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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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遥かなる甲子園 第9巻

山本おさむ著。戸部良也原作。双葉社アクションコミックス刊。全10巻。

まずは沖縄高野連の理事会から。野球憲章をたてに福里の加盟を断とうとする理事に対し、理事長は難聴の選手が甲子園に出場している小田さんの記事を出して、とうとう福里の加盟が認められます。

この巻の号泣ポイントは第93話のラスト、老いた両親を自覚する武明、幸せそうに武明の名を繰り返す両親、歯をくいしばり、泣き声をもらすまいとする武明に重なって読んでいるこちらも涙をこらえてしまうという山本節の真骨頂。

そして続く第94話で原作者の戸部良也氏が登場すると同時に、福里は秋季大会に参加します。
加えて第95話では山本おさむ氏本人も登場、ここから第97話まで伊波先生(福里の廃校後は別の学校で野球部の監督)や山本氏の視点で加盟はしたものの、なかなか勝てない福里の試練がさらっと語られます。
3年生になった福里の野球部員たちは、卒業までに一勝しようと激しい練習を始めます。さらに他校との練習試合で研鑽を積む福里の野球部は、いつかその実力を県下に認められるまでになっていくのでした。ここがまた泣ける。「グラウンドのなかで障害者であることを拒否した子どもたちと健常者であることを拒否した伊波先生」とのやりとりの力強さ、その激しさが熱いのです。

そして、いよいよ迎えた最後の年、福里の初戦は糸数高校でしたが、なかなか相手も巧者。2回のピンチに健が「スクイズだ!」と相手の奇策に気づいたところで以下、続刊です。

第2巻から続く、長い長い高野連への加盟がようやく決着。ある意味、最大のクライマックスでもありますが、第10巻はおまけどころではない重さであります。

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遥かなる甲子園 第8巻

山本おさむ著。戸部良也原作。双葉社アクションコミックス刊。全10巻。

この巻では南星高校戦がクライマックス。

理事たちは5回で25点もの差がついた福里の弱さをあざ笑ってますが、なかには理解ある理事もいて号泣ポイントが多い巻です。特に「ワシたちのチームもぜひ… 福里のようなチームと戦ってみたい」と言っちゃう理事さんが次巻でも熱弁を振るってくれちゃって、すごくいいです。

公式戦でも大差がつくと5回コールドになっちゃうので、あと18点は取らないと試合は終わりだと宣告される福里ナイン。絶望する武明に、健が3塁コーチャーズボックスに立った光一を指し、「仕事をやろう=1点取ろう」と言います。こういう健ちゃんの周りをよく見た気配りが好きなところなんですが、この巻では健ちゃんと姉ちゃん(陽子さん)の辛い過去のエピソードもいくつか描かれてて、これがまた泣けるわけです。特に健が自分の耳が治らないことを知り、「姉ちゃん、耳くれ」というシーンの切なさが白眉。そのエピソードをバックに福里最初で最後のチャンスにタイムリーを打つ健を見守る姉ちゃんの心情とか、いちいちページをめくるたびに涙が止まりません。武明に「三振してノコノコ帰ってきたら…… ブン殴るぜ!!」と言えちゃう男気とか、健ちゃんいいよ健ちゃん。
一方、武明の子ども時代のエピソードもいくつか綴られまして、改めて、健と光一をここまで引っ張ってきた主人公の面目躍如です。

ようやく1点を取った福里は試合に負けてしまいますが、共感の輪が広がり、以下、続刊です。

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おみおくりの作法

監督・脚本:ウベルト=パゾリーニ
出演:ジョン=メイ(エディ=サーマン)、ケリー=ストーク(ジョアンヌ=フロガット)、メアリー(カレン=ドルーリー)、プラチェット(アンドリュー=バカン)、ジャンボ(キアラン=マッキンタイア)、ホームレスの男たち(ポール=アンダーソン、ティム=ポッター)、ほか
イギリス・イタリア、2013年

ロンドンのケニントン地区の民生係として働くジョン=メイは44歳の独身男。彼の仕事は孤独死した人びとを弔うことだが、事務的にこなせる仕事を、ジョンは近親者を探し、弔辞を書き、埋葬にまで立ち会うことで一人ひとり、「おみおくり」をしていた。しかし、22年も同じ仕事に就いていたジョンに上司のプラチェットは解雇を言い渡す。ケニントン地区は他の地区と合併になり、そうでなくても仕事ぶりが遅いジョンを上司は好ましく思っていなかったのだ。ところがジョンは前日、自分の住むアパートの向かいの部屋で孤独死したビリー=ストークの記録に着手したばかりで、それが最後の仕事だと言い渡される。いつものようにビリーの遺品から近親者の手がかりを探すジョンは、ビリーが最後に務めていたパン工場から、メアリーという女性とつき合っていたことを知り、はるばると出かけていくが、暴力癖のあったビリーを疎ましく思っていたメアリーは、ビリーが知らぬ間に生んだ娘と一緒に葬儀に参加してほしいというジョンの申し出を断る。上司に言われた期限が近づいていたが、ジョンは自費でいいから、ビリーの件を続けさせてほしいと訴え、プラチェットもこれを承諾するが…。

最後がけっこうショックというか、そう来たか!って展開がイギリス映画。ハリウッドなら、間違いなくハッピーエンドでしょう。だいたい、ジョン=メイのような人物は主人公になりづらい。

