの方がわかりやすいところも多かったので、最近に限らず、ハリウッドの映画は3時間以内という傾向は根本的に問題多すぎやろと思いました。
しかし、わかりやすいからといってレ・リーに感情移入するかといいますと、これも難しく、ベトコンにレイプされ、村にいられなくなったレ・リーは、母親と一緒にサイゴンに行き、お屋敷で働くようになります。ところが、ここで旦那に優しくされたもんで、そのまんま子どもまで作っちゃうという展開は10代の娘とはいえ、あんまり考えなしなんではないかと思ったり…。
しかも、その前に村にいた時に姉から「男に色目を使う」だの「お姫様気取り」だの、その後も姉(アメリカ軍人のボーイフレンドがいるが、敗戦後の日本にもいたパンパンに近い感じ)にまで「甘ったれ」だと「お父さんに愛されているのは自分だけだと思っているの」と責められたりしているところを見ると、根本的に末っ子の甘やかされ体質がそのまんま大きくなったような人なのかと思ってしまいました。
もっとも、スティーブと知り合うまでのレ・リーは、娼婦やったりホステスやったりしながら、頑張って息子を育てていたりもするのですが、これがアメリカに渡り、自前で店を持つようになったりなんかもすると、また本性を露わにしたような感じでスティーブにも感情むき出しで当たりまして、トミー・リー=ジョーンズがこれっぽっちも好きなわけじゃないんですけど、ベトナム帰還兵に、もうちょっと優しくしてやってもええやんとか思ったりもするんですが、これがまた、いい歳こいて、金銭的な理由でいまだに母親や姉と同居しているというのも、駄目人間て感じで、また同情もしづらく、それにしても最後は自殺までしちゃうあたり、レ・リーと知り合わなかったら、少なくとも自殺には追い込まれなかったんじゃないかとか。そもそもスティーブの役目はレ・リーをアメリカに連れてきたことで終わってたんじゃないかとか(この点は監督も言い切ってた)、何とも中盤の展開がぎすぎすした人間関係で辛いものがありました。スティーブとのあいだに4人も子どもをもうけたわりには、「子はかすがい」ほどにも役に立ってないのも日本とアメリカの違いかもしれませんが気になったり。そのくせ、最後、長男を実父に会わせるシーンとかあったりして、結局、レ・リーが愛したのはその実父だけだったりしたのかとか…。
お父さん役のハイン・S・ニョールさんは、わしの好きな「キリング・フィールド」の主演俳優さんでした。この3年後に射殺されてしまいます。
ちなみにお母さん役は「ラスト・エンペラー」で皇后役でしたが、女は化ける… 面影もないわい。
デビー=レイノルズさんは言わずと知れた「雨に唄えば」のヒロインです。作中では息子がかわいいあまり、嫁にきつい姑になってましたが。娘がキャリー=フィッシャーというのは… あんまりお母さんに似てないよね… 娘の後を追うように去年末に亡くなられたそうで、ご冥福をお祈りします。
漫画家の西原理恵子がこの映画を「オリバー=ストーンに3時間も説教されたくない」と言ってましたが、そこまで説教臭いとは思えなかったんだが…
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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