山本周五郎著。新潮文庫刊。
あれ、読んだことあったけど、きれいに忘れているぞ、これ…
「
樅ノ木は残った」ほか「
柳橋物語」といった人情物を得意とされた山本周五郎さんのさまざまな時代の短編を集めた1冊。
収録作は表題作のほか、「壺」「暴風雨(あらし)の中」「雪と泥」「鵜」「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「裏の木戸はあいている」「地蔵」「改訂御定法」の計10本。
滑稽物の「女は同じ物語」「しゅるしゅる」「改訂御定法」「ひとごろし」。
ハードボイルドなタッチの「暴風雨の中」「雪と泥」。
時代物としてはかなり珍しい平安時代が舞台の「地蔵」。
そして人情物の「裏の木戸はあいている」と、周五郎さんの多彩さを堪能できる1冊。
わし的には「裏の木戸はあいている」が文句なしの傑作で、あとは滑稽物がなかなかおもしろかったです。
「裏の木戸はあいている」は自分も苦しい生活をしていながら、貧しい庶民に無利子無担保で金を貸してやる喜兵衛の話で、義兄(嫁の兄)に当たる十四郎の放蕩っぷりというかだらしなさが終盤まで鼻につきますが、ラスト、喜兵衛のしたことが報いられるという展開がたまりません。うまいと膝を打ちたくなります。
「壺」は、周五郎さんには大変珍しいと思われる剣豪、荒木又右衛門が登場しますが剣を学ぼうとする百姓の七郎次を諭すネタなんかは周五郎さんらしい人情といっていいのか。
追われる男(ヤクザ)と追う男(十手持ち)、そこに女だけで舞台もまったく動かない「暴風雨の中」は、先日読んだ「
マルタの鷹」にも通じる、登場人物のモノローグとかを拝した展開がハードボイルドでした。
「雪と泥」は、人のいいお坊ちゃんが商売女に騙されて死んでしまうという展開がハードボイルドかなぁ。
引き続き未読の分も読破する予定。
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