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船戸与一著。新潮社刊。

いよいよ最終刊です。前巻で蜂起してしまったアイヌたちでしたが、厚岸やノッカマップが蜂起せず、むしろ松前藩の鎮撫軍についてしまったので敵対さえしてしまい、俄然、不利な立場に追い込まれます。
そもそもノッカマップの総長人ションコは、ツキノエと同年代で、ツキノエの考えに同調している人だったので、ツキノエ抜きで始めてしまった戦いに賛同するはずもなかったのですが、厚岸の場合はもっと極悪で、ツキノエの妹で厚岸の御婆と呼ばれるオッケニが、我が子、厚岸の総長人イコトイ可愛さにここは和人に取り入った方が得だという判断が働いています。

どちらにしても、マホウスキは銃を送り届けることができなかった。
そして、蜂起は最悪の結果を迎えることになるのです。

松前藩の新井田孫三郎は、幕府に介入させないため、蝦夷地を松前藩の独占にしておくため、蜂起の責任者たちは樺太に流すという嘘の策でアイヌたちを降伏させますが、ノッカマップに集められた彼らは、ほかの同胞たちの目の前で無惨に惨殺されていくのでした。

そして終章、ノッカマップでの惨殺で両親を同時に失ったハルナフリの壮絶な復讐譚が語られます。

わしはこの話の中ではツキノエがいちばん格好良くて、いちばん好きで、この話の中にあったら、ツキノエの言うことにいちばん共感すると思うのです。
でも、作者はハルナフリの変貌によって、アイヌとしての誇りを失っても生き長らえることに疑問を呈しているような気もします。確かにツキノエや、イコトイ、ションコらの働きによってアイヌたちは生き延びました。和人に屈し、その足をなめるような形で生き長らえました。それよりもアイヌの誇りを持って、かなわないとわかっていても和人にせめて一矢報いるべきだったのではないか、アイヌたちの心を1つにして、和人と戦うべきだったのではないか、という声が聞こえなくもないのです。
だけど、そうでないんだ、と否定する声がわしの中でします。それでも人は生き延びるべきなのだという声がわしの耳から離れることはありません。
けれど、わしはこの話の中ではむしろ和人の立場であり、そんなわしがハルナフリにツキノエを責めてくれるなと、復讐よりも生き延びてほしいと語るのは間違いなのでしょう。

ハルナフリの復讐は、彼が唯一の隣人と認めた和人・洗元さえも巻き込み、無事ではおきません。
その存在は葛西政信が言うように蝮であり、死霊なのだろうと思います。
けれど、アイヌを陥れた葛西政信や、松前藩を守ろうとしただけなんだけど、ハルナフリにとっては敵以外の何者でもない新井田孫三郎といった鎮撫に、蜂起に関わった連中を倒した後、どこか胸のすっとするような思いも味わってしまうのは、同様に登場人物がほとんど倒れていく最近の作に近い話でありながら、わしがハルナフリの復讐譚を肯定したいからにほかならないのでしょう。

そして、登場時からずっと傍観者であり続け、齢90を超えながら、時代を見通している静澄から、八丈島に流された洗元への手紙で迎える終幕は、この壮大な物語を締めくくる大団円に相応しい眼差しをもって、開国という近代を迎えようとしている日本を俯瞰しています。
この、江戸時代末期から、遙かな現代まで見通したような視点がこのあいだ読んだ「新・雨月」になかったんだよねぇ。この日本の北の端、蝦夷地で始まった物語がヨーロッパにつながったという壮大さと思わぬ清々しさがなかった。そう思うと、最近の船戸さんの作って、どうも登場人物ほとんど死亡というパターンが何とも泥沼な感じがして、それだけ現代が如何にぐしゃぐしゃかということなんでしょうけど、その中でももっと胸のすくような話も読みたいわけなんですが…

というわけで「猛き箱舟」を読むことにする。いちばん好きな話は「山猫の夏」です。本命は最後ですよ。うふふふ…

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