しかし、アパートの向かいの住人が孤独死したことにショックを受けたのかどうかわかりにくい表情に乏しい人物なのですが、ジョン=メイはこれまで以上に熱心にビリー=ストークを「おみおくる」ことに取り組むのでした。
でも、だったら、そういうジョン=メイがつまらない人物かと言ったらさにあらず。彼は独身で、家でも料理をせず、缶詰と林檎ばかり食べていますが、孤独死した人たちが残した写真をアルバムに貼って、大切に保存しているのです。そんな時のジョンさんは、とても優しい顔をしていて、これは、ちょっと不器用なおじさんが役所の合理化の嵐で解雇されちゃうけれど、新しく生きなおそうとしている話なのだと。そう思って、もうこの序盤のアルバムのシーンで、わしはジョン=メイさんが好きになってました。

それだけにラストがショックなんですが、その後に来たシーンは、もしも劇場で見ていたら号泣してたかもしれないなぁと思わせるすごくいいシーンだったので、ネタバレは書かないでおきます。
ジョン=メイさんの誠実さがとっても心にしみる良作です。

たんぽこ通信 映画五十音リスト

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遥かなる甲子園 第7巻

山本おさむ著。戸部良也原作。双葉社アクションコミックス刊。全10巻。

この巻から8巻にかけて試験試合となる南星高校戦です。福里に気を遣ってというより、伊波先生の言葉を借りれば「健聴者の一方的な思い上がり」ともとれる危険がないかどうか確かめるための試合ですが、それだけに南星高校以外にはどこも引き受けなかったと監督が言ってます。これに反発した生徒たち、野球部のレギュラー部員で、この年の沖縄地区大会の準優勝校ですが、福里が1年生だけならば自分たちも1年生だけでと言うのを聞いて、伊波先生はレギュラーを出してくれと言います。南星高校は驚きますが、実際にレギュラーを投入、準優勝まで行った実力を福里に見せつけ、たたき込みます。この監督が、また男気のあるところを見せてくれまして、20点以上も取って「こんな辛い試合はいやだ」と言う部員に、「あいつら(福里)はもっとつらい。でも福里は決して試合を投げ出すわけにはいかないし、加盟を諦めるわけにもいかない。でも彼らは自分たちが決してギブアップしないということを示すしかない。その彼らのつらさを通して、自分たちもまた福里が何を言おうとしているのか聞け」と諭すのです。かっこええ。

また退院した光一が野球部に復帰。3塁コーチャーやラインマンなど裏方ですが、武明たちには大事な仲間の復帰で心強かったことでしょう。

一方、2巻から明らかにされているものの、具体的にどんなことかわからない知花の両親への思いは、この巻でようやく出てきます。彼女は両親、特に母親との苦しい訓練の末に健聴者のように話すことができるようになりましたが、野球部のマネージャーになってから初めて家に福里の生徒を連れてきました(とお姉さんが言ってる)。そして、その時に手話を使っていることを母親に咎められ、読唇術による口話法には限りがあることを訴えます。しかし娘が「普通じゃない」ことにこだわる母親に、知花は「お母さん 恥じてるの?」と問いかけ、母親に打たれてしまいます。
どうやら、彼女が両親を嫌いだと手話で言っていたのはここら辺に事情がありそうですが、残念ながら、それ以上は突っ込まれません。主題から離れちゃいますからね。彼女の健聴者並みに話せるというスキルは「わが指のオーケストラ」で同様の立場に立たされる実在の人物である西川はま子さんに投影されているのかなぁと思ったり。

他の巻に比べると比較的号泣必須ポイントは少ない、おとなしめの巻ですが、ピッチャーの正が風や空気を認識する子ども時代のエピソードとか、沖縄県高野連に行って、試験試合を知らされた校長と伊波監督が他校の試合を見ているシーンとか、南星の監督とか、ほろりとさせるシーンは満載です。

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ひとごろし

山本周五郎著。新潮文庫刊。

あれ、読んだことあったけど、きれいに忘れているぞ、これ…

樅ノ木は残った」ほか「柳橋物語」といった人情物を得意とされた山本周五郎さんのさまざまな時代の短編を集めた1冊。

収録作は表題作のほか、「壺」「暴風雨(あらし)の中」「雪と泥」「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「裏の木戸はあいている」「地蔵」「改訂御定法」の計10本。

滑稽物の「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「改訂御定法」「ひとごろし」。
ハードボイルドなタッチの「暴風雨の中」「雪と泥」。
時代物としてはかなり珍しい平安時代が舞台の「地蔵」。
そして人情物の「裏の木戸はあいている」と、周五郎さんの多彩さを堪能できる1冊。

わし的には「裏の木戸はあいている」が文句なしの傑作で、あとは滑稽物がなかなかおもしろかったです。

「裏の木戸はあいている」は自分も苦しい生活をしていながら、貧しい庶民に無利子無担保で金を貸してやる喜兵衛の話で、義兄(嫁の兄)に当たる十四郎の放蕩っぷりというかだらしなさが終盤まで鼻につきますが、ラスト、喜兵衛のしたことが報いられるという展開がたまりません。うまいと膝を打ちたくなります。

「壺」は、周五郎さんには大変珍しいと思われる剣豪、荒木又右衛門が登場しますが剣を学ぼうとする百姓の七郎次を諭すネタなんかは周五郎さんらしい人情といっていいのか。

追われる男(ヤクザ)と追う男(十手持ち)、そこに女だけで舞台もまったく動かない「暴風雨の中」は、先日読んだ「マルタの鷹」にも通じる、登場人物のモノローグとかを拝した展開がハードボイルドでした。
「雪と泥」は、人のいいお坊ちゃんが商売女に騙されて死んでしまうという展開がハードボイルドかなぁ。

引き続き未読の分も読破する予定。

